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クラ:贈り物自体に経済的な価値は無いからこそ交換行為の社会的価値が高まる (CASE:13/100)


▲「クラ」とサステナビリティ

クリスマスのプレゼントをパートナーと交換するとき、お互いの予算や欲しいものを探り合う。私たちは普段、誰かと何かを「交換」するとき、お互いにメリットのある取引になるかを考え、失敗すれば関係性が悪くなることを恐れています。かく言う私もその価値観に浸って育ち、小学校のプレゼント交換イベントはサバイバルゲームに感じました。そんな私にとって目から鱗だったのが、大学時代の文化人類学の授業で学んだ「クラ」という交易システムでした。

「クラ」はニューギニア近くのトロブリアンド諸島で行われてきた儀礼的な交易の仕組みです。島民は、他の島々に贈り物を送り合うパートナーを持っており、ソウラヴァと呼ばれる赤い貝の首飾りと、ムワリと呼ばれる白い貝の腕輪を交換します。島民は隣の島から贈り物を受け取ると、しばらく経った後に反対側の隣の島にそれを渡します。ソウラヴァは時計回りに、ムワリは反時計回りに交換され、贈り物は島々を循環していきます。

面白いのは、贈り物自体に経済的な価値は無いにもかかわらず、贈り物を受け取る側は遭難するリスクを冒してまで舟で隣の島まで渡り、贈り物を渡す側は歓待の儀礼に莫大な出費をかけることです。お互いに経済的メリットが何もない交換なのですが、それゆえにお互いの関係性が強化され、島を超えたネットワークが維持されているというのです。まさに、サステナブルな社会関係を生み出す仕組みというわけです。

思えば、現代においても私たちは経済的な意味は何もないのに飲み会ではお互いにビールを注ぎ合い、社会関係を確かめています(いました?)。苦労して物を送り合うこと自体が関係性を維持するのですから、クリスマスも頑張ってプレゼントを選んで送り合うこと自体が大事で、金額が釣り合うか、欲しいものであるかはどうでもいいのです(そう、どうでもいいのです)。

▲参照資料

▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.lab ビジネスデザイナー 島村祐輔

▲i.labについて

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