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倒木更新:倒木で木漏れ日が差し込み、同時にその倒木が次世代萌芽の土台に。自然界における新陳代謝の現象。(CASE: 52/100)

▲「倒木更新」とサステナビリティ

倒木更新(とうぼくこうしん)は、寿命や天災、伐採などによって倒れた古木を礎にして、新たな世代の木が育つことです。既に周囲に多数の樹木が生育している森林の地面上では、笹などの下草などにより針葉樹の新芽は太陽光を浴びられず、うまく生育ができません。しかし、ひとたび大きな木が倒れると、そこには木漏れ日の空間が生まれ、倒木は芽を出す土台となります。日照不足が緩和され、倒木自身が次の世代の養分の供給元となり、さらにはその表面に生えたコケが湿度を保ちます。木が倒れることが、静的であった森に新たな生命が根付くきっかけとなり、次のエコシステム(生態系)が始まります。
ビジネスのエコシステムにおいても、倒木更新と似通った現象が見られます。

例えば、1828年、米国ロードアイランド州に作られた米国最古のインドアショッピングモール「The Providence Arcade」は、郊外の大規模店舗のあおりを受け一度はその役割を終えてしまいました。しかし、歴史遺産ともなっているその建築が礎となり、今では48のレジデンスと飲食やサロンなど複数のスモールビジネスが集う新たなエコシステムとして生まれ変わっています。

また、2002年に大企業のアルプス電気が撤退した岩手県盛岡市では、地域に残ったアルプス電気の技術者が次々とベンチャー企業を興し、医療機器の一大産業集積に至ったという事例もあります。同地域では、電動ピペットで有名なアルムカス・ラボを始めとして40を超える技術系ベンチャーが生まれ、成長しています(この話、とても面白いのでご関心のある方はぜひ調べてみてください!)。

自然界においても、ビジネスにおいても適切な新陳代謝が起きることで、新たなエコシステム、新たな価値創造が生まれます。自然界では摂理として組み込まれているこのシステムを、人間界では意識して形作らなければなりません。

米国の開業率は10%前後、日本の開業率は5%前後、一人一人の自助努力では埋まらないこの差を、仕組みで変えていきたいものです。

▲参照資料

https://ja.wikipedia.org/.../%E5%80%92%E6%9C%A8%E6%9B%B4...

▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。

2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.labシニア・ディレクター 杉江周平

▲i.labについて

i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。

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