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WLBコンサルタント 中倉誠二「子育てでビジネススキルがアップする!」

とある人が、「育休から復帰してきた女性は、浦島太郎」という発言をしました。それまで男性と同じように働いてきたのが、育休期間中の社会情勢の変化についていけなかったり、組織内の仕組みが変わったのに追いつくのが大変だったり、ということを言いたいのでしょう。
でも、とても悔しくて、もう数年前の話なのですが、忘れることができません。
私の職場は、基礎自治体、行政の中でも、最も市民の生活に密着したものです。私自身、育休期間中は、当然ですが、子どものいる頃には利用していなかったサービスを利用したり、子育て館に足を運んだりしました。それだけでなく、だっこ紐でこどもを背負いながら買い物すること、ベビーカーでまちを歩くこと、公園に子どもを連れていくことがどういうことなのか、というのを肌身で感じ取ることができました。

現場を知らなければ、市民の生活がどんなものであるかを知らなければ、基礎自治体の仕事はできないと思います。
もちろん、それが全てではないですが、子育ての経験があるからこその視点、というものを身につけられたと考えていました。

その後、実際に「子育て経験者としての意見を活かして、考えてみて」と上司に言われたことがありました。
私の実感が本当に正しいのだろうか、と不安になったりもしましたが、子育て経験者であることを仕事上でポジティブに捉えてもらうことができて、とても嬉しかったです。

この本は、そうした生活者としての実践を仕事に活かそう、というだけではありません。
そもそも子育てそのものに必要となってくるスキルが、ビジネスでも応用できる、という話なのです。

第1章は、イントロ的に男性も子育てする大切さを説いています。
第2章からは、ビジネスに必要なスキルと、それが子育ての中でもどのように活かされているか、ということについて、挙げられています。

第2章 対話する力を磨く
第3章 計画する力を磨く
第4章 実行する力を磨く
第5章 育てる力を磨く

本書 目次より

章の中の節で、もう少し細かな力に要素を分けて、説明しています。例えば第3章では、

1.情報収集力——目的で情報選択する
2.発想力——多様性と柔軟性を持つ
3.段取り力——効率的にタスクをこなす
4.洞察力——本質を見抜く
5.リスク管理力——ダメージを抑える

本書 目次より

という感じです。

私にも思い当たることがあります。
例えば、段取り力は、自分の支度をし、朝食の準備をし、子どもを起こし、朝食を食べさせ、子どもの支度をさせて、最低限の片づけをして出かけるという大変な状況で日々鍛えられます。基本的には同じ毎日ですが、たまに夫が出張でいなかったりするとさらに洗濯を回して干すというタスクが加わったりしていました。
リスク管理力は、公園までのお散歩なのか、ちょっと遠出なのか、食事を挟むのか、といった状況に応じて、想定されるリスクを踏まえ、様々な準備をしなければいけないわけです。
しかも子どもの状況は少しずつ変化し、成長に伴い、想定されるリスクもそれに対応する準備も変わってきたりするのです。

段取り力のところには、こんなことも書かれています。

ここで、この本をお読みの母親の方にお願いがあります。夫が最初は家事や子育てを段取り悪くやっていても、決して「何やってるの! そうじゃないでしょ!」とか「もう、私がやったほうが早いからいいわよ!」などと文句を言わないでいただきたいのです。新入社員に仕事を教えるのと同じで、うまくほめながら優しく指導してください。それが夫を家事や子育てに巻き込んでいく秘訣です。
妻に文句を言われた夫は、機嫌を損ねて「(せっかくやったのに)そんなこと言うなら、もうやらない」と反発します。妻に「ありがとう」「助かったわ」「意外と上手じゃない」などと感謝の気持ちを伝えられたりほめられると、夫はよい気分でその気になってより積極的な姿勢になっていきます。
こうして夫婦で一緒に家事や子育てに取り組むことで、結果的に2人とも会社の仕事にも通用する段取り力が向上していけば、まさしく一挙両得が2倍と言えるのではないでしょうか。

本書 第3章 計画する力を磨く 3.段取り力——効率的にタスクをこなす

実はこの本を読んだのは今から7年前。その時はこの部分を全く素直に読めませんでした。
夫はそれなりに育児に協力的ではありました。洗濯は夫が担ってくれたし、子どもが急に熱を出して、私がどうしても休めない時には午前中だけ、とかリモートで対応してくれることもありました。
リモートじゃなく休みにするときには、翌日は病児保育に預けたいから、その準備として、受診しておいてほしいと頼みました。でも帰ってみると、予約方法が分からなかったから受診してない、と言われることもありました。ネットで調べれば分かるのに、そんなこともできないの、と思いました。口に出したかどうかまでは覚えていませんが、態度には完全に出ていたと思います。

まあ、午前中仕事に行けて片付けられただけ良しとしないといけないのかな、と考えたりもしていました。でも、本当はもっと分担してほしかったというのが本音なのです。こんなに私が大変そうなのになぜ気付いてくれないのか、結局、私の仕事をバカにしているのか、でもそれなりにやってくれているのだから、これで良しとしなければ、というトライアングルを一人きりでぐるぐるしていました。
夫も何もしなかったわけではありません。夫の価値観で考えて、色んなことをしてくれていたことは理解しています。自転車を教えてくれるとか、プールにたくさん連れて行ってくれるとか。

けれど、もやもやした気持ちは、どんどん溜まっていっていました。いつも私だけ我慢して頑張っているのに、それを分かってくれないと、どんどん不機嫌になっていました。
この部分を読みながら、あの頃のことを思い出して、泣きそうになりました。

今あの頃に戻れたら、私は自分自身でノウハウを身につけてきたのになぜ自分で考えられないのか、などとイライラしたりせずに、気持ちよくやってもらえるようにお願いしたいと思います。
やってくれたことに感謝して、段取り力を身につけてもらえて、またお願いして、時には自ら気付いてやってくれたりして、きっと二人でいいトライアングルを回すことができたのではないかと想像します。

過ぎたことは変えられませんが、まだ、分担しなければいけないことがたくさんある中で、気付けたのは良かったと思います。
今は、前よりはいろいろとお願いできるようになりました。夫の今の仕事が少し余裕があって休みが取りやすくなったりしたこと、また私自身も、自分の中で完結して諦めるのをやめようという気持ちになったのです。
あと、ひょっとしたら、自分自身が初めて部下を持つようになったことも、きっかけの一つかもしれません。

とりあえず今年は、PTA役員をやってもらいました。私は3人の子ども1回ずつやりました。これまでで初めてです。かなり抵抗されましたけどね。こんなに抵抗されてお願いしてやってもらわなきゃいけないのかと思いましたけどね。でも、PTAというたった一つのことだけでも、全く考えなくてもよいと思うだけで、だいぶ心が楽になるということを実感しています。

私は子育てでかなりビジネススキルを身につけたつもりになっていたけれど、チームで動くというところは、足りなかったなと思います。でもまだ当面、子育ては続くので、これからです。

それとあともう一つ。
最初の話に戻りますが、育休明けの職員が浦島太郎だとしか思えないとしたら、子育てにどっぷりつかっていた人を活用できない上司のマネジメント能力に問題があるのではないか、と思います。第5章は「育てる力を磨く」、まさにマネジメント能力の話です。
こどもまんなか社会の実現を目指すなら、育休明けの職員ほど貴重な存在は、他にないはず、などという言葉が浮かんだりしています。

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