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藤井総太は、こう考える(杉本昌隆著)

金、権力、成功などを手に入れた人を羨むことをなかれと言われれば受け入れられるかもしれない。だけど、好きなものに出会えた人は羨ましいと思う。

今年は遂に八冠を達成した藤井総太氏。
彼の思考や精神について師匠の杉本昌隆氏が書いた本を読んでみた。

強い理由とは、常に将棋のことを考え、研究をしていること。
そこには集中力、構想力があり、探求心がある。そして常に平常心を保っている。しかし、その姿は「努力」というものとは少し違うもののようだ。
将棋が好きで、将棋と共にいることが幸せであるということの結果なのかもしれない。
藤井氏本人の言葉をベースに師匠の杉本氏が実話と推測を交えて藤井総太の魅力を語っている。
将棋だけではなく、生き方として学ぶことが多い一冊だった。
才能があるのは勿論だが、とにかく将棋が好きであることが強い理由だと思う。
藤井総太氏については推測して書かれている点も多い。間違いはないのだろうけど、やはり本人の言葉をもっと読みたいと思った。

<以下に心に響いた箇所をまとめました。>
(ネタバレあります)

・将棋は運で勝つものではないと考える。
・他人(ひと)の将棋でも自分のことのように向き合う。
・彼はそもそも「安全にやろう」という発想をしない。危険な順から読み進めるのは彼の性格。
・藤井の構想力とは単純に「勝つ」ことだけを目的としたものではない。根底にずっとあるのは、最善手を追求する---いい将棋を指すこと。
・藤井は練習中(研究会)でも携帯電話を見ない。昼休みもカバンに入れたまま。余計な情報を入れないよう遮断し、集中している
・打ち上げの席のようなオフの状態でも、将棋のことを考えたいと思っている。オフの場でも面倒くさがらずに考えられる人は強い。
・藤井は集中力を意識しているのではなく、大好きな将棋と自分を一体化させているのでしょう。対局中「一番集中できている時は、集中しているという実感すらないないような状態になり、一分が長く感じる」とも述べている。
・藤井が目指す先には、他人の存在や、どこか知らないところで作られた権威のようなものはない。タイトル獲得後の記者会見やインタビューでも気持ちを高揚させることなく落ち着いているのは、タイトルを獲ることが最終的な目的ではないから。
・藤井でもプレッシャーや緊張を感じる。つまり、平常心とは、向上したいという思いから生まれる心の揺れを、そのままプラスに感じられる時に生まれるもの。プラスに思えるようにするためには、経験の積み重ねが必要であり、そこにはそれまでに培ってきた自信が大きく影響する。
・詰めて詰めて隙が無い。藤井の将棋はそのように見えますが、それは血のにじむような努力研鑽の結果からではないのです。そういう意味では秀才タイプではありません。勝負に勝とうが負けようが、将棋をしていること自体が楽しいのです。


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