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読書感想文・書評

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読書感想文や書評を綴ります。
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記事一覧

『GIVE & TAKE』情けは人のためならず

アダム グラント 著『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』を読みました。 この本の言いたいことは「情けは人のためならず」です。 見返りを求めずに他者に与えられる人。 人に与えることに対して「取引」を持ち込まず、返ってこなくてもいいですよという気持で与えられる人。 長期的に見ればそういう人が後々になって成功するということです。 まずは人に与えることを最優先に考え、ギブしましょうというのが著者の主張です。 本書では人間を3種類に分類しています。 ギバー(与

漫画で理解する「うつ」

田中 圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』という漫画を読みました。 過去に「うつ」を経験した人の話が紹介されており、作者自身もうつ病経験者です。 『うつヌケ』というタイトルの通り、現在進行形でうつ病と戦っている人というよりは、うつの症状が軽減したり寛解した人に焦点を当てています。 現在、うつの症状を抱えている人はもちろん、うつ病を経験したことがない人が読んでも理解が深まる本です。 noteで何話か無料で読めるので気になる方はご覧になってみてください。 うつを、

ヒオカ『死にそうだけど生きてます』

ヒオカさんがnoteに投稿した『私が"普通"と違った50のこと』という記事が大反響を呼び、書籍化したのが本書です。 (現在はその記事は閲覧できません) ヒオカさんはかなりの貧困家庭出身で、 世帯年収は100万以下だったそうです。 幼少期から様々なことを諦めなければならず、特につらかったのは 習いごとをさせてもらえなかったことだと言います。 本書は 「そんな辛い過去があったからこそ今の私がいる」 「幼少期の苦労があったから、成長することができた」 という美談を語った本ではあ

「非正規雇用者」は個人でも労働者でもなく、商品として扱われる。

雨宮処凛 著『非正規・単身・アラフォー女性「失われた世代」の絶望と希望』を読みました。 アラフォー(就職氷河期世代) 非正規雇用 独身 の女性にインタビューをした本です。 読んでいて憂鬱になるので観覧注意。 特に鬱病の人は要注意。 悪書ではないです。 むしろ同じ境遇の人にとっては救いになるかもしれないし、 そうでない人にとっても他人事ではありません。 就職氷河期世代について本書が出版されたのは2018年5月で、 当時のアラフォー女性は就職氷河期世代です。 (現在

『「承認欲求」の呪縛』承認欲求を無くすことは不可能だが、軽減は可能

著者が言いたいことは大体こんな感じです。 承認欲求は他人に依存する欲求だよ 承認欲求は極めて強力な欲求だよ イジメ、パワハラ、うつ病などの問題も承認欲求が関わっているよ noteの記事にスキが欲しい、フォロワーが増えほしい、コメントが欲しいと思うのは、典型的な承認欲求です。 どうやったらスキやフォロワーに囚われずnoteを楽しむことができるでしょうか? 著者の以下のように回答します。 リアルを充実させる 複数のSNSを使い分ける 以上です。 残念ながら拍子抜けと

『あっという間に人は死ぬから』感想:人生の目標や、やりたいことが分からない人向けの本

佐藤 舞(サトマイ) 著『あっという間に人は死ぬから 「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方』を読みました。 タイトルがキャッチーです。 売れてるみたいなのでAmazonでポチってみましたが、全体の感想としては分かったような、よく分からないような、何とも言えない感じでした。 死、孤独、責任という3つの不安からは逃れられない 人生には3つの理があり、それは「死」「孤独」「責任」である。 そしてこの3つの不安からはどうしたって逃げられないよ、というのが著者の主張です。

『民主主義とは何か』歴史的な視点から民主主義を考え直す

民主主義とは?一言で言うと○○○です「その答えは一言で言うと、ズバリ○○○です。」 そうやって「これが唯一の民主主義の理解だ」という簡単で分かりやすい答えにすぐ飛びつくんじゃなくて、民主主義について色んな角度から考え直し、分析していこうというのが本書のねらいです。 民主主義の定義は小学校で習うにも関わらず、改めて考えてみると何を意味するのかよく分からない言葉です。 民主主義って多数決なの?少数派の意見は尊重しなくていいの? 選挙で代表者を選ぶのが民主主義なの? 民主

冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』

タイトルと表紙、そして作者名を見た瞬間に「これは読まなければ」と思った本です。 本作品は12人の少年少女が登場する群像劇です。 登場人物が多いので 「これはキャラクターを覚えるのが大変そうだ」と思いましたが、 一人ひとりが分かりやすい性格、口調、容姿をしているため、 小説を読み進めていれば自然と12人全員を覚えることができました。 推理小説として読むとかなり複雑です。 しっかり推理したいのであればメモを用意して、 登場人物全員の行動を把握する必要がありますが、 そこまで気

大人が時代を変えるのではない、世代交代が時代を変える。

瀧本 哲史 著『ミライの授業』本書は14歳の中学生を対象に書かれた本です。 しかし高校生や大学生などはもちろん、大人が読んでも得られるものがあります。 若者には時間と未来と可能性があります。 一方、大人には知識と経験があります。 大人が優れていて、若者が劣っているというわけではないんです。 むしろ逆です。 大人は既存の常識に染まってしまっていて、未来を変えられません。 新しい未来をつくる力があるのは、常識にとらわれず、 時間がある若者の方です。 大人の言うことや考えが、常

小説を書くのって簡単?そんなわけありません!

中村 航 著「これさえ知っておけば、小説は簡単に書けます。」 を読みました。 当たり前ですが、本書を読むだけでは小説を書けるようになりません。 本書に書かれていることを実践する必要があります。 実践してみた私は小説を書いたことがありません。 そんな私でも小説が書けるようになるのでしょうか? 本書に書かれていることを実践してみました。 まずはペルソナ(読者層)の設定。 次に三分間のブレインストーミングを、数日ですが毎日行いました。 (この辺の詳しいことを知りたい方は是非、

『傲慢と善良』感想:精神年齢が大学生のまま中年になってしまった男女の物語

本屋に行くと、必ず見かける大ヒット小説。 辻村 深月 著「傲慢と善良」 を読みました。 何の予備知識もないまま読みました。 もっとどす黒くて重いストーリーを想像していましたが 思ったよりもサクっと読めました。 面白くないとか、作品が悪いとか 決してそういうことではなく、 主人公とヒロインの幼稚さ、未熟さに全く共感できず、 怒りすら覚えました。 なぜ怒りを覚えたか? 単に主人公やヒロインのキャラクターが嫌い、 というわけではありません。 それは同族嫌悪というか、自分自身

我々が見ている世界は虚構?イデア論と心理学について

心理学を実践的に使いこなす毒舌クリエイターである かぜさんの記事を引用します。 (引用箇所は無料で読める範囲です) 不覚にも、この「お願い」という言葉に ドキッとしてしまいました。 このように、頼み事をされた側が 「ドキッ」としてしまう心理を 「フランクリン効果」と言います。 今回は、哲学について書かれた分かりやすい本を 紹介したいと思います。 齋藤 孝 著「世界の見方が変わる50の概念」 50個の専門用語、哲学用語などについて 分かりやすく説明されています。 今

女の友情って何だろう?虚構の関係、異常な執着、他人との距離感。

柚木 麻子 著「ナイルパーチの女子会」を読みました。 「女の友情」 「アラサー」 「ブログ」 「仕事」 「他人との距離感」 「親子関係」 以上のキーワードに一つでもピンときたら読む価値ありです。 以下、ネタバレを含む感想なので、未読の方は注意です。 * * * 大手商社に勤める栄利子は、ザ・優等生。 人気ブロガーで専業主婦の翔子は、怠惰でズボラ。家事は手抜き。 性格もキャリアも正反対の2人が中心となるストーリーです。 開幕はアラサー女子の友情を書いた爽やか

生成AIの革命はまだ始まったばかりだ

今井 翔太 著「生成AIで世界はこう変わる」を読みました。 生成AIがこれからの未来をどう変えていくのかというのは、 多くの人が注目するところです。 人類は加速度的に進化した 地球が誕生したのは46憶年前です。 約20万年前にはホモ・サピエンスが出現しました。 約5万年まえになると、人類や地球の様子が加速度的に変化していきます。 この急激な大変化の要因として挙げられるのは「言語の獲得」です。 現在の生成AIは「言語の獲得」が起こった段階である可能性があります。 そうだ