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よろしく愛して

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実りがない人生ならば、 長期展望にどんな意味があるのでしょうか。 どんな時でも、しょうがない人でありたい、 そんなしょうがない人を愛していたい。
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2018年12月の記事一覧

23歳の地図

23歳の地図

23歳になった。東京に出てきて4年が経った。

1年大学進学に遅れた僕は、この年で学生生活を終える。この街に出てくれば何かが変わると思っていた、というセリフを大学4年間で何度吐いたか知れない。

23歳になれば、ちゃんと朝ご飯を食べられると思っていた。もしくは、だれかとちゃんと朝を過ごしていると思っていた。相変わらず朝に弱いし、珈琲マシンを購入する勇気は出なかった。

23歳になれば、ちゃんとした

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愛をもらった日

愛をもらった日

「愛」と僕は答えた。

それは普段行き会うことができない友人からの「今から訪ねるけど何か欲しいか」という連絡に対してだ。

大学一年生の頃から付き合いのある彼は、演劇の道で食っていくと言い残し、大学4年生で早稲田大学を去った。その頃から、彼とは多忙につき中々会うことができなくなっていった。そんな矢先のことだ。

特に欲しいものは無く、どうせ彼は万年金欠なのだからろくなものは期待できなかったために吐

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父のようになりたくなかった

成人式の日、父にネクタイを結んでもらった。

「良い大学出てもネクタイも結べないんじゃしょうがないぞ」と言いながら、その言葉とは裏腹に父はなんだか嬉しそうだった。成人式の後に家で酒を飲みながら寿司を食べた。父は頬を赤らめて「こんな酒がうまい日は久しぶりだ」と笑っていた。

僕は、こんな大人には絶対なりたくないと父の背中を見て育った。

父は不器用で短気で価値観を人に押し付けては思い通りにならないと

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