
セカンドオピニオンとデパス断薬記
精神科医療に対する様々な意味での不信感や不安感というのは多くの人々にあるのではないだろうか。特に薬については依存の危険性のないものを必要最低限だけ飲みたい、という気持ちが強くあるだろう。今、自分が受けている治療が妥当なものなのか、知った上で治療を受けたいというのは当然だと思う。患者側には、妥当かどうか判断するだけの知識も経験もないから、他の医師の助けが借りたいところである。
しかし、ただでさえ精神科・心療内科へ初診で行くのはハードルが高いのに、セカンドオピニオンをもらいに別の精神科・心療内科へ行くというのは負担が大きい。ここで私がお勧めなのは普通の内科にセカンドオピニオン役を担っていただく、ということだ。
私は心療内科にお世話になる前から、不眠症のため、内科兼睡眠外来に通っていたのでそこの先生にセカンドオピニオンを求めていた。これがなかなか良かった。
私は2020年3月にうつ病と診断され(その後双極症に診断が変わった)、3週間ほど仕事を休んだ。3ヶ月休むように主治医からは言われたが、上司から4月から復帰するように脅されてそれだけしか休めなかった。職場でいじめられたことが原因で体調を崩した私は、復帰に強い不安があった。ただ不安だ、を通り越して、夜中にガタガタ震えて飛び起きたり、逆に滝汗をかいて起きたりしていた。それを心療内科で相談するとデパス(エチゾラム)が処方された(処方したのは主治医ではなかったが)。
飲み始めてすぐは確かに不安が軽減された。何とか初出勤したし、新しく転勤してきた同僚ともすぐ仲良くなれた。その同僚に支えられて、何とか休まず出勤を続けていた。しかしすぐにデパスの副作用が主作用を上回るようになった。とにかく沼に引きずり込まれるように眠い。思考回路はショート寸前(歌えた人は同世代かしら)、何にも集中出来ない。異様なまでにイライラし、希死念慮も強まっていた。今の私を見て「この人精神疾患あるのかな?」と思う人はあまりいないと思うが、その頃は誰が見てもいわゆる「病んでいる」人に見えた。
その夏の終わりくらいに、これはうつ病の症状じゃなくて、きっと飲んでいる薬の副作用だ、と思うようになった。色々調べて私はデパスを断薬することに決めた。自己判断での断薬は厳禁と言われているが、主治医はもともと、「不安が強くないようならデパスは飲まなくていいよ」と言ってくれていたので、勝手にやめてもいい、ということだと判断した。
しかし断薬したい、と心療内科で伝えるのは勇気がいった。処方した医師も病院にいるからだ。何だかたて付くようで嫌だった。そこで私は睡眠外来の先生に相談することにした。デパスの断薬に賛成して下さった。デパスを飲むのをやめて抑肝散という漢方(効能がデパスに似ている)を飲み、離脱症状を和らげることになった。抑肝散はやめる段になってもあまり離脱症状には苦しまないだろうということだった。
さてその作戦が上手くいったのかどうかはよく分からない。離脱症状はそれなりに、いや相当苦しかった。2週間くらい続いただろうか。ただ、「勝手に断薬したからこんなことになってしまったのかも」と悩むことがなかったのはセカンドオピニオンを下さった医師のおかげである。
もしこれから断薬に挑戦する方がいたら、あまり一人でいないようにした方がいいと思う。変な気を起こしかねない。ただ私はデパスが飲みたくて飲みたくて仕方がない、みたいなことにはならず、やめることが出来た。その後も飲むことはない。よくデパスは合法麻薬のようなものだ、という人がいるが、そんな依存性はなかった(私の場合は)。
主治医との信頼関係はもちろんだが、気軽に第三者の意見を聞ける状況は良い。行きつけの内科、おススメです。