図解 渋沢栄一と「論語と算盤」
齋藤 孝 著『図解 渋沢栄一と「論語と算盤」』を読みました。
本書は、
渋沢栄一の人生について
『論語と算盤』について
という2つの内容を1冊の本にまとめてしまおうという趣旨の本です。
イラストが豊富に掲載されており、中学生くらいでも楽しく読むことができます。
この一冊で渋沢栄一がどんな人物だったのか、『論語と算盤』がどんな内容だったのか、どんな人物と関わりがあったのかということがざっくりと分かります。
入門的な本になりますので、本書を読んで興味を持った部分についてはさらに他の本も読んで深掘りしていくのが良いでしょう。
渋沢栄一の人生
渋沢家は学問に熱心で、栄一が5歳の時から四書五経の『大学』や『中庸』を使って勉強していたというのは驚きです。
栄一は若い頃、バリバリの攘夷派でした。
高崎城の乗っ取り、横浜の焼き討ちを計画します。
外国人を見かけ次第、片っ端から切り殺すつもりでした。
想像より100倍くらいヤベーやつだった。
結局、計画は失敗に終わりました。
その後、栄一は考えを改め、平岡円四郎の推挙によって武士になりました。
武士として出世した栄一は、慶喜が15代将軍になった年(1867年)、パリ万博に参加することになりました。
この頃には栄一の考えも「欧米を排斥する時代ではない」と変わりました。
パリを視察中に大政奉還が起こり、日本は開国しました。
帰国した栄一は、ヨーロッパで得た知識と経験を活かし、1869年に日本発の株式会社である「商法会所」を設立。
1873年に大蔵省を辞め、民間人となった栄一は500に近い企業を興し、日本の経済発展に尽力しました。
『論語と算盤』の教え
「生きるうえで、道を踏み外さないためには『論語』を熟読しなさい」と渋沢栄一は言います。
論語をただ読むだけではなく熟読し、その内容を日々実践していくことが大事というわけです。
そして大きな成功よりも、道を踏み外さないことのほうが大切だと説きます。
「争い」とは競争のことです。
みだりに争うべきではないが、競争そのものは否定しない。
競争があるほうが健全だというのが渋沢栄一の考えです。
こうした考えは江戸時代はありませんでした。
しかし維新後の新しい経済社会では、よりよいものを生み出していくため、ある程度の競争が必要でした。
競争には善意のものと悪意のものがあります。
他者の活動を妨害して利益を奪おうとする競争は悪意の競争。
そうではなく、工夫によってよりよい商品を生み、他者の利益をじゃませず堂々と競うのが善意の競争です。
良心に照らして考えれば、善意か悪意かは分かるはずだと渋沢栄一は言います。
福沢諭吉は「本を書いても、ただ印税が入って儲かれば良いという考えではダメだ。たくさんの人に読まれ、社会に役立つ本でなければいけない」ということを言っていたようです。
実業界でも同様で、自分一人が儲かればいいという考えではダメ。
事業は国家多数の富や幸福を生み出すものでなければいけないと言います。