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40−2.「診断から対話へ」

(特集:心理職の専門性の基盤を創る)

石原孝二(東京大学大学院教授)
下山晴彦(跡見学園女子大学教授/臨床心理iNEXT代表)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.40-2

注目新刊本「著者」研修会

「ゲーム依存に対するスクールカウンセラーの総合力」を養う
−今の時代に必要な「ケース理解×チーム作り×スキルアップ」−
 
【日時】2023年11月23日(木曜:休日) 9時〜12時
【講師】益子洋人  北海道教育大学准教授
    花井博   愛知県公立学校SC みよし市教育センター
    松丸未来  東京都公立中学校S C 私立小学校S C
 
【注目新刊書】『ガイドブック あつまれ!みんなで取り組む教育相談』
(明石書店)
https://www.akashi.co.jp/book/b614338.html

【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=Wo6LMv_U6To
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=QqpgKZVmLgU
[オンデマンド視聴のみ](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=rdtauk6yLHY

https://www.akashi.co.jp/book/b614338.html


ご案内中の注目新刊本「訳者」研修会

「精神科診断に代わるアプローチPTMF」を学ぶ
−心理職が医学モデルの“くびき”から自由になる道筋を知る−
 
【日時】2023年11月12日(日曜) 9時〜12時
【講師】石原孝二/白木孝二/辻井弘美/松本葉子(訳者)
 
【注目新刊書】『精神科診断に代わるアプローチPTMF』(北大路書房)
https://www.kitaohji.com/book/b620327.html

【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1000円):https://select-type.com/ev/?ev=zuGfiknaIIU
[iNEXT有料会員以外・一般](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=78utH-Epp5A
[オンデマンド視聴のみ](3000円) :https://select-type.com/ev/?ev=H1aIsjlV0ko

ご案内中の注目新刊書「著者」研修会

◾️『ふつうの相談』を徹底的に議論する
―心理職の未来のための設計図を語る―
 
【講師】東畑開人 白金高輪カウンセリングルーム主宰
    下山晴彦 跡見学園女子大学/臨床心理iNEXT代表
 
【注目新刊書】『ふつうの相談』(金剛出版)
https://www.kongoshuppan.co.jp/book/b627609.html
【申込み】
[オンデマンド視聴のみ](2000円) :https://select-type.com/ev/?ev=NYYGc8hFMP0

1.心理職は医療や行政に従っていれば良いのか?

公認心理師法第42条第2項において「当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」と規定されています。そのため、心理職の活動は、保健・医療分野は言うまでもなく、それ以外の分野でも医師の意向に従うことが求められます。
 
また、公認心理師は、国家資格として公的機関に採用され、行政制度の中で管理的役割を担うことも多くなります。企業なども含めて社会組織に採用される場合には、所属する組織の運営方針や規則に従って実践をすることが求められるようになります。その点で心理支援は、心理職が自由に実践できることが少なくなってきます。
 
このように公認心理師制度が定着するに従って心理職の活動は社会的に広がる一方で、活動の内容は制限される傾向が強くなると考えられます。では、心理職は、医療や行政が求める役割に従っていれば良いのでしょうか。


2.「国民の心の健康の保持増進に寄与する」ことが第一なのでは?

公認心理師法第1条には「国民の心の健康の保持増進に寄与すること」と記されています。したがって、心理職が第一に重視しなければいけないのは、医療や行政の意向に従うことではなく、“国民の心の健康の保持増進に寄与する”ための活動を積極的に実践していくことです。
 
時代とともに社会のあり方は変化し、心理支援の対象となる問題の種類や質は変化してきます。心理職が“国民の心の健康の保持増進に寄与する”ためには、時代の変化に応じて有効な心理支援の方法を開発し、実践していくことが求められます。その点で心理職は、活動が制限されることはあるにしろ、自らの専門性を主体的に発展させていくことが重要な課題となります。
 
例えば、近年、ゲーム依存は、オンラインゲームの発展に伴って非常に深刻な心理的問題になっています。そこで、スクールカウンセラーをはじめとする心理職は、ゲーム依存の問題解決のための心理支援の方法を開発し、実践していくことが重要な課題となっています。冒頭に示した『「ゲーム依存に対するスクールカウンセラーの総合力」を養う』研修会は、心理職の専門性を主体的に発展させていくための企画です。


3.日本のメンタルヘルス問題の背景にある医学モデル

心理職の主体性や専門性を確保することが最も重要な課題となるのが「医療」との関連です。公認心理師法第42条第2項「当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない」が意味することは、単純に医師の指示に従うことだけではありません。「医学モデル」に従って心理職が疾病管理の役割を担うことが求められるということです。
 
周知のように日本のメンタルヘルスは非常によくない状況にあります。その日本のメンタルヘルスを担ってきたのが精神医療です。日本の精神医療は、医師中心の医学モデルが今でも色濃く残っており、精神病院への入院率は世界で最も高く、入院期間も段トツに長期になっています。WHOからも勧告を受けたほどです。精神科薬物の多剤大量投与も抜きん出て多くなっています。
 
日本国民のメンタルヘルス事情が悪化している背景には、このような医学モデル中心の日本の精神医療があると言えます。その点で心理職が医学モデルに従うことは、“国民の心の健康の保持増進に寄与する”こととは逆のことをしてしまう危険性もあるわけです。


4.診断から対話へ!管理から支援へ!

心理的苦悩には、その人が自分の心理的状態をなんとかしようとする気持ちが含まれています。その「何とかしようという気持ち」は、自らの心理状態の改善を目指すパワーでもあります。心理支援とは、対話を通してそのパワーをより健康に向けてエンパワーしていくことです。
 
ところが、医学モデルは、対話ではなく、診断によって心理的苦悩を分類し、管理します。心理的苦悩のパワーをエンパワーするのではなく、逆に診断と薬物治療を通して無力化してしまうこともあります。つまり、医学モデルには、患者が語る心理的苦悩の意味を消してしまうパワーがあるのです。心理職が医学モデルに従うことは、その無力化、無意味化に加担してしまうことにもなりかねないのです。
 
 
冒頭で示した『「精神科診断に代わるアプローチPTMF」を学ぶ』研修会の「PTMF」は、Power, Threat, Meaning, Frameworkの略であり、「心理的苦悩をとらえるパワー・脅威・意味のフレームワーク」を指しています。このPTMFは、精神科診断に代わるアプローチとして英国で誕生し,世界的にムーブメントとして拡がりつつあります。上記研修会では、PTMFの理論と方法を解説します。心理職の主体性と専門性に関心のある方には、ぜひご参加いただきたく思っております。
 
以下において、研修会講師の石原孝二先生へのインタビューの後半を、前号(※に引き続き掲載します。今回は、心理的苦悩をとらえるパワーについてのお話がテーマとなります。
※)https://note.com/inext/n/n83a756d371b4


5.公認心理師の現状と課題

(石原先生へのインタビューの前号からの続き)

【下山】「そもそも精神医学って存在しているのですか」という疑問は、ラディカルな問いですが、私にとっては、とても心強いご意見だと感じます。ただ、先生もご存知かと思いますが、日本では公認心理師法という法律が2015年に成立し、2017年から施行されました。

その結果、公認心理師という国家資格ができ、公認心理師制度がスタートしました。その法律の条文によって「主治医がいる場合には、公認心理師は、医師の指示に従う」ことが規定されました。我々心理職は、その精神医学の下で活動することが法律で決められたわけです。

日本の精神医療は、過剰診断や多剤大量投与の問題を抱えています。しかし、そのような問題があったとしても、公認心理師は、医師の指示に従わなければなりません。その点では、公認心理師に代表される心理職のあり方は、非常に危ういものにならざるを得ないわけです。心理職のアイデンティティや心理支援の本質が捻じ曲げられる危険性があります。


6.精神医療における“パワー”とは何か?

【下山】私自身、非常に誠実にお仕事されている精神科医の先生を多く存知あげております。精神病を治療しようと頑張っておられる精神科医の先生も多くおられます。しかし、日本のメンタルヘルスにおいては、過剰診断や多剤大量投与だけでなく、世界でも突出している精神病院の入院患者数の多さや入院期間の長さ、拘束の多さといった問題が山積しているのは事実です。そして、それをリードしてきたのは、残念ながら日本の精神医療なのです。

このような日本のメンタルヘルスの問題、そしてその背景にある精神医学モデルの限界については、皆さん薄々気づいています。しかし、表立ってそれを取り上げて、正面から議論しようとしません。多くの心理職は仕方ないと公認心理師制度を受け入れています。むしろ、積極的に従おうという動きさえあります。

看護師、ソーシャルワーカー、政治家も、さらには精神科医自身も、この問題に気づいていると思います。しかし、その問題について表立って議論することも、ましてや変えていこうという社会的動きは起きていません。そこには、日本の精神医療やメンタルヘルスを変えていくのを妨げている、何らかのパワー、つまり権力を感じます。

先生が翻訳された『精神科診断に代わるアプローチPTMF』の副題は「心理的苦悩を捉えるパワー・脅威・意味のフレイムワーク」となっており、そこでも「パワー」という言葉が使われています。ただし、同書で用いられている「パワー」は、そのような権力という意味に限定されて使われていませんね。むしろ、人々が健康やウェルビーイングに向かう個人的なパワーといった意味で用いられていると思います。


7.安全確保と欲求充足に向けて動く“パワー”

【下山】では、同書で用いられているパワーとはどのようなものなのかを教えていただけますでしょうか。

【石原】 “power”をどのように訳すかは、訳者の間でも一番重要な問題でした。まず「これは、“権力”ではない」ということはありました。“力”と訳しても良かっとは思います。しかし、この本全体がその“power”の話なので、何かその日本語の訳を当ててしまうと、ちょっとイメージが固まってしまうかとなりました。

そこで、あえて“パワー”と訳したということがあります。第4章が特にそのパワーに関する章ということになっています。定義もいくつか挙げられていますが、一言で言えるような定義っていうのはなかったかと思います。パワーの複数性というか、多様性というか、そこが結構一番大事なところという気もします。

その中には生物的なパワーというのもあります。一人一人の身体に関連するパワーもパワーです。自分あるいは他の人のために安全と優位性を手に入れることができるというものもパワーです。安全性を確保してニーズを満たす、それができることもパワーという感じですね。

あるいは、他の人が必要としているものをコントロールできることもパワーとなります。“ニーズ”や“必要”とすごく結びついている言葉です。だからその一人一人の身体もパワーに関連している、そういう発想が出てくるのですね。

あとは、人間関係がすごく重要となります。人間関係のパワー、あるいは強制的なパワーとか法的なパワー、経済的、物質的なパワー、それからイデオロギー的なパワーも取り上げられています。自分の安全性を確保しようとしたり、ニーズを満たそうとしたりするパワーがあらゆるところで働いていてきます。そのパワーの作用というのが否定的に働くと「脅威」になる、そういう捉え方ですね。


8.パワーは、脅威として作用する

【石原】だから、あらゆる生活において、あるいは社会的な関係性の中でパワーは働いているということになります。その下敷きにはフーコーの考え方があります。パワーは、上から降ってくるものだけでなく、下からも作用していることになります。そのパワーの中で我々は生きているという捉え方となります。

【下山】そのように考えると、一人一人に自分を守り、安全に生活をしようとするパワーがある。しかし、他者がいて、多数の人々がいて、社会がある。そのような社会においては、他者をコントロールしようとするパワーもある。個人だけでなく、社会にも、人々をコントロールするパワーもある。

そのようなパワーに晒され、コントロールされると、その人の安全が脅かされてしまうという捉え方ですね。一人一人にパワーがあるけれども、そのパワーの動きによっては、逆に自分が脅かされてしまうことがある、そのような理解でよろしいでしょうか。

【石原】そうですね。パワーがどのように作用しているかを見ていく。安全性の確保に寄与するパワーがあります。安全性が確保できていたり、ニーズが満たされていたりして不自由なく暮らしているという時は、パワーが自分にとっては良い方向に作用しているわけです。でも、その自分にとって良い方向に作用している、その同じパワーが他の人にとっては、ネガティブに作用していることは当然あるわけです。パワーのおかげで多く得られる人がいれば、他方で、少なくしか得られない人も当然出てきます。

ここで重要なのは、病気がまずあって、病気のせいでいろんなことができなくなっていると捉えるのではなく、このパワーの作用の仕方で、何かできなくなったりとか、必要なものが得られなかったり、苦境に置かれたりしているという見方ができるということです。そこを見ていくことが、本書の全体の重要なメッセージだと思います。


9.診断のパワーは、問題を個人化する

【下山】そこに診断の問題が被ってくるわけですね。患者として精神医学的診断をされることによって、むしろその人のパワーが生かされなくなる、むしろ削がれて医療のコントロール下に入ることになる。それは、その人にとって診断や医療が脅威にもなりかねないということでしょうか。診断のパワーがそこにどのように関わってくるかという問題ですね。

【石原】そうですね。診断は基本的に個人化するものです。DSMの定義もそうですけれども、「個人の中に何か問題がある」という前提が出発点になるわけです。本書のPTMFの捉え方は、そうではありません。まず「パワーが作用している」ということが前提となります。そして、「そのパワーがどのような働き方をしているのか」を見ていくことになります。

例えば、「どうしてこのように苦しいのか」について考えてみます。それは、まず苦しさがあります。その人は、その苦しさに反応していて、必ずしもうまくいかないような行動パターンをとったりしてしまっているとします。それは、その人に対するパワーの作用の結果なのです。しかし、それを診断的な目で見ると、それはその人の「精神疾患」の問題と捉えられていくことになります。診断というのは、そういう捉え方をするものだと思います。


10.診断のパワーは、心理的苦悩と努力を消す

【下山】その人は、苦しい事態に対して何とかしようとして、環境に働きかけることも含めて何らかの行動パターンをとる。それは、役に立たないことはあるにしろ、その人のパワーの使い方ですね。ところが、精神医療では、その人を診断して精神疾患として分類する。それによってその人は患者となり、病気という、その個人に問題があるとして個人化されてしまう。

そのように精神疾患を個人化するのが、診断や医療のパワーということですね。そのようなパワーが働いてしまうと、何とかしようとして行動している、その人のパワーが見えなくなってしまいますね。ある意味で、診断には、その人の現実を見せなくしてしまうパワーがある。つまり、診断や病気という要因を入れて、そこで起きていることを説明してしまう。それは、その人のパワーを消してしまうことにもなりますね。

【石原】はいそうですね。出発点は、やはり“苦悩”だと思います。原書では、troubled とかtroublingという表現が使われていますが、“厄介な行動”や“困った行動”が起きてきます。それが現実に起きていることです。側から見ていても、「これを続けていてもどうにもならない」ということが起きてくるわけですよね。

それをどのように理解していくかというときに、「診断」となると個人に何か内的な問題があって、その現れだと考える訳です。しかし、本書では、そうではなくて、その人へのパワーの作用一般があって、その中でその否定的な働き方をしているパワーが脅威をもたらしていると考える訳です。

人は、何らかの反応をしています。何とかその状況を変えようとしたり、そこから逃れようとしたりしています。それが、自分にとって、あるいは他の人から見て、すごく厄介な困る行動として現れることがある。そのような捉え方をする訳です。このように出発点となる“行動”とか“心の在り方”をどのように捉えていくかによって、その方向性が全然違うという感じはしますね。


11.日本の心理職は無力化されるのか?

【下山】まさに、その“行動”とか“心の在り方”は、心理職が対象としているテーマです。私は、「心理職の専門性は、問題をそのようなパワーの動きや働きとしてみて問題を理解し、問題の改善を図ることである」と思っています。この本の原著の著者は、英国のclinical psychologistです。私は、このような英国の心理職やメンタルケアの動向にとても関心があります。

ただ、日本の心理職の状況は、それとは全く異なっています。石原先生は、福祉職の資格を持っておられるということですので、日本のメンタルヘルスやメンタルケアの状況をご存知だと思います。日本は、世界の先進国の中では、飛び抜けて医師の力が強く、旧式の医学モデルが色濃く残っています。医師以外は診断ができず、心理職は医師の指示の下で働くことが法律で規定されています。
 
まさに同書で指摘されている診断の問題が、世界でも最も強固に残っているのが日本であると言えます。私には、「日本の心理職は、このままでは精神医学的診断のパワーの脅威によって無力化されるのではないか」という危機感があります。このような日本の状況において、「精神科診断に代わるアプローチ」研修会を開催するというのは、画期的な企画ではありますが、無謀な試みとも言えるかもしれません。

ある意味で心理支援という点に関しては先進国である英国の状況とはかけ離れた医学モデル中心の現実が、日本のメンタルケアには厳然としてあります。残念ながら、それが現実です。しかし、私としては、本書の内容を学ぶことによって見えてくることに、とても期待をしています。

精神科診断に代わる、このようなアプローチがあることは将来に向けての可能性でもあります。少なくとも、私たちが心理職の未来の設計図を描く際のビジョンに関わってきます。ぜひ参加の皆様と訳者の皆様と一緒に議論を深めていきたいと思っています。


12.「心理職の在り方」を考える研修会に向けて

【下山】そのような研修会に参加を考えている皆様にメッセージがありましたら、お伝えください。

【石原】もともと心理職に対して非常に興味がありました。“こころの専門家”ということについては、かつては批判されたこともあったと思いますが、非常に不思議な感じがするんですね。「“こころの専門家”とは、一体何だ?」という疑問です。「そんなものがあり得るものだろうか?」というのが率直な疑問としてあるんですね。

このPTMFの面白いところは、“心理職の一つの在り方”が示唆されていることです。それは、精神医学や精神科医療とは全く異なるアプローチで心理的な苦悩を捉えていくということです。この翻訳書の日本語訳の副題にもあるように、まさに苦悩、“心理的な苦悩”を、精神科診断や精神科医療とは違う捉え方をしていく、そして、それが心理職の専門性であるということが、力強く主張されているように感じます。

もう一つ忘れてはならない重要な点は、PTMFのプロジェクトや本書が「精神科医療のサバイバー」(psychiatric survivor)の人たち、心理的な苦悩に関する「非診断的な視点」での経験をもつメンバーと一緒に作られてきたということです。

そうしたことを日本でどう捉えていくのかに、すごく興味があります。心理職が、ソーシャルワークを担う職種とどのように連携していくのか、精神科医療のサバイバーたちとどのように協働していくのかが重要なテーマだと思います。日本で、このPTMFを進めていく時に、どのようにやっていったら良いのか、どのような展望があるのかを議論できればと思っています。
 
また、今回の研修会では講師として、訳者の松本さん、白木さん、辻井さんが参加されます。松本さんは、『精神科診断に代わるアプローチPTMF』の原書を翻訳することを熱心に提案してくれました。松本さんの提案がなければ、この翻訳が世に出ることはなかったと思います。白木さんは翻訳の企画を考えているときにはすでにPTMFの紹介をされていて、ぜひ翻訳に加わっていただきたいと思いました。辻井さんは心理職でオープンダイアローグのトレーナーの資格もお持ちです。私を含めた4人はそれぞれ異なった立場、視点からPTMFを捉えていると思いますので、ポリフォニックな場になるのではないかと期待しています。

【下山】研修会では、まず訳者の先生方から本書の内容についてプレゼンテーションをしていただきます。そのお話を受けて、私が心理職としてご質問をさせていただき、議論をします。さらに参加の皆様からもご質問をいただきながら、本書で提起されている「心理職の一つの在り方」を踏まえて、日本の心理職の今後の在り方を議論していきたいと思っています。今日はありがとうございました。

■記事校正 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)

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臨床心理マガジン iNEXT 第40号
Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.40-2

◇編集長・発行人:下山晴彦

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