見出し画像

石橋恵・和田直美「発達障害・知的障害のある社員を活かすサポートブック」

こうすればいまくいく!
障害のある人の可能性を引き出して活躍できる職場へ!
本の帯にはこんな風に書いてあります。

この本を手に取る人は、障がい者の方と一緒に働いていて、どうしたらよいか分からないけれど前向きに取り組んでいたり、もっと戦力になってもらいたいけれど、うまくいかなくて悩んでいる人が手に取るのだと思います。

私自身もそんな感じです。
今いるメンバーとは、2年一緒に働いてきました。といっても、担当がいて、私は係を統括する立場。この3月で卒業することになっていて、新しいメンバーを迎えるにあたり、きちんと考えたいと思いました。

本の内容は5つの章に分かれています。

第1章 障害者雇用を始めるために
第2章 障害のある人と一緒に働くときに知っておきたいこと
第3章 業務の切り出しとマッチング
第4章 知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ハック
第5章 安定した就労のために

本書 目次より作成

第1章では、障害の種別や、障害者雇用促進法における合理的配慮について、説明しています。平成28年の法改正の際に、差別禁止とともに合理的配慮の提供義務が盛り込まれています。本書では、厚労省のホームページなどを引用しながら、次のように書いています。

ここで大切なのは、障害者に「能力」があることを前提にしていることです。彼らは能力はあるけれども、障害(制約)によって発揮することが難しいのです。しかし、障害特性(制約)によって発揮することが難しいのです。しかし、障害特性(制約)に対して工夫(配慮)をすれば、能力を発揮することができ、活躍できるようになるのです。
障害者を雇用する事業所に求められている合理的配慮とは「障害者それぞれの持つ能力が発揮されるための工夫を考えて実施すること」といえるでしょう。

本書 第1章 4 合理的配慮について知ろう

続いて、第2章では、上司や同僚として、どのようにサポートしていけばよいか、その心構えについて書かれています。例えば、この人はこういう障害があるから、ではなく、まずその人自身を知るために仲良くなろう、といったことです。またパニックや委縮してしまうことへの対応方法などについても書かれています。

第3章では、業務の切り出しとマッチングについて書かれています。
業務の切り出しについては、庄司啓太郎著「結果が出る業務のムダ取り」を参考に業務を難易度で3つに分類することから始めます。

A:感覚型業務 経験・理式からの判断を要する業務、複雑な判断を伴う業務
B:選択型業務 いくつかのパターンがあり、条件に応じて手順を選択する業務
C:単純型業務 ほとんど判断がいらず、手順が定まっている業務

Cについては、障害のあるスタッフ向けになりやすいことは分かりますが、Bについても、判断を2つくらいのうちから選ぶようにしたり、選択する部分だけ別のスタッフが行って、Cに分類される業務の集まりのような形に分解することもできます。

さらに切り出した業務をどう習得してもらうか、OJTやマニュアル作成についても書かれています。

今私は、一部A、全般的にBに分類される業務をなんとかCの塊にできないかと考えていることがあります。今は共通事務として電話を受けたスタッフが端末を調べながら対応していることを、4月以降に向けて、ネットから申し込みできるようにした上で、その対応を特定のスタッフがまとめて分担することで、エラーによる手戻りを減らしたり、効率化を図ったりすることが目的です。その時に、一部を障がいのあるスタッフに担ってもらいたい、できれば、少しずつその範疇を増やしたい、とぼんやり考えていました。
それが、この切り出しの考え方の説明のところを見て、感覚的に、これくらいならやってもらえるかな、と考えていたことを、より明確に考えられるし、他の人にも説明して理解してもらいやすいかも、と考えました。何しろこれまでみんなで分担していたことなので、やり方を変えるためには、みんなの理解が必要ということもあるのです。

第4章では、30種類の業務について、障害のあるスタッフに担ってもらうための工夫が書かれています。もちろん一つ一つの内容もきめ細やかに考えられていてすごいのですが、名刺・ポスター作成から動画編集まで、様々な業務があり、一つ一つのステップを積み重ねていけば、こんなに幅広く担ってもらうことができるのだ、と驚きます。

例えば動画編集やウェブ編集なども、最後の確認は別のスタッフが行うなど、業務を切り分けることで、可能になります。また、初心者でも簡単に編集ができるソフトも紹介されていて、こうしたソフトを使うことで、障害のある方のできることを広げられるというのも、ITの力の素晴らしいところだなと思いました。

第5章では、働く意欲を高めることや、特性やサポートに関する情報共有の仕方の工夫などについて書かれています。同じ業務について、複数の支援者が異なるやり方をしてしまうのは、本人の混乱につながってしまいます。また、本人の伝え方にも注意が必要で、こうしたところについて、丁寧に書かれています。

こうした分野のタイプの本を読むといつも思うことなのですが、障害者手帳を持っていない私たちにも得意不得意があり、調子のよい時悪い時があり、もしこのように丁寧に考えてもらえる環境で働くことができたとしたら、ものすごく力を発揮できるのではないかと思います。
障害のあるスタッフに働きやすい工夫を考えた後は、それをもっと広げて、自分たちにも応用していけば、私たちにとっても働きやすい職場になるのではないかと想像しています。

こうすればうまくいく!
と帯にはありますが、読むだけではなくて、実践していくことが大事、少しでも実践したら、より理解が深まり、さらに新しいことに取り組んで、というよいサイクルができるのではないかなと思います。

まずは今考えているA+B⇒Cの業務の切り分けから取り組んでいきたいと思います。

この本の著者は、子どもたちに関するあらゆる問題に先駆的に取り組んでいるフローレンスの方です。単に取り組む内容がすごいだけでなくて、組織内部の手法についても、実践されていて、すごい組織なんだな、と思いました。はじめに、のところにある言葉がとても印象的です。

本書では、「障害のあるこどもたちが、職業に就く未来を当たり前のこととして想像できる社会」になることを願って、わたしたちの障害者雇用への取り組みをご紹介していきます。

本書 はじめに


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集