Bitter
小学生の頃から、母がマグカップで飲んでいるあの温かそうな飲み物が気になっていた。中身はなんというか、灰色がかった茶色のような黒のような、上手に説明できない色をしていて、芳ばしい香りがする。
「それなぁに?」
彼女に尋ねてみたのは、三年生くらいのことだったと思う。
「コーヒー。飲んでみる? 苦いよ」
とのことなので、差し出されたマグカップに恐る恐る口につけてみる。思い出されるあの笑みから考えるに、母はどちらかというと「まずっ」というリアクションを期待していたのだろう。まさか、まだ幼き娘からこの言葉が返ってくるなんて思うまい。
「おいしい」
ってな感じでこんにちは。
珍しく二連続の無害おしゃべりの時間だよ。noteさんは定期的に食指が動くトピックを提供してくださるからありがたいですね。
それでは「#私のコーヒー時間」、アツく語らせていただきますよ〜。
冒頭のとおり、私は小学三年生の頃からコーヒーを気に入って飲んでいました。強がりでもなんでもなく、本当に普通にイケちゃったんですわ。謎。フルーツだの生魚だのレバーだの相当のものが食べられない偏食家の癖に、なにゆえこの大人の苦い飲み物は飲めたのやら。
まあなんだっていいです。とにかく私は、コーヒーとは長い間お友だちだったわけなんですよ。
最初は一週間に一回飲むか飲まないかくらいだったと思うんですけども、五年生くらいからは一日に二回は飲むようになっていたと思います。朝ご飯の時の一杯、学校から帰って夕方に母とお菓子を食べながら飲む一杯。夕方のコーヒータイムはね、「カフェクローバー」って名付けてましたね。母も私もクローバー好きだったんで。「カフェクローバーする?」ってね。へへ。書いててめっちゃ恥ずかしいわ。
そういえばここで注釈を入れておくんですが、私の言う「コーヒー」は、特に補足のない限りインスタントコーヒーと思ってください。わたしゃしがない庶民じゃ。通の方には「にわかだ!」ってツッコまれるかもしれないし、コーヒーメーカーで作ったものやお店で提供されるものも好きだけれど。馴染み深いのはどちらかと言われたのなら、私はインスタントなのです。
あと、冬でも夏でも基本的にホット派です。
ブラックに挑戦したのは中学生からだったでしょうか。こっちも美味しくいただけますが、より好きなのはクリープ・砂糖・牛乳を淹れたものかな。ごまかしが効かん分、ブラックはお店のがいいかもな。あと、甘いケーキの後のは良い。
大人になるにつれて、一日に飲む回数も増えていきました。今は朝に一杯、夕方か仕事帰りに一杯、夜に一杯、合計三杯は飲まにゃ気が済みません。深夜にも普通に飲みます。特に真夜中の狂気で執筆している時に飲むコーヒーはたまんねえ。
あれだ、ルーティンってやつだね。コーヒー自体も好きなんだけど、もう飲んでいる自分自体にも依存してるんすよ。
高校生になる頃には、コーヒー好きを大々的に公表してました。好きな飲み物は?には間違いなく「コーヒー」。好きな食べ物は?に対してすら対抗馬がなさすぎて三割冗談七割本気で「コーヒーしか出てこん」と答えてきました。あ、お菓子ならいい勝負できるかな。コーヒーのアテの。ムーンライトにメルティキッス。最近父がたまに買ってくるケーキ屋さんのワッフルは感動しちゃうくらい美味い。←デブ予備軍の思考
あのね、私食に対しての関心が本当にない人なんですよ。促されたら食べるけど、そうされない限り断食レベルで放棄してしまいそうなくらい、食べるという行為が面倒で、辛くて、好きじゃなくて。
そんな私でも、コーヒーだけは欠かしたくないなって感じられるんです。
高校卒業して一人で街を出歩くことが増えてから、そういえば自分の好みのコーヒーってどういったものだろうって考えたことがないなということで、小研究を始めました。カフェやコンビニ巡りですね。外に出ることも嫌いな人間ですが、遠出した先のカフェ巡りだけは今でもぐいぐい行っちゃいます。秋から冬の終わりにかけては特に、外の肌寒さを切り抜けた後のコーヒーのあたたかさは最強。
結果、苦味とコクのあるものが好みということが判明しています。酸味の強いものとローストのキツイものは苦手。スタバのカフェベロナや、コメダのブレンドコーヒーが大好きです。コメダは最近初めて行ったんだけどね。田舎すぎてなかなかありつけんのじゃあ。
そして、今使ってるマグカップがこちら。
魔女の宅急便のジジちゃん。中高時代所属していた管弦楽部(そういや言ったけ、私は中高一貫校出身です)を引退するときに、後輩がプレゼントしてくれました。カフェベロナもその時一緒にくれたのが出会い。私の好きなものを覚えてくれていたってことで。嬉しかったなぁ。
卒業してもうしばらくですが、今でも大切に使っています。マグカップの物持ちだけには自信があるのだ。先代のシルバニアファミリーのショコラウサギのもの(ちょうど前回の記事で綴ったかしいかえんで買ったものです)も十年近く使っていたと思う。
そう。私にとってコーヒーとは、単に美味しい飲み物というだけでなく、私のパーソナリティとしての役割も長いこと果たしてくれていたんです。「コーヒーが好きだよ」という一言から、「ええ、オトナ〜」なんて反応をもらって、ちょっと余裕のある人物像を演出できて……
「強がり」で飲み始めたわけじゃないけれど、思えばずっと、コーヒーは私の「ちょっとした強さ」の象徴としてずっとお供をしてくれてくれていたのかもしれない。
高校三年生の時に音楽室の隣の顧問の部屋で一度だけ淹れてもらったコーヒーが、一番思い出に残っています。大好きだった人が淹れてくれたコーヒーは、すごく、すごく胸に沁みた。彼と仲良くなれたきっかけも、共通の好きなものがあったから。
コーヒーを、愛していて良かった。
私の物語を読んでくださりありがとうございます。 スキやコメントをしてくださるだけで、勿体ない気持ちでいっぱいになるほどに嬉しいです。うさぎ、ぴょんぴょこしちゃう。 認めてくださること、本当に光栄に思っております。これからもたくさん書こうと思っておりますので、よければまた。