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いなぞう(羽風草)
2020年5月5日 22:19
木も草も鳥も虫も白く、夜も来ない‘しろい森’のまんなかでミナトは同行者と上を見上げたそろそろだねはじまったかな隣に立つ賢者シャスはうなずいたしろい森は祝福の森葉ずれの音がさまざまな色の 音の雨になるかるく おもく ふかく ひびく鈴のような笛のような鼓のような鳥のような虫のような声のようなさまざまな音が重なるその和音 和音 和音音が重なると音の色がうまれ
2020年5月5日 22:17
雲の断崖から下を見おろすと、数時間前まで歩いていた緑のジオラマが広がっていた。 七夕(しちゆう)は何度目かの確認を、旅の相棒にする。「いいんだな、織姫?」 相棒は返事のかわりに虹色のヒレを大きくそよがせた。 空を泳ぐ魚、リューグーノツカイ。虹色にかがやく全長十メートルの長い身体と長いヒレを持ち、空を泳ぐ姿はオーロラのようだ。滅多に姿を見せない稀少な魚で、今は縁あって七夕のかたわらにいる。
2020年5月1日 23:37
その日は特に暑かった。草原の中をどこまでものびるコンクリは焼けつき、容赦なく熱を照り返してくる。立ちのぼる陽炎で景色はゆがみ、逃げ水が現れては地面に染みていった。絶妙なタイミングで逃げる水が、まるで喉の乾きを見透かしているように思えて、舌打ちする。手を伸ばしても絶対にさわらせようとしない。 踏みだした足が水音を立てた。 見ると、肩幅くらいの逃げ水がいた。足底から逃げようともがいている。暑