『傲慢と善良』感想:精神年齢が大学生のまま中年になってしまった男女の物語
本屋に行くと、必ず見かける大ヒット小説。
辻村 深月 著「傲慢と善良」
を読みました。
何の予備知識もないまま読みました。
もっとどす黒くて重いストーリーを想像していましたが
思ったよりもサクっと読めました。
面白くないとか、作品が悪いとか
決してそういうことではなく、
主人公とヒロインの幼稚さ、未熟さに全く共感できず、
怒りすら覚えました。
なぜ怒りを覚えたか?
単に主人公やヒロインのキャラクターが嫌い、
というわけではありません。
それは同族嫌悪というか、自分自身に跳ね返ってくる怒りです。
直視したくない本当の自分を見せつけられたような気がしたのです。
主人公とヒロインは、
精神年齢が大学生のまま中年になってしまった大人です。
特にヒロイン。
このヒロインを好きという人はほとんどいないでしょう。
悪い意味で純朴です。
今までの人生で壁にぶつかることもなく、
自分の人生をどう生きるか真剣に考えたこともなく、
全力で何かに取り組んだこともない。
そんな受け身の姿勢のヒロインを、
内心では軽蔑している周囲の人間の描写が生々しいです。
主人公は自身のことを
「傲慢だった」と反省する描写が何度かありますが、
威張り散らすような分かりやすい傲慢さではありません。
どちらかというと「未熟」とか「油断」に近いです。
年齢を考えれば
「もう少し早く気づけなかったの?」
という部分も多いですが、感覚としては普通の人です。
少なくともヒロインよりは誠実です。
本作品は良作か駄作かで言ったら間違いなく良作です。
決して物語がつまらないということはありません。
でもちょっと中だるみするというか、
途中で飽きる人もいるでしょう。
ミステリー小説としても恋愛小説としても、
やや冗長で中途半端だったなというのが正直な感想です。
かといって「つまらない」「読む価値なし」
とバッサリ切り捨てるのもちょっともったいないです。
最後まで読んだ後の読了感は良いです。
人を選ばない小説なので、万人にオススメできます。