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書籍レビュー『われはロボット』アイザック・アシモフ(1950)ロボットに心はあるのか

【約1600字/4分で読めます】

【こんな人にオススメ】
・SFが好き
・ロボットが好き
・ミステリーが好き

【こんな時にオススメ】
・SF の世界に浸りたい
・人間の心理が知りたい
・ちょっとした空き時間

SF のビッグ3の一人、
アイザック・アシモフの初期短編集

なんですが、短編集といっても、それぞれのストーリーは、同じ世界の出来事であり、連作短編の趣きもあります。

この作品がのちの長編『鋼鉄都市』('64)に繋がっていたり、続編の短編集『ロボットの時代』('64)もあり、アシモフの入門編としても最適な短編集とも言えるでしょう。

すべての物語は

ロボ心理学者、スーザン・キャルヴィンの回想からはじまります。

彼女は US ロボット社に勤める研究者で、長年にわたってロボットの心理学を研究してきました。

「今回のキャルヴィンさんは、どんな話を聴かせてくれるのだろう」とワクワクさせられる構成が秀逸です。

それぞれの話の趣きが異なるところもおもしろかったですね。

9篇の短編を収録

収録作品
『ロビイ』『堂々めぐり』『われ思う、ゆえに』『野うさぎを追って』『うそつき』『迷子のロボット』『逃避』『証拠』『災厄のとき』

本作では「ロボット工学の三原則」というものが提示されており、いずれもそのルールが絡んだお話になっています。

ロボット工学の三原則
第1条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第2条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第1条に反する場合は、この限りではない。
第3条 ロボットは、前掲第1条および第2条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

『われはロボット』(p.5)

例えば、とある短編の中では、こんな状況が出てきます。

目の前の人間に危険が迫っている、しかし、その前には熱線が走っていて、ロボットが助けに行くと、自分が壊れてしまう。

そうすると、ロボットは助けに行ったところで、人間は助けられないし、自分も熱線によって壊れてしまいます。

これは第1条を守ろうとした結果、第3条も守れないことになりますよね。

だったら、人間も自分もダメになってしまうくらいなら、助けに行かずに自分だけが助かった方がいいのではないか? という葛藤が生まれるんですね。

これはほんの一例ですが、本作に出てくるロボットは、ロボットらしく冷静なキャラクターに描かれているものの、ものすごく人間的な一面も感じられるのです。

個人的には『われ思う、ゆえに』という短編が特に気に入っています。

タイトルのとおり、ロボットが自我に目覚める話なんですが、その中で、ロボットは人間と意見が対立するんですね。

人間たちは自分が作ったロボットに、そのことをロボットに伝えるのですが、それを全然受け入れてくれないのです。

このやりとりを見て、私はロボットと人間のどこが違うのだろうと思いました。

今の時代は、AI も発達していて、こういったやりとりを誰もが体験できる世の中になっています。

だからこそ、このおもしろさが身近に感じられますが、本作が発表されたのは、1950年のことです。

こういった過去の作品を読むたびに、SF 作家の先見性に圧倒されます。

まだロボットが巷に溢れるほどの世の中にはなっていませんが、いずれこういう時代がくるのでしょうね。

そうなれば、ますます本作の素晴らしさが多くの人に伝わる時代になるはずです。


【作品情報】
発行年:1950年(日本語版1963年)
著者:アイザック・アシモフ
訳者:小尾芙佐
出版社:早川書房

【著者について】
1920~1992。ロシア生まれ。
3歳の頃にアメリカ、ニューヨークへ移住。
1939年、『真空漂流』で作家デビュー。

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いっき82
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