『プラトン『国家』の道案内』 大著に挑戦する読み手に授ける〝ルートマップ〟
井川夕慈のKindle電子書籍『プラトン『国家』の道案内』より「まえがき」を抜粋して公開します。
まえがき
読書は登山に似ている。
登山が、岩や土の感触を足裏で感じながら一歩一歩足を前に出すことで頂上に辿りつくように、読書もまた、書き手のアイデアを理解しようと一語一語言葉を拾って読み進めることにより結末に達する。
ふいにプラトンの『国家』を読み返してみようと思った。
動機は今の政治状況にある。それについて詳しく書くことはしない。民主主義は機能しているのか? ということについて、にわかに関心を持ったとだけ述べておく。
政治のあるべき姿についてと言えば、プラトンに『国家』という作品があったはずだ。
確か<洞窟の比喩>が書かれている対話篇がそれだ。
学生時代に一度読んだことはあるはずだが、本全体の内容に関してはさっぱり記憶が無い。もしかしたら<洞窟の比喩>の部分だけをつまみ食い――読書だから「つまみ読み」か――しただけかもしれない。
プラトンは、政治のあるべき姿として「哲人王」を主張したとされるが、『国家』という書物全体を通してプラトンは何を言っていたのだろうか? 2400年もの昔に、プラトンは政治のあり方についてどのように考えていたのか? そもそも<洞窟の比喩>と<国家>なるタイトルはどのように関連するのか?
――というわけで、40歳を過ぎた筆者は少しばかり気合を入れ、同書を集中して読み直した。
一通り読み終えるのに丸4日かかった。
その結果、《ああ、そうなっていたのか……》と得心すると同時に、《古典ってやっぱりすごい、だから時代を超えて生き永らえているのか》との思いに打たれた。
筆者の理解の深度は横に置くとしても、文庫本にして上下2巻・各400ページにわたる内容が、全体としてどのような構造になっているのか、という点に関しては客観的な認識に行き着いたと思われる。
そこで筆者は、これから『国家』という作品に挑戦する新たな読み手のために<道案内>をしようと思った。
『国家』は分量のある作品である。低い山ならとりわけ準備をしなくても登頂できるかもしれないが、『国家』のように高くて深い山の場合にはルートマップがあると助けになるだろう。
本書では、これから『国家』という山に登ろうという読書人のための道案内をしたい。
この先あそこに曲がり角があるぞ、あそこまで上がればこういう景色が見えるはずだ、というぐあいに。
(続きはKindleでお楽しみください。)
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