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堀江敦子「女性活躍から始める人的資本経営 多様性を活かす組織マネジメント」

この本を読んでいる間に、職場の期末面談がありました。能力・態度評価のフィードバックを受けたのですが、去年より0.2ポイント下がっていると分かりました。説明は肯定的な観点のみで、なぜ下げたのか、というところはありませんでした。フィードバックされるようになってからずっと同じだったうえに、評価する職員3名は昨年度と同じ、特に今年だけ何かが変わったということもないつもりです。あまりに傷ついて、理由を尋ねることもできませんでした。
言葉を選ばずに言うなら、組織の犬を心の中でバカにしつつ、評価はされていると思い込んでいたことを認めざるを得ません。

この本を読んだきっかけは、これを課題図書として、読書会をしませんか、というお誘いがあったからです。気付いたのが一週間前でちょっとした事前課題もありました。そこまでできるか心配でしたが、Kindleで購入し、課題も8割型終えることができました。
他の方も、おっしゃっていましたが、単に女性活躍というところだけでなく、人的資本経営、というところが、期待できる本だと思いました。
そもそも、女性は〇〇だから使えない、みたいな発言を聞くと、とてもがっかりします。そもそも、人的マネジメントって、人材を適切な場所に配置して、能力を最大に発揮してもらうこと、さらには経験を積んで成長してもらい、さらに発揮してもらうことだと思います。女性は〇〇だからという人は、きっと、男性の中の違いも見つけることができない人なのかな、と想像してしまいます。人的資本経営とは程遠いというか。

この本は、こんな構成になっています。

第1部 理論編
 第1章 なぜ今「人的資本経営」なのか?
 第2章 ダイバーシティが組織に与えるポジティブな効果
 第3章 日本における女性活躍の歴史
 第4章 日本企業で女性管理職が増えない理由
第2部 実践編
 第5章 女性活躍推進3つの視点と7つのポイント:
     現場・人事編
 第6章 女性活躍推進3つの視点と7つのポイント:
     経営・広報編
 第7章 実践! 自社のアクションプランの作り方
 第8章 先進企業事例

本書 目次より

私は市役所職員です。もともと女性も働きやすい職場、子育てもしやすい職場、ということで選びました。実際のところ、想像していたような支所のような窓口専門の部署以外は、定時で帰れるところはあまりなかったです。それに仕組みとしては、男女平等でしたが、最初の課では職員に昼のお茶入れをしなければならず、驚愕でした。その他にも、女性は市民生活部や福祉の窓口が多く、それ以外に配属されると、庶務事務というバックヤード的な仕事に充てられることが多く、そういうのも残念です。そういうのが合っていると感じる人には良いのかもしれませんが。
2年前に出版された佐藤直子氏の「女性公務員のリアルーなぜ彼女は『昇進』できないのかー」では、どの部署を経験するか、ということに男女差があり、結果として、昇格した後にどの部署に配属されるかということも、男性と比較して、企画や総務や財政といった政策的な部署に配置されにくい、ということが示されています。

この本には、多くの自治体の女性職員が共感しました。
色んな経験ができていたら、良かったのに、と思うことも多々あります。
一方で、今の時代、庁内の情報はもちろん、ネットで他市の情報も取れるます。さらに、過去に経験していたとしても、法改正や時代の変化で変わることもあり、過去の経験に縛られるのはよくないケースもあるかもしれません。
知らないからこそ、新たな視点で考えられる、という発想もあるのかもしれません。まあ、そのような意見はなかなか受け入れられにくいものだとは思いますが。

こうした前提で、この本の第1章から第3章を読むと、制度や表向きの考え方については、既に取り入れられているものの、浸透していない状態なのだろうな、と感じました。アンケートデータなどで確認できているわけではないので、あくまでもこれまで自分が接してきた人や、その周囲の考え方から推測されるものになります。
そして、第4章の「日本企業で女性管理職が増えない理由」というところも、とてもうなずけるところがありました。

特に興味深いのが、ホモフィリーの課題についての部分です。
ホモフィリーとは、同じような属性や価値観を持つ人とつながろうとする人間の傾向のことを言うそうです。人は同じ属性の相手に親近感を持ちやすく、またホモフィリーの相手から影響を受けやすいと言われています。
実際、タバコ吸いに行った時に話を通した、といったこともよく聞きます。だから禁煙できない、と言っていた人もいました。

これがいいとか悪いとかではなく、このような人間の性質があることを踏まえ、できるだけバイアスを自覚していくことからスタートしていこう、ということなのだと思います。第4章では、様々な男性・女性の性差に関する印象が、バイアスではないかということがデータで示されていました。

第5章から第8章に関しては、主に、人事部門の施策的な部分に関することが多かったですが、それでも、自分の身近な中でできることもいろいろあるのではないかと考えました。
例えば私は係長なので、係の中でどのように仕事を担ってもらうようにするか、というところで、反映できるわけです。
影響できる範囲が小さかったとしても、そこで実現できなければ何かが違っているかもしれないわけで、まずはそこから考えていきたいと思います。

オンライン読書会はとても楽しいものでした。
そもそもこのようなテーマに参加しようとする方々ですから、男性とか女性とかに分けて人を見ようとするタイプではないですし、また親しみやすいファシリテーションのおかげで、それぞれの組織の話を持ち出しながら、感じたことの交換ができました。
あまりに話しやすい空間だったこともあり、「私は自分のこと活躍してると思ってます」と、恥ずかし気もなく、発言してしまいました。能力態度は評価下がっちゃったんですけど、と思いながらも、続けて言ったのが、「自分がやりたいと思ったことをできているので」と言いました。
それが活躍できている、ということになるのかどうかは、分かりませんが、少なくとも、私としては、自分の能力を出し切れているという実感があります。
一方で、庶務事務を担っていた時には、全くそうは思えませんでした。定型事務は先月の自分より早くこなせたかどうか、だけが勝負でしたし、他の人の仕事ぶりを見て、ほんのり自分の考えを提案してみたり、受け入れられないと、私ならもっとうまくできるのにと妄想する妖怪みたいになってました。
今は違います。
自分が課題認識したことを、定型事業と結び付けて色付けしたり、不要だと思うことはスクラップしたりできています。それだけでなくて、係のメンバーの仕事も、従前と同じようにやればよいというのではなく、効率化したり、新たな意味づけを加えたりできるように、一緒に考えることができていると思っています。そして、それを形にできています。
ものすごく大きなことができている、とかではないのですが、それでも、活躍できていると感じられています。

一番最初の部署である職員研修所に所属していた頃、研修講師をお願いしていた大学の先生が「行政の仕事は未来を作る仕事」とおっしゃっていました。なので、どちらかといえば、若い人にも共感してもらえる仕事をしなければいけない、と思っています。
今後も、地方公務員法第32条を遵守しながらも、小さいながらも未来のためになる仕事をしていきたいです。

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