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営業マインド&スキルエンパワーメントストラテジー#05 プレゼンテーションで何をプレゼンしている?
「プレゼンのウマい人」というのはどんな人物だろう。
そもそも、プレゼンにウマいもヘタも無い、と考えてもらいたい。
よくドラマなんかで、
普段は冴えないが実はかわいい主人公が、「明日プレゼン、頑張れよ」と憧れのイケメン上司から笑顔でエールを送られる、なんてシーンをみることもあるが、
プレゼンは頑張ったとて、採用・受注にいたるかはその中身なので、あんまり意味は、無い。
まずはプレゼンの本質が何か、を解き明かさないといけない。
といっても勘のスルドイ読者諸君はピンと来ているかもしれないが。
プレゼンの本質、それは「お題に応える」ことである。
プレゼンにもいろいろな種類があるだろうが、どんなプレゼンも本質を見失ったプレゼンになってしまうことが往々にしてある。
クライアントが伝えるお題に対して「きっとこうするといいと思うんですよ!」なプレゼンになってしまうのだ。
プレゼンをする側はお題を解決するために何をすべきか、というアイデアが非常に重要になる、と考えてしまう。
自社が持つ商材(モノ・サービス)=ソリューションがどんなものかある程度わかっているので、プレゼンに呼んでもらえるわけだが、
そのおかげで、「商材はある」、「アイデアがない」という認識になってアイデアに走るのだ。
そして結局、そのアイデアも、商材が主語となり、
「わが社のソリューションにこのアイデアをトッピングすることで、素晴らしいサービスを提供します!」
となってしまう。
アイデアと商材からスタートすると、お題をきっちりカバーしたプレゼンになりにくい。
結局、商材=ソリューションの押し売りになってしまうのは容易に想像できる。
なので、プレゼンのお題を頂いたら、
きちんと「お題」は何か、をチーム・スタッフで共有しないといけない。
アイデアではなく、「お題」、つまり「クライアントが導き出したい解」は何か、を考えるのである。
前節、ソリューション(#04)でも論じたが、まず主語は「クライアント」に設定することから始める。
クライアントがなぜそのお題の解が欲しい、という結論に至ったのかを認識しないといけないのだ。
クライアントにとって、「お題」を出すに至ったのは、なぜなのか。
基本的には「何かが足りない」からである。
そして、プレゼン自体も主語をプレゼンする側=わが社にしてしまいがちである。
わが社を主語にしてしまうと、発表会になってしまう。ビジネスにおけるプレゼンは発表会ではない。クライアントのお題に応える論文&口述試験だ、くらいに思ったほうがいいかもしれない。
クライアントを主語にすれば、プレゼンとは、クライアントが自社のリソース(経営資源)ではカバーできないことがあるから、外注したい、と考え、1社にお任せ、ではなく「何をもって不足しているリソースを補ってくれるのか」を複数社に打診して検討する材料を得るためのイベント、ということである。
そのクライアント主語から導き出せるプレゼンの第1ステップは、「クライアントの決定的に足りていないリソースは何か」から考えることである。
その「決定的に足りていないリソース」を補えれば、プレゼンは勝つのである。
リソース=経営資源の4大要素は「ヒト・モノ・カネ・情報」であるのは営業人なら基本的に知っているだろう。
まずは、この4大要素のうち、何が決定的にたりていないか、を導き出す。
そして例えば「ヒト」だとすれば「どういうヒト」が足りないのか、ということになる。
ヒトは「手数」「頭脳」「スキル」「チームワーク」などなど、ヒトに関わる課題が因数分解できる。
こうしてリソースの因数分解を連続させて、決定的に足りないものの解像度を上げていくのだ。
結果、「スタッフのスキル」が足りないからだ、となったとしよう。
すると初めて自社の商材がスタッフのスキル不足を補うソリューションを提供する、という答えにたどり着くのだ。
もちろん、そのサービスの対価は「ベストプライス」である必要はあるのだが。
こうなると、プレゼン当日のプレゼンテーションのウマいヘタ、はそれほど関係ない。
「決定的に足りないリソース」を読み違えてなければ、勝つのである。
プレゼンの多くは、自社商材の長所を並べ立て、「このソリューションなら」という言葉が続くことになる。
そうではなく、「この問題を解くなら」、から始めるようにしないといけないのだ。
ここでの営業マインドは「アイデアに逃げるな、クライアントの課題の因数分解から始めよ」と常に頭にいれておくことである。
とはいえ、どんな「芯を食った」プレゼンでも、プレゼンターがマズければ、それはそれで減点対象になる。
そこで、前述のマインドを持ってプレゼンを作り上げたとして、プレゼンをどう演じるか、である。
そう、答えは簡単。
「決定的に足りないリソースをこの商材(モノ・サービス)で補います」と言い続けるだけで良い。
あるプレゼンで若手の企画マンがプレゼンシートを一言一句漏らさず、朗読のようにずっとプレゼンし続けたことがある。
プレゼンシートの最初の与件整理から、書いてあることをすべて、である。
こんなプレゼンは時間の無駄である。
そんプレゼンなら、プレゼンしなくていい。読めばいいのだから。
正直、クライアントからすると、プレゼンする企業が「お題に応える策を編み出すまでのプロセス」なんてものは聞かなくてもいいのだ。
要は「お題にどうこたえてくれるか」なのだから。
私の経験上で、プレゼンのウマい人、はすでに企画書がウマい。
伝えるべきことが書いてあるシートはシンプルかつ力強く表現してあり、当然そのページでは語気が強くなり、そこに至るプロセスは要点だけをサラリと話して進めていく。
いっそのこと、結論を1ページ目にドカンと書いて、あとはなぜそこに至ったか、と面白おかしくスタンドアップショーのようにこぼれ話(秘話)をちりばめたってよいのだ。
ある優秀な企画マンが言っていた。
「正直、プレゼンは、クライアントのプレゼンを聞いた担当者が、裁量あるエライサンにプレゼンするときのお手本みたいなもんですからね」
そして付け加えるには、
「ポンコツな担当者だったら、こっちのもんですよ。答一つを刷り込めばいい。あんまり情報入れすぎるとパンクするでしょ。だからその担当者が上司に『それぞれ説明しろ』ってなったらウチのはシンプルに答えるだけです。ほら、もうウチの勝ちですよ。あ、優秀な担当者なら、説明がすっきり終わるウチの提案を推すでしょうから、やっぱり勝ちっスね」
と。
クライアントにしっかり焦点をあて、課題だけでなく、担当者や上司など、とりまく環境まで目を光らせるこの男には舌を巻いたものである。
彼はプレゼンの時、企画書に目を落とすことなく、「このポイントが重要なんですよ(笑)」と、まるで有名予備校教師のようにクライアントの担当者たちを引き込んでいた。
ここまでウマくなくとも良いが、核心を突くことに注力し、その核心を我々が知っている、と伝えることが重要なのである。
プレゼンのスキルとは、どうやったらうまくしゃべれるか、ではない。核心を突いたことを伝えることに注力する、これがまず第一である。
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ある居酒屋で45歳くらいの課長と、20代の若手が飲んでいる。
「課長って、プロポーズの言葉ってどういうセリフだったんですか?」
「いや、単純だよ、『結婚してください』だよ」
「なーんだ、なんか『君の味噌汁が毎朝飲みたい』とか『君とずっと同じ方向を向いて歩いていきたい』とかじゃないんスね」
「あのなぁ、プロポーズってのは、結果が決まってるのよ。付き合っている間の『行い』、それがすべてさ」
「プレゼンも一緒っスね。課長がいつも言う『何事も準備』ってやつですか。」
「でもプロポーズ以降もその準備と同じことをし続けないと、愛想つかされるんだけけどねー」
「なるほど、新規得意先を継続優良得意先に育てるには、プレゼンで終わりではなく、常に提案、フォローでしたね!」
「ウマいこというね。ただし、結婚はそう簡単に担当替えがないんだから、忍耐、忍耐・・・」
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何事も準備。そして継続、である。
今回はプレゼン、だったが、「企画」に触れたので、「企画」を考えてみよう。クリエイターとして、ではなく、もちろん営業人として、である。