見出し画像

ネイティブアメリカン2冊

去年、意図せず続けて出会った2冊の本。
書き残されなければ煙のように消えていた、
かつて確実に存在した現実。

どちらも、奇跡と呼んでいい偶然で紙に残り、私が読んだ。

最初の1冊は「イシー二つの世界に生きたインディアンの物語」
児童本コーナーにあったその数センチの背表紙が
何千年分の歴史に入り込むドアだった。

イシ、はヤナ語で「人」の意味=アイヌ、と同じ。
本名は死ぬまで明かさなかったそう。

彼は3〜4千年前から北米に暮らすヤヒ族として1861年頃生まれた。
その12年前から北米ではゴールドラッシュが起き、白人が金を求めて
ネイティブアメリカンたちの命や土地を次々に奪っていく。

イシの一家は白人から隠れて暮らしていたがイシだけが残り
1911年「いい白人」に発見され、カリフォルニア大学の人類学博物館へ。
そこで暮らしてヤヒ族の暮らし方・生き方を伝え、残し、5年後に死亡。

本の中の言葉。
「白人の神は利口で、車、火、鉄、たくさんのいいものを与えたが、
 生き方を、示さなかったように思える。」
「わたしたち白人は多くの場合、どこに向かっているのか、
 自分でもよくわからないんだよ。」
「(本を書き残そう。)君や私が〈死者の地〉に旅立った何年も後に、
 遠い世界に住む人々までが、かつてヤヒ族がどんな言葉を話したか、
 どんな神々や英雄たちを崇めていたか、どんな〈生き方〉を信じていたか
 を知ることができるようにね。」

己を静かに見つめ、自然の恩恵と調和して生きてきた人々の元に
欲の人々が押し寄せた。動物を、澄んだ川を、豊かな土を、
健康な体と命を、伝統を、一族の絆を奪った。
アイヌ、琉球民族、ハワイ人にも似たようなことが起きた。
アフリカ人を奴隷として誘拐する制度もそう。

「文明」がいかに野蛮かと、
失われたものの尊さを思うと、切なくてどうしようもない。
せめて
最後の1人の命が黙って奪われず記録に残っていることに
目を背けずにいたい。

実録版の本があると知り、取り寄せた。160円。
1970年発行(私の生まれ年)、表紙の写真、イシが「文明」
に初めて現れた日が、8月29日(私の誕生日)



ここで語り尽くすよりも、私の役目と願いは、
何か力ある人がこの本と出会ってくれる橋渡しかと思う。


どうぞ、読んでください。知ってください。

もう1冊の「ケイレブ」も、いつか書きます。
野生で生きていたネイティブアメリカンがハーバード大学に
入学した実話を元にしたお話。

(写真:この本が届いた日、大きな枝が落ちて庭のティピが破れた。
 今年思いがけずもらったティピ。夫が縫って直した。)

いいなと思ったら応援しよう!