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大人が時代を変えるのではない、世代交代が時代を変える。

瀧本 哲史 著『ミライの授業』

本書は14歳の中学生を対象に書かれた本です。
しかし高校生や大学生などはもちろん、大人が読んでも得られるものがあります。

若者には時間と未来と可能性があります。
一方、大人には知識と経験があります。
大人が優れていて、若者が劣っているというわけではないんです。
むしろ逆です。
大人は既存の常識に染まってしまっていて、未来を変えられません。

新しい未来をつくる力があるのは、常識にとらわれず、
時間がある若者の方です。
大人の言うことや考えが、常に正しいわけではありません。

時代を変えるのは大人ではありません。
世代交代が時代を変えるのです。

本書は歴史上の「偉人」と呼ばれる人々を紹介しています。
タイトルが「ミライの授業」なのに、なぜ歴史上の偉人を
紹介するのだろうと思われるかもしれません。

偉人とは「当時の常識を覆し、世界を変えてきた人」のことです。
かつて「世界を変えてきた偉人たち」を知ることで、
「未来をつくる法則」を学んでいこうというのが本書のねらいです。

本書で紹介されている「未来をつくる5つの法則」は以下の通りです。



法則1:世界を変える旅は「違和感」からはじまる

まだ大人の常識に染まりきっていない若者は、小さな違和感に敏感です。
大人たちが信じて疑わなかった常識を、疑うことができます。

ひとつ重要な点として、友達や先生、家族など、
まわりの「人」を疑うのではなく、
「権威による思い込み」や「常識」を疑いましょう。

かつて森鴎外は最先端の西洋医学を学んでおり、
「原因の分からない病気は何らかの細菌によるものだ」
という当時の西洋医学の常識と権威を疑うことができませんでした。
そのため、栄養失調が原因である脚気を伝染病だと思い込み、たくさんの人々を無駄な死に追いやりました。


法則2:冒険には「地図」が必要だ

ここでいう地図とは「仮説」のことです。

例えば「まったく新しいダイエット法」について仮説を立てるとします。
しかしこれはうまくいかないでしょう。
なぜなら、あなたが考えたそのアイデアは、おそらく他の誰かが既に考えているからです。

仮説は空白地帯を狙って立てた方がうまくいく可能性が高いです。
そして、時代や状況の変化に応じて柔軟に修正していくことが必要です。

実業家ビル・ゲイツは「これからは一家に一台のパソコンの時代だ」
という仮説を立て、パソコン業界を制した人物です。


法則3:一行の「ルール」が世界を変える

世の中を変えるには、ルールを変える必要があります。
そうなると、政治家や役人、学者のような職業に就かないと
ルールを変えられないのでは、と思われるかもしれません。

しかしそういう職業でなくても、あたらしいルールをつくり上げることは可能です。
ココ・シャネルは、言葉によってではなくファッションを通じて
「あたらしい女性像」のルールをつくったデザイナーです。


法則4:すべての冒険には「影の主役」がいる

どんなに立派な人物でも「影の主役」すなわち仲間がいなければうまくいきません。
ここでいう「仲間」とは、一緒にいて楽しい友達のことではなく、
あなたの考えや仮説を応援してくれる支持者のことです。

伊能忠敬は天才だったわけではありませんが、とにかくまじめで、謙虚で、自分に厳しい、努力の人でした。
忠敬は「大日本沿海輿地全図だいにほんえんかいよちぜんず」の作成途中で亡くなりますが、忠敬を尊敬していた弟子たちによって完成されました。

また、周囲の協力を得られなかった例としてメンデルが紹介されています。
メンデルは優秀でしたが、人に分かりやすく説明する配慮が足りていませんでした。
メンデルの発表は誰にも認められず、生前は全く評価されませんでした。
仲間を得ることができなかった彼の研究結果が再評価されたのは、死後16年が経ってからのことでした。


法則5:ミライは「逆風」の向こうにある

古い世代の人たちは新しい考えを受け入れられず、世界を変える力を持っていません。
アメリカの科学史家トーマス・クーン
「古い世代の人たちが自分たちの考えを変えることはなく、
世の中の常識が変わるのは『世代交代が起こった時』だけだ」
と言いました。

変革者はいつも「シロウト」「新人」です。

常識にとらわれない「シロウト」や「新人」の考えや行動は、
古い世代の人たちから反対されます。
応援なんてされません。
時には妨害すらされます。
そういう時、どうしたらいいのでしょうか?
迷った時は「基本原則プリンシブル」に立ち返ることです。

難民条約における難民の定義は「他国に逃れた人々」です。
他国には逃れず、国境付近などに逃れた人々は難民と定義されません
(国内避難民と呼びます)。
難民と呼べない彼らを救うべきかという問題に対し、
緒方貞子さんは『大切なのは命を救うことである』という
基本原則に則って行動した偉人です。


さいごに

14歳を過ぎてしまった大人たちにはもう、世界を変える力はないのでしょうか?
そうではありません。
50歳を過ぎてから日本地図作成を始めた伊能忠敬や、60歳を過ぎて国際問題の最前線に身を置いた緒方貞子さんを忘れてはいけません。

繰り返しになりますが、変革者はいつも「シロウト」「新人」です。
「権威による思い込み」や「常識」を疑い、時代や状況の変化に応じて未来を予想し、仲間に支持される人物が世界を変えていくのです。

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