定置網:追い回さず、迷路に誘い込む。江戸時代から続くその漁法は資源だけでなく、働き方もサステナブルに。(CASE: 49/100)
▲「定置網」とサステナビリティ
早いもので、今年も海の季節がやってきました。さて海に行くと、沿岸に奇妙な浮きのようなものがプカプカ浮かんでいるのをみて、「あれは一体なんだろう?」といつも思っていたのですが、今回この記事を書くにあたり調べていて、それが「定置網」だったことを知りました。
漁というと、獲物を追いかけ回すイメージがありますが、定置網は、異なります。定置網は、魚を探したり追いかけたりすることはなく、網の入り口を開いて魚が泳いでくるのを待つ漁法です。魚は、網などの障害物にぶつかると決まった方向に曲がる習性があるのですが、その習性を利用して網を迷路のように設置し、放っておくことで勝手に魚が網の中に入ってきてくれる仕組みです。「良い男を捕まえるには、追うよりも追わせよ」とよく言いますが、魚も同じことのようですね(?)。
さて、そうやってゲットした「サカナ」ですが、捕獲寸前まで泳がすことができるので、大変新鮮な状態で流通させられ、美味しいネタとなってくれます(!)。
また、魚群探知機を使って魚を探し回る必要がなく、網も岸の近くに設置されるため、船の燃料も少なくて済み、エコな漁法だと言えます。加えて、網の目の大きさを変えることで稚魚は逃げ、成魚だけを獲ることができるので、資源管理にも適しています。江戸時代から続くとも言われる、日本で400年の歴史を持つ漁法だそうです。
漁師の仕事というと、不規則かつ収入も不安定、という博打的イメージがありますが、定置網漁業は一定の収穫が見込め、かつ労働時間が規則的。朝は早いものの、昼過ぎには仕事が終わるので、サラリーマンとそれほど遠くないそうです。先述した「追いかけ回さない」という定置網のコンセプトが、働き方のサステナビリティをも高めているということですね。ここだけの話、以前あまりホワイトではない職場環境にいた私としては、なんとも羨ましい限りです。
攻めの営業や攻めの経営など、ビジネスの世界では攻めることを求められがちですが、待ちの営業や待ちの経営など、攻めないことで何か新しい形が生まれるかもしれない。対象の習性を深く理解し、正しく場を作り、そこでじっと待つことがサステナビリティを高めるのかもしれない−そう考えさせられる事例です。
そんなわけで、私も今日は攻めずにプカプカ浮いて、しばらく「待って」みようと思います。
▲参照資料
▲キュレーション企画について
イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。
▲今回のキュレーション担当者
i.labアートディレクター/デザイナー 井上麻由
▲i.labについて
i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。
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