沈丁花

私の言葉はすべてフィクション。 虚偽の中で戯れましょう。 どうぞ、よしなに。

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最近の記事

不安になる

唐突だが、私は自信がない。 これは決して今に始まったことではない。 長きに渡って積上げてきたいわば実績のようなものだ。 人生ももうすぐ30年。 武士の時代ならちょうど人生を折り返した頃だ。 この短くも長い私の経験から、分かる。 自信を持って言おう。 私には自信が微塵もない。 私が生まれたのは平成の初期も初期。 平成初期の田舎には、その終わりを迎える直前までどんよりと、しかし確かに昭和が漂っていて、だから私は自分の人生をこう評している。 『平成生まれ、昭和育ち』と。 そうは

    • 【創作小説】ゆらゆら

      序 入学式の日の昼、食堂は混んでいた。 一ヶ月前からラボにこもって黙々と制作に励んでいたらいつの間にか日付の感覚がなくなっていたようだ。これから始まる新生活への期待に瞳をキラキラさせた彼らの中に現像液の酸っぱい匂いが染み込んだツナギで突っ込んでいく勇気などなく、食堂の入口で数秒フリーズしていたと思う。 しかし彼らのキラキラに介在するのは新生活とせいぜいそのパーツだけで、ろくに陽にも当たっておらず青白い顔をした酸っぱいツナギの女こと私なんて初めから眼中になどなかった。 そ

      • 【創作小説】自己紹介、執着。

        8年間吸い続けた煙草の銘柄を変えた。 煙草を吸い始めた頃は煙を美味しいなんて思えなくて、最初の2年はとにかく吸えるやつを探して適当に吸ってた。 美味しくないからちょっと吸ってはすぐに捨てた。ガールズバーでバイトしてたからお金には余裕があった。 ある日私の吸殻を見た客の一人が「姉ちゃん、付き合っても長く続かへんタイプやろ。」と言ってきた。 「なんで?」と聞くと、「一本の煙草をどれだけ吸えるかっていうんが、恋人をどれだけ愛せるかってことなんや。」と教えてくれた。 「だから覚えとき

        • 【創作小説】自己紹介、僕のこと。

          入浴ついでに浴室の掃除をし髪を乾かしている頃に、脱衣時にスイッチを押しておいた洗濯機が仕事を終えてピーと三度鳴く。 一日分の衣類と、枕カバー、ハンドタオル、バスタオルをそれぞれ一つずつ干すことが毎平日のルーティンになりつつある。 いろいろと試した末、ようやくこのサイクルに生活が落ち着いてきたと感じている。 インスタを見て掃除術や収納術を覚えた。 浮かせる収納?クエン酸?ディフューザー? 大抵のことは僕に聞いて欲しい。 オススメを教えてあげられるから。 そうそう、最近は積立

          【創作小説】自己紹介、私について。

          私は傲慢だ。 親切の皮を被った、どこまでもドス黒い「欲」と「嫉妬」を腹に飼い慣らす、それはそれは傲慢な生き物だ。 ある日から人に嫌われることを恐れるようになった。 集団という蟠りに負けないようにと高く挙げた右手がたった一本、教室で視線をかっ攫ったあの日からだ。 顔から火を噴くような思いだった。 「学級長」の横に書かれた見慣れた苗字に罪悪感のようなものを感じ、とにかく居た堪れなくて誰にもバレないよう細かく震えていた気がする。 いつだったか、堂々と手を挙げる面々に羨望の眼差しを

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