【感想】この部屋から東京タワーは永遠に見えない
作者麻布競馬場さんの「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」を読みました。
帯にはこんな一言が書かれています。
港区で出会った人々を題材に書かれた文章たちはまさに「孤独と空白を抱えたブルジョアたち」でした。
仕事が順調だったり、容姿端麗で恋愛に困ってなかったり、外から見ると華々しく見える彼・彼女たちも心の内では、嘔吐出来ない心のしこりを抱えている物語の数々。
そんな感情が生々しく書かれているのがこの本です。
東京と言う無限の可能性を感じる秘境
たまたま東京という地に生まれた私にはあまり理解出来なかったのですが、「東京」という場所は夢見る秘境のように魅力的に写っているものなのでしょう。
この本を読んでケツメイシの「東京」が頭に流れました。
歌詞を少し深ぼっていくと
東京という地に憧れを持って上京した彼が
決して夢が溢れている訳でも目に見えないチャンスがある訳でも無いと感じていて、それなのに触れたくて甘い場所だけど結局凄く冷たくて早い場所。
そう感じながらも東京という地で何かを残そうと頑張る。
受け入れながらも頑張り続け最後に
仲間を見つけ語り合い、夢の形を変えながらも「何かを見つけるまで」僕は帰らないと誓う。
「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」の中の人たちと一緒なのだ。
ギャップを自分の中に落とし込めるのか
隣の芝は青く見れる。
誰かが掴んでいるものは自分でも欲しいものなのだ。
東京という地で輝いている人々は高学歴、高収入、楽しそうな遊びをしていて、外から見るととてつもなく楽しそうに見える。
そんな姿をみんな追い求めて「東京」そして「港区」に憧れ、もがき、苦しむ姿が描かれているのが「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」の全てです。
そんな情景をフィクションで描き、虚無感を清々しいほどに書ける麻布競馬場さんには嫉妬しかない。
これも隣の芝が青く見れる状態である。
自分と理想、理想と現実このギャップをどうやって埋めて生きていくかが幸せのカギなんだと思わせる労働文学でした。
東京に期待せずに自分に期待する
なにかに期待すると結局それは他責でしかない。
他責は誰かのせいに出来る分すごく楽だけど、結局は自分の首を締めることになるのはみんなも経験があると思います。
「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」から学べることは何かに囚われて生きていくと結局自分の「心」は満たされないという人々を見て、自分はどう生きていくかを考えることだと思う。
見えない何かに期待するのではなく、自分に期待をして生きていく。
そうすることで満足感の高い人生になるんじゃないかと、隣の芝を見ながら思わせる本でした。