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夜にしがみついて朝で溶かして

「ちょっと思い出しただけ」を観た。
「このまま時間が止まればいいのにな」って思う瞬間が誰にでもあるのだなと
感じた映画だった。

松居監督が「きっと花束みたいとかいろいろ言われるんだろうな」と言っていたけれど、確かに観た後は「花束みたいな恋をした」を思い出した。

映画の始まりがコロナ禍(現在)のシーンであったことをはじめとして、
「ちょっと思い出しただけ」の方がよりリアルに感じる部分が多かったかなあと思う。

伊藤沙莉さん演じる葉と池松壮亮さん演じる照生が、すごくすごくリアルで、
友達カップルを見ているような、自分と恋人を見ているようなそんな距離感で映画を観てた。
思い出に残ったシーンとその時感じたことを書き残しておきたいと思います。
(ネタバレ含むので、まだ観ていないという方はご注意ください)

映画のスタートは現在。
そこから葉と照生が付き合っていた頃、恋が始まった頃、出会った頃を、
照生の誕生日を軸に1年1年遡っていく。
2人が過ごした何気ない毎日、何気ないけど眩しくて暖かい毎日が、
本当に眩しくて微笑ましくて可愛くて、尊いってこんな感じ?と思ったりした。

別れ話(?)になるタクシーの車内。
怪我をした照生をダンススタジオまで迎えに行った葉。
自分の気持ちに整理がつかず、2週間葉に連絡しなかった(できなかった)照生。

好きなことを諦めざるを得ない状況に置かれている照生。
支えるつもりでずっと待っていた葉。

2人が喧嘩になるシーンは、どちらの気持ちもわかってしまってとても苦しい。
その反面、別れるほどのことかな?2人ともうまくやればいいのにと思ったり。
不器用な2人にはそれが1番難しかったのだろうけど。
お互いがお互いのことを思ってした行動が、そんな結果を呼ぶなんてと切なくなった。

スタジオでリハーサルをする、クリープじゃないクリープが出て来たシーンでは、
私の1番好きな「さっきの話」が聞けたことが嬉しくて嬉しくて、
胸がいっぱいになってしまった。
「さっきの話」と同じくらい「exダーリン」も好きなので、より心に残っている。
「君の部屋」も大学生の時よく聞いていたなと思って懐かしい気持ちになる。
歌詞が微妙に変わっていたのも、クリープのファンにしか気付けないかなと思って
なんだか嬉しくなった。

水族館に忍び込むシーンから無断でタクシー乗り回しちゃうシーンは、
シンプルに羨ましいっていう気持ちが強かった。
大人になると(照生と葉も大人だけど)
いろんなことにがんじがらめにされてしまうのに、
「怒られたら、謝ろう」と言って怒られちゃうようなことをしちゃうところに
「2人でいる無敵さ」みたいなものを感じて羨ましいって思った。

それから「なんかさ、この星に人間は私たちふたりだけって気がしない?」
というセリフ。
「わかる〜!!!!!!!!!」って思った。
私も思ったことある。あんな風に言えないけど。

差し出された手に人差し指だけ置くのとか、
「寝た?」と聞いたら「うん」って返ってくるのとか、
一つのケーキを2人で食べるのとか、
自分と恋人を見ているのかと思ったほど。
もしも、恋人と別れることになったらこんな日々を思い出すんだろうな。
周りから見ると、そんなにドラマチックなことではないんだけど。
だけど2人にしか分からないこと、ノリとか言葉とかそういうのも含めて、
映画の中にいるようにドラマチックに感じる時がある。

私が好きだと感じたシーンは、
もし私が照生か葉だったら、自分の人生の一部が映画になるなら、
ここは忘れずに入れてほしいなと思うだろうなというシーンたちだった。

最後のシーンは朝焼けと、照生の影と、「ちょっと思い出しただけ」のタイトルと、
「ナイトオンザプラネット」のイントロ。
あのシーンで一気に好きが溢れた感じがした。
なんというか、あまりうまく言えないけど、よかった。
忘れたくない日々があるし、
それをそのまま大事にすることを許してもらえた気がして嬉しかった。


それから「ナイトオンザプラネット」も観た。
すごく面白くて、なんで今まで知らなかったのだろうと少し悔やんだ。
「ちょっと思い出しただけ」でオマージュされているシーンもあって、
「ここ!同じじゃん!」となってちょっと嬉しかった。

まとめるとすごく良い映画で、すごく好きな映画だった。
観てよかったな。何度も観たい。

そういえば池松さんの声はこの映画を観て初めてちゃんと聞いたのだけど、
良すぎる。なんて素敵な声なんだ。
「どうしたの?」ってあの声で聞かれたい。
帰り道、『「どうしたの?」ってあの声で聞かれたーい!!!』と言っていたら、
一緒に見にいった恋人に変な顔をされた。
こんなことも、いつかちょっと思い出すのかもと書きながら思っちゃったりしました。知らんけど。

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