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【放送後記】#29 心を癒す効果が確認されている「祈り」の言葉

自分に優しくするって、くすぐったい響きだった

 「自分に優しくする」という言葉を見聞きして、すんなり心に入ってくる人はどれだけいるのでしょうか? 私は自分自身が、この「自分に優しく」という言葉に、くすぐったさを長らく感じていました。しかし、今の私にとって、この言葉は人生を支える大切な理念になっています。自分に優しくすること(または、その概念そのものに)抵抗感がある人は、きっと、優しくするということを体感しづらい生き方をしてきた人かもしれません。または、厳しい環境を生きぬいてきた人で、「優しい=甘い」というふうに捉えてしまっているのかもしれません。いずれにしても、「優しい」という概念が一般のそれとは異なるものであることが多いのは事実です。
 心理療法における優しさのアプローチは多種多様にあります。放送で紹介したセルフ・コンパッションという概念もその1つです。私はいわば、理論から「優しさ」を批判的に学んだ人間なのですが、その学びで腑に落ちるきっかけになった考え方があります。それは「自分への慈しみは、自分を積極的に癒そうとするストイックな態度である」という言葉(定義)でした。「優しさ=甘やかし」の構図で捉えていた概念でしたので、優しさが「癒し」であり、積極的な態度という言葉に、しばらくは思い悩みました。
 理解からスタートした「自己への慈しみ(セルフ・コンパッション)」は、実践することで理解が深まります。不幸にも(あるいは幸福にも)、このセルフ・コンパッションを実践する機会が多くあり、私は人生をやり直しているのかなと思うことさえあります(苦笑)。セルフ・コンパッションを実践してみてわかったこと、そして、わかりかけていることは、「苦しみに耐える力があるからこそ、自分に優しくできる」ということです。セルフ・コンパッションの概念に違和感を覚える人は、きっと、苦痛に強い人だと思います。その苦痛に耐える力を別のベクトルに生かすことができることを、またどこかでお伝えできればと思っています。

心理学の知識を楽しくご紹介できるように、コツコツと記事を積み上げられるように継続的にしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。