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マインドフルネス-2|あることモード

1. あることモード

「あることモード」の原語は |being mode 《ビーイング モード》です。「あることって、何が?」と初学者の私は戸惑い、哲学的な感じの名称に身構えたものです。しかし、そんなに難しい話ではなく、簡単に言ってしまうと「(自分の思考や感情を)変化させようとしない」ということに近いニュアンスだということがわかりました。下のイラストは「あることモード」についてまとめたものです(私の中のあることモードは凧揚たこあげのイメージです)。

あること-2

2. あることモードの要点

あることモードは「変化させようとしない」ということは、先ほど説明しましたが、これだけだとピンとこないかもしれません。ここでは、より具体的に理解していただくために、要点となるキーワードを紹介しながら、簡単な説明を加えていきます。

無批判・中立的|私たちは何か見たり、聞いたり、感じたり、考えたりするとき、いろいろと評価してしてしまうことがあります。カラスの鳴き声が聞こえてくると「うるさい!」と評価したり、頭が少し痛くなると「あのストレスのせいだな・・」とか判断したりします。日常生活では、あれは良いとか悪いとか、頭の中では絶えず評価や判断をしています。そのような状態から抜け出して、今自分が経験していること、今自分に起きていることを評価や判断をしないで、ありのまま受け入れてみましょう。たとえば、先程のカラスの鳴き声が聞こえてきたときは、「カラスが鳴いている」とだけ受け入れてみましょう。頭が少し痛くなったら「こめかみが少しチクっとしてる」と痛みをそのまま観察してみましょう。

瞬間に生きる|頭の中で何かを考えている時や悩んでいる時は、未来か過去のことについて考えていることが多いかもしれません。身体は「今ここ」にあるのに、頭(心)だけが過去や未来に飛んでいってしまっている「心ここにあらず」の状態です。このような状態では、現実を正しく見たり受け入れることが難しくなっていまします。今ここは「1秒後」の未来には1秒前の過去になります。過去も未来も今をどう生きるかで変わってきます。そう考えると、自分が今すべきことに意識を向けて暮らすことの大切さがに分かってきます。

注 意|私たちの頭(心)は多くの物事に興味をもっていて、いろんなことが浮かんでは消えて、常に慌ただしく活動しています。それは雑念と呼ばれてしまうものですが、雑念は振り払おうとしても振り払えません。それどころか、どんどん浮かんできてしまうことさえあります。そんな時は、自分が集中したいものにそっと意識を戻すだけでOKです。そのためには、自動的にぼーっと考えている状態に素早く気づく必要があります。そして、その状態に気づいたら、注意を向けたいものに向け直せばいいのです。それでもまた、気が逸れるかもしれませんが、100回逸れたら100回戻せばいいだけです。

対応性日常生活では1つ1つのことに深い注意を向けることなく、いつもの反応をしながら生活をしています。たとえば、歯を磨く時はいつもの手順で何も考えずに自動的に磨いている場合が多いと思います。また、家族と喧嘩する時は、咄嗟にひどいことを言い返すこともあると思います。これらは全て自動的な「反応」のパターンでり、自分自身の感覚が鈍感な状態や、過剰な状態の時に現れやすいパターンでもあります。言うまでもなく、これらの反応はマインドフルな表出ではありません。歯を大切にしたいなら、たまには歯の感覚を確かめながら丁寧に|磨みが「対応」が大切になります。家族と喧嘩になりそうになったら、ちょっと一呼吸置いて、言葉を選んでから「対応」することが大切になります。

認める私たちは自分が辛い時や後悔している時は、自分自身を認めたくなくなります。「こんな自分は嫌だ」「何でもっと準備できたのにしなかったんだ・・情けない」など、自分を恥じたり批判する気持ちが|膨ふくらんでいきます。でも、自分を恥じたり批判することで、自分の価値は高まるのでしょうか?そんなことはないということも分かっていても責めたくなる気持ちもわかりますが、あえて自分を認めてみるという方法も知っておいてください。「自分はとても辛い気持ちだな、この状況は誰だって辛くなるよ」とか「今度は準備できるようにしよう」と励ましながら自分を認めていくことだってできるはずです。自分を認めることは苦痛に耐えることを含んでいるので、辛い気持ちがすぐに楽になるわけではありませんが、自分を恥じたり傷つけることよりは、あなたの苦痛を和らげ、自身の価値を高めてくれると思います。

消極性|消極性という言葉の響きだけですと良いイメージではないと思います。反対に「積極性」は良いイメージかもしれません。しかし、積極性には「することモード」の側面があるので、判断を繰り返し行いながら、反応的に活動することにもつながりやすくなります。もちろん、目的を達成する時には積極性は大切になりますが、我を忘れた活動状態になってはいけません。消極的というのは「やる気がない」ということではなく、これらの積極性の反対の意味だと思ってください。具体的には、我を忘れるほどの積極性ではなく、何事にも少し距離をおいているような態度だと考えていただければと思います。

関与しない|私たちは無意識のうちに何でもかんでも関わってしまいがちです。たとえば、イライラしている時はイライラにずっと関わってしまいます。嫌なことが頭に浮かぶとずっと考えてしまいます。関わりたくないものほど自動的に長く関わってしまいがちです。それらの関わりを断ち切るためには「関与しない」ということを意識することから始めます。イライラしている時に、イライラしている自分の理由や正しさについて考えたりしても仕方がありません。嫌ことを感じ始めたら深呼吸する癖をつけて「気づき」を積極的に意識します。イライラに気づくことが「イライラしちゃってるな」と自分に声をかけて、必要以上に感情に巻き込まれないように距離をとり、自分のやるべき作業などに意識を戻します。

あることモードは、無になることやボーっとすることとは違うことを理解していただけたと思います。実は、これらの考え方は日本人には馴染みが深い考え方です。今から100年以上前に開発された日本独自の心理療法である森田療法にも「あるがまま」という概念があり、治療の中核概念です。不快なものであってもそれを受容し、変化させようとしない態度はすぐには身につけられないかもしれないですが、まずは意識することから始めてみると良いと思います。




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