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「共感の奴隷になるな。」


ポール・ブルーム著「反共感論 社会はいかに判断を誤るか」を読んだ。

共感することにより、

非道徳的で愚かな判断を招き無関心で残虐な行為を動機づけてしまう。

さらには非合理で不公正な政策を招いてしまう。

という、共感に対する弊害を書いた本。

恐らく、多くの人は共感を善いことだと思っているけど果たして本当に善いことだろうか。

もちろん善いこともあるけど、共感することで生まれる弊害を考えたことがあるだろうか。

そこを学べる本で、読んでいてなるほどと納得することがあり

こういう考え方を見直せる本は多くの人が読んだほうがいいと思った。

俺的に今年読んだ本の中でもかなりの良書に入る。


この本では共感を二種類に分けている。


一つは、情動的共感。

これは、感情のミラーリングのことで

簡単に書くと

「他者が感じていることを自分でも感じること」

を指す。

例えば相手をなだめようと思った場合、

相手の不安をミラーリングした結果、自分も不安を感じてしまいなだめるどころではなくなる。

といった状況になる。

だから、情動的共感は思いやりや配慮とは全く違うもの。


もう一つは、認知的共感。

これは、他者の立場に身をおいて他者の視点で物事を考えること。

つまり、

「他者の心の中で起こっている事象を感情を挟まずに評価する」

こと。



この2つをもっと簡単に書くと、

情動的共感が感情的

認知的共感が理性的

な働きをする。



そして、この本が問題視しているのが

感情的である情動的共感の方だ。

(認知的共感は物事をフラットに見る場合に有効と言っている。)


情動的共感は

スポットライトの性質があることを問題点として挙げている。

つまり、

特定の場所を照らし出すがその焦点は狭く、向けた場所しか照らし出せないんだ。

だから、極端なバイアスがかかってしまう。

しかも、身内や知り合い・身元がわかる被害者を優先する先入観が反映されている。

その結果、行動を抑制することもあるが行動を動機づける場合もあるから

差別や残虐な行為、戦争だって起きてしまうんだ。

さらに、そういった行為を肯定するように考えてしまう。



この本は共感を全否定しているわけではなく肯定もしているからそこもしっかり読んでほしい。

それにしても、

共感は偏った見方で差別や戦争を生む

とは考えたこともなかったけどかなり納得できた。

宗教でも政治思想の左右でも

自分と同じ考えの人たちは狭いスポットライトに当てて

暗がりは否定・無関心・差別・攻撃しているからね。


しかも、訳者のあとがきでも書いたあったけど

その情動的共感・偏った見方がSNS(特にTwitter)によって煽られやすくなってしまっているんだ。

これは本当に気をつけなきゃいけない。

共感のような直感の影響を受けやすくなっているけど、

その奴隷になってはいけないんだ。



俺はよくnoteで投稿しているけど、

どれだけ物事を冷静に客観的に観れるかが重要なんだ。

それなのに偏った見方をしていたら一生客観的になんか観れるようにならない。

そう考えると、共感という行為だってもしかしたら偏見の原因になっているかもしれないんだ。

決して、共感=正しい・善いことではない。

真逆の意見にもしっかり触れて多角的に観れるようになるべき。

その時に感情的になる必要はない。


共感の奴隷になるな。

しっかり物事を観ろ。


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