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#33 母が”母”であった証~「夕暮れ症候群」~

専業主婦だった母は、毎日夕方4時になると、チャリンコに乗って、近所の商店街やスーパーへ買い物に行っていた。その途中、神社の境内で遊び呆けている私達姉弟に「ウチに帰りなー! お母さん、”お使い”に行くよー!!」と声を掛けていく。5時前には帰って来て夕飯の支度をする。その時までに、家に帰っていないと、めちゃくちゃ怒られたものだ。。。

父が病院へ行って留守だったある日の夕方、
母が何やらソワソワ、グズグズ言い出した。

私「なに??どうしたの?」
母「あ、ちょっと私、出かけてくるね。」
私「ん?どこ行くの?車で乗せてってあげるよ?」
母「いいの。自分で自転車で行けるから。」
私「・・・あぁ、そう・・・。で、どこまで行くの?!」

母は、モジモジしながら、答えた。
「あ、あのね、私、子供達を迎えに行かなきゃいけないんだよ・・・。」

”なんですとっ?!”

あなたの”子供”なら、ここに・・・・・。(滝汗・・・

私は、ハッと時計を見た。時刻は夕方4時を廻っていた。
まさか・・・・

私「あぁ~。そ、そうなんだ。どこん家の子?」
母「ウチの子達に決まってるじゃないっ!! 💢」
私「あぁ~・・・なるほど。そうでしたね・・・。お子様達、おいくつ?」
母「うちの子達はね、まだ小さいの。三人いるんだけどねぇ~ 😍
  待っているのよ。子供達が。”ウチ”に帰らないと・・・。」

私「あぁ・・・そ、そ、そうなんだ・・・・・・・・・・・・。
 (や・・・、やっぱりお母さん、認知症なんだ・・・。)」

母の認知症発症を確信した瞬間だった・・・。

母「あ、でもいいわ! もうすぐお父さん、帰ってくるでしょ?
  Ilsa子も来てるし、何か、お夕飯、どうしようかね?」
  ⬆️
  通常運転に戻る。

そんな事を繰り返していた時期がある。
やがて、母は父や私のやんわりとした制止を振り切って、夕方になると、チャリンコに乗って、”子供達”を探しに出かけて行く様になった。

私の事を・・・。小さかった弟達の事を・・・。


『夕暮れ症候群』という、
女性の認知症患者によく見られる症状なんだそうだ。

【 夕暮れ症候群とは 】
認知症の本人が夕方から夜にかけて、不安になったり、混乱した言動をとったり、「ひとり歩き」をするなど普段とは異なる言動を示す状態を指します。特に日が暮れて薄暗くなる頃、周囲がはっきり見えず場所の見当がつきづらくなることや、日中の疲労が蓄積して脳の活動が低下することで、不安や混乱が生じ、周囲(介護者や家族)から見て理解しづらい行動に至ることがあります。

SOMPO笑顔倶楽部より

何故、そんな症状が出るのか?は、まだハッキリとは解明されていないらしい。「夕暮れ症候群」の症状が出る人もいれば、出ない人もいる。

だけど・・・
「夕暮れ症候群」の母は、私の”母”であった「証」・・・。

Ilsaの気持ちより出典

そう思うと、チャリにまたがり、意気揚々と出かける母を、叱って止める事なんて出来はしない。対応に苦慮していると、父が「俺が一緒に行くから、大丈夫だよ。いい運動にもなるしw」と言って、度々、助け船を出してくれた。

二つ並んだ自転車が、何やら楽しげに、ゆるゆると夕暮れの空に向かって揺れていく。。。

どうか、もう少し、この時間を・・・。父と母に・・・。
私の父と母に・・・。


父にとって、母が『日曜日よりの使者』だったかは定かではないがw
楽しそうに自転車に揺られて、西の空へ向かって行く二人の背中に
捧げた曲は、この曲だっ!! 💫


もし「夕暮れ症候群」の症状が出たら、
参考にして欲しい記事を貼っておく。
⬇️
認知症の方の「夕暮れ症候群」にはどのように対応すべき?家族が身に着けておきたいコミュニケーション法とは?

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