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“痛み”について
皆さんは、「痛み」と聞いて、どのようなイメージを受けるでしょうか?
多くの方は、痛みと聞くとネガティブな印象を持たれると思います。
そこで今回は、普段関わることの多い“運動器の痛み”についてまとめてみました。
次回は、産業分野における痛みとの関わり方についても書いてみたいと思います。
記事のまとめ
◯痛みとは
◯痛みは必要?不必要?
◯痛み種類、時期
◯痛みがある方との関わり方、セルフケアについて
僕が普段勤務している整形外科クリニックには、運動器に関する痛みを主訴として来院される方が多くいらっしゃいます。違和感を主訴に来院される方は、ほぼいらっしゃいません。ご自身に当てはめてみても、違和感程度で病院を受診しようとは思いませんよね。
患者さんに対応するときに、痛くて困っているのか?痛みが出てしまうことに困っているのか?など痛みというワードでも患者さんがどのようにその痛みを解釈しているかによって、僕らの対応の仕方も変わってくることがあります。痛みの状態は、目に見えないものなので患者さん個人の捉え方を知ることも大切になってきます。
痛みの定義
“An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage,”
「組織損傷が実際に起こった時あるいは起こりそうな時に付随する不快な感覚および情動体験、あるいはそれに似た不快な感覚および情動体験」
The revised International Association for the Study of Pain definition of pain
concepts, challenges, and compromises 2020
これは、国際疼痛学会(The International Association for the Study of Pain)が今年に定めた疼痛の新しい定義になります。
痛みは、①組織損傷によるもの②組織損傷を起こしそうな不快な感覚および情動体験、③あるいはそれに似た不快な感覚や情動体験による3つに分類することができます。この世に存在する痛みが全て綺麗に3つの分類に分けられるものではなく、重なり合っている状態もあり、痛みは複合的に捉えていかなければならないものだと思います。
上記の内容をざっくりと簡単に言うと、臨床の場面で患者さんが感じる痛みは、
①構造的(骨、筋肉、靭帯)が損傷した痛み
②組織損傷をを起こしそうな時の警告の痛み
③痛みに似た不快な感覚や情動体験
3つに分けられると思います。しかし、実際は①〜③がオーバーラップしている場合もあります。
痛みは必要?
痛みはなんのために存在しているのでしょうか?基本的には、痛みという感覚は生活の中で無い方が良いと感じる方がほとんどだと思います。でも痛みは存在する。様々な考え方がありますが、僕としては痛みは身体からのサインであると考えています。痛みがあることで命を守ることができることもあります。
実際に「先天性無痛症」という痛みを全く感じない疾患の患者さんもいらっしゃり、痛みが無いためにその方は気がつかないうちに舌を噛んでしまっていたり、骨折してしまったりしているようです。(僕は実際にお会いしたことはないので、症状や状況は記載することはできないのですが)
痛みには、けがや病気をした時に身体を守るための警告としての生理的な痛みがあります。
痛みの時期と種類
痛みをその持続時間で分けることもあります。けがや病気が治るまでの短期間の痛みは「急性痛」と言います。それに対してけがや病気が完治しないため長引く痛みや、治った後にも続く痛みは「慢性痛」と言います。
厳密な痛みの期間での決まりはないですが、創傷治癒過程である3ヶ月が1つの目安だと言われています。3ヶ月以上続く痛みは、慢性痛として捉えています。急性痛から痛みが軽減していくのが通常ですが、身体への負担や使い方によっては再発することもあり、炎症期間が長時間持続することで慢性痛へと変化される方も経験します。
普段の臨床現場では、急性期の痛みを落ち着かせるように患者さんの行動変容や機能の改善を図り、慢性痛へと移行しないマネジメントも行なっています。
慢性痛は、「長引く痛み」とも言われており、身体的要素に加えて、心理社会的要素、精神的要素が複雑に関与しているとも言われています。
長引く痛みがもたらす事
組織損傷を生じる痛みを経験すると、痛みの強さにもよりますが、人は思考も変化します。痛みがある時に前向きに物事を捉える事はなかなか難しいです。痛みは、人の思考をネガティブにします。ネガティブな思考は、痛みが出ない行動を選択させます。そうなると寝たきりになるなど活動量の低下が認められます。さらに、心の状態もうつ傾向になりやすくなります。ちなみにうつ傾向はどんな人もなりうる心の状態です。痛みが長引いてしまうことで、心の状態も変化が出てしまうことがあります。痛みは、悪循環を作ってしまいます。これを専門用語で、「Fear avoidance model(疼痛回避モデル)」と言います。
しかし、上記の言い換えると痛みが悪いわけではなく、身体を守るための対応として痛みが生じることで身体を休ませようとしているとも捉えることができます。
痛みの原因が心の状態から来ている場合もあると判断された場合は、うつ病の薬が慢性痛に処方されることもあります。
長引く痛みに対する対処法
整形外科や病院では、長引く痛みに対処することがあります。その際の対応は簡単に分けると以下になります。
①原因に対する治療に加えて痛みの治療
②運動療法(ストレッチや筋力トレ)
③薬物療法(飲み薬、貼り薬、点滴など)
④薬以外の治療法(ブロック注射など)
痛みがある患者さんに対するセラピストとしての関わり方
痛みを有する患者さんに接する時には、先ずはその方の痛みがどの段階にあるのかを把握します。
◯いつから痛みがあるのか?
◯痛みが出たきっかけのような事象はあるのか?
◯痛みはどんな種類のように感じるのか?
◯痛みが強くなる条件はあるのか?
◯痛みが楽になる条件はあるのか?
この様な問診を通じて、その方の様々な状況を把握していきます。もちろん痛みを取り除くことが一番の目的ですが、今ある痛みを強くしない様な対応も時には必要になります。先ほどの内容でもありましたが、急性痛から長引く痛みに移行しない様に適切な関わり方をしていきます。
もちろん、痛みの原因を明らかにすることも大切ですが、痛みそのものに対してはお医者さんが既に対応してくださっているので、今ある痛みがどの様な状態なのか、どんな事に由来して生じている痛みのなのかを分かる範囲で患者さんに伝える事で、痛みへの対応の幅を広げることができます。そうなると、ただ漠然と痛みがある事に対する不安感が少し改善される方も経験します。
また、痛みが出る条件を明確にしてお伝えする事で、ご自身での痛みが出ない様に生活の中で気をつけることが出来る方も経験します。
そうなってくると、患者さんたちの反応も変化が出る方もいらっしゃいます。毎回の問診の中でも初めのうちは「こうすると痛い、、、」「これが痛い、、、」という痛みが中心の内容が多いのですが、「ここをこう工夫したら痛いけども◯◯ができた」「痛みが無い範囲で動かすとここまでできた」などと生活が中心となり、痛みと上手く付き合える様に生活の中でも変化が出てくることを経験します。最初の方にも書きましたが、痛みに対する解釈の変化が生じている状態なんだと思います。僕らセラピストの最終的な目的は、目の前の患者さんの行動変容を促すことだと思っています。セラピストに出来ることもあるし、出来ないこともあります。だからこそ、言葉や身体に触れることで身体と対話をする事でその方個人に合った対応の方法などをお伝えする様にしています。
エビデンスに基づく対応もとても大切だと思います。しかし、臨床現場ではエビデンスに基づいての個別性を考慮した対応が必要になってくると思っています。
まとめ
痛みとは
◯組織損傷が起こった際に警告を発する防御機構である。
◯単なる知覚ではなく、個人的な経験でもある。
◯痛みは感情面にも影響し、我々を同様させたり、悩ませたりする。
◯ダメージが取り除かれたと思われる場合でも持続することがある。
運動器に関する痛みに関して上記にざっくりとまとめてみました。
痛みに関する内容はとても奥深いので、様々な要素を考慮しながら、対応していくことが必要になります。先ず大切なのは、現状の把握だと思います。“過去”“現在”を踏まえて、“今”どんな状態なのかを目の前の患者さんにしっかりと伝えること。“今”を受け入れていただくことで“これから(未来)”への対応を僕らと一緒に考えることが出来ると思います。治療の中心はあくまで目の前の患者さんだと思っています。セラピストは患者さんを支える存在として、公平中立な立場で真摯に“今”出来ることを提供できる存在でありたいと思っています。
次回は、産業保健分野でセラピストが関わるとしたらこんなことが出来るのでは無いかという提案や妄想に関して記事を書いてみたいと思っています。
長文のお付き合いありがとうございました。
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これからも皆さんのセルフケアに約立つ情報を提供していく様に発信を続けていきます。それでは最後までお読みいただきありがとうございました。
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