はてしない物語(ナムジュン編)
“今、あなたは何回目を生きてますか?”
いつか、「100万回生きたねこ」という絵本の帯に森山未來が寄せた言葉だ。
キムナムジュン、Rap MonsterからRMへ…
2つの名前を生きる彼の今生は何回目だろうか?
人の魂は4回生まれ変わることが出来るのだと某ドラマで云われていたけれど、もし本当に、たった4回しか生まれ変われないならどうしよう。
ナムくんの人生は、間違いなく4回目だ。
キムナムジュンのいない来世なんてつまらない。
彼の紡ぐ音楽がない人生なんて、考えただけでも気が遠くなる。胸に呪いの剣を刺されて永遠に生き続ける宿命だったらいいのに。(©︎トッケビ)
〈 目次 〉
1 運命の出会い
2 パーフェクトな男の子
3 かわいさという魅力
4 賢い戦略
5 気遣いすぎるやさしさ
6 この世界の中の役割
7 ヒーローのしあわせ
8 100万回目の人生でも…
1 運命の出会い
ナムくんがパン・シヒョクPDに出会わなければ、防弾少年団は生まれなかった。
UntouchableのSleepyさんがアンダーグラウンドクルーのオーディションに現れた彼のラップに感銘を受け、BighitのPDチームの柱でもあるPdoggさんへ紹介し、そこからパンPDへとつながったのが、BTSという壮大なプロジェクトのきっかけになった…というのは、ファンの間ではとても有名な話だ。
ナムくんはBTSという一つのチームについて「お互い違う姿で違う所を見ていても同じ方向に向かえる航海」だと例えていた。
ナムくんの好きな漫画の海賊団の船長の元には、ひとくせもふたくせもあるクルーが集まってくる。
ナムくんと同じくアンダーグラウンドで活躍し、大邱からその身一つで上京してきた野心あふれるPD志望の男の子、HIPHOPも歌もダンスも興味がなかったのに、その端正な顔立ちからか通学中にスカウトされ、俳優志望だったのに、音楽の世界に足を踏み入れることになった男の子、ダンスが大好きだという強い信念を持った少年に舞踏学校の首席だった優等生。何も取り柄がないからと受けてみたオーディションに合格し、だけどすぐにクビになると思っていた…というかわいい男の子に、人前で歌も歌えないほど人見知りだった“黄金マンネ”。
誰一人、かげが薄いメンバーがいない。みんなキャラ立ちしすぎているほど、キャラ立ちしている。そんな中でも、ひときわ個性的なのがキムナムジュンくんだ。
2 パーフェクトな男の子
どこから出た話か知らないけれど、〈防弾少年団・プロフィール〉と検索すると、だいたいナムくんの項目のところには、IQ148と書いてある。
修能試験(日本のセンター試験)では上位1%に入ったとかいう話もあった。(ちなみにSUGAひょんは白紙とにらめっこしてきたとツイッターで話していた。)
とにかく彼は頭がいい。英語も堪能だ。
LYSツアーでイギリスで公演した際、彼の英語がイギリス訛りだったというのにも驚いた。わざわざ、わずかな日数の公演に来てくれるイギリス圏のARMYのために勉強したのだろう。
とてもバカな例えをするけれど、もしも飲み会に現れたとして、女の子たちの多くは、初めは他のイケメンばかりに興味を持って接するけれど、その会がお開きになった後、帰り道で女の子たちが褒めるのは満場一致でナムくんだ。
顔がかっこいいとか話がおもしろいとか、そういうことも重要だけど、彼の優秀な遺伝子に、私たちは本能的に惹きつけられる。
まず、とても優しい。人に対して、気遣いすぎるほどの気遣いができる。
会話をしていてもその優秀な頭脳をフル回転させて、まるで3手先まで見通しがついているようだ。
日本人の多くの感覚からしたら、グクやテテのような華のあるイケメンではないかもしれないし、笑いのセンスもそんなにないと思う。個人的には。
なぜかというと、ゆんぎやグクがおもしろいことをポロッと口にしたとき、ナムくんは、自分が気に入ったら割と何度も、とても楽しそうにマネしてくり返しているけど、おもしろいのは初めだけだ。くり返すと寒くなる。その辺のセンスがない。
そして、あまり自分の発言でみんなが笑うことがないのか、何かの拍子にうまい言葉がジミンくんたちにバカうけすると、それはそれは嬉しそうにニコニコしている。(かわいい。)
でも、おもしろセンスがなくってもいいのだ。むしろないからこそ、その心根の美しさや、人を思いやれる優しさがよく分かる。
その不器用さが、彼への信頼感になる。信頼できるというのは最強のモテ要素だ。
華やかなイケメンではないと書いたけれど、実際にはそれはまったく見当違いだということも忘れてはいけない。
ナムくんのかっこいいところというと、ファッションセンスやスタイルの良さをあげる人がたくさんいるだろうけど、実際に近距離で目の当たりにする彼は、とてつもなくイケメンだ。
まず何か分からないオーラがすごいし、身体の内側から光を放っている。
めちゃくちゃアイドルだ。
それから、気遣いすぎるほど気遣いのできる思いやりにあふれた彼の瞳は本当に本当に透き通っていて、きれいで、気をしっかりもっていないと吸い込まれてしまいそうだ。
もしもリリイベの当選メールに握手できるメンバー“RM”と書いてあったら、違うメンバーがよかったと落ち込んではいけない。それはとんでもない当たりクジだから。
3 かわいさという魅力
実際に目の当たりにするナムくんは、本当にキラキラしていてカッコいいアイドルなのだけど、彼のほんとうの魅力は、頭脳明晰でスタイルも抜群でカッコいいことじゃないのではないだろうか。
国内外で飛び交う、どんな難しい質問にも細心の注意を払い、巧みな言葉でするりと交わし、それでいてきちんと心のこもった想いを返す、誰がどうみても最高のBTSのリーダーRMは、普段……びっくりするくらい何もできない。
まずパスポートをとにかく失くす。
買ったばかりのサングラスも壊すし、Vliveのカメラもまっすぐにセットしてくれない。
“ちょうどいい塩梅”という言葉が日本にはあるけれど、一瞬“ちょうどいい塩梅”だったカメラの角度をことごとく通りすぎてしまう。
そして何度もなんか斜めだな…とか言いながら直しては、しょうがないと開き直っている。こういう神経が細かそうに見えてざっくりしているところもかわいい。
それからここ最近は、いつでも意図せずして突然バグって終わるのもポイントだ。あんなに賢いのに、どうしてだろう?停止ボタンの位置が、いつまでも分からないらしい。
こんな風に、Vliveでしてくれるアルバムレビューをひとつでも観れば、その忙しなさや普段の彼の魅力を把握できるだろう。
とにかくじっとしていないし、ちょうどいい塩梅を通りすぎてしまうから、どうやらエアコンの温度設定も苦手らしい。
そしてバーーーッとたくさんしゃべってあっという間にビハインドが終わるのだけど、だいたい時間を見ると意外と長い。休む間もほとんどなく、一人でしゃべり続けているその時間は、説明が上手だからか体感時間は短いけど、情報量がすごい。
そして、自分の仕事のことを語る彼はとってもとっても楽しそうでかわいいのだ。
一生懸命話してくれる裏話は、もちろんだけどとても楽しい。でも、本人にとっては残念なことかもしれないから、これは内緒なのだけど………正直言って、アルバムの裏話よりもかわいい彼の忙しない一生懸命さを見る方が私にとっては楽しみだ。
4 賢い戦略
基本マイペースなナムくんは、一人でやっているVlive中に、水を取りにどこかへ消えてしまったりする…。
あーみーたちには、誰もいない彼の作業室を無言で眺めることになるという最高にシュールな時間が訪れる。
Vappにはliveが始まると通知が届くという機能があるのだけど、スタートしてから通知が届くまでに時差があるらしく、「mono.」のレビュー時には、その時間を使って用事を済ませてくると言い放ち、つけて早々に部屋を出て行ってしまった(笑)(そして出て行って早々に外で何かが倒れる大きな物音がして、「問題ありません。」とドアから顔をのぞかせた彼は、とてもとてもキムナムジュンそのものだった。)
時間の使い方の効率がとてもいい。他のメンバーは本題に入る前にコメントを読みながら挨拶をしたり談笑していることが多いけれど、そのほんの数分はたしかに、お水を取りに行くにはちょうどいい時間だ。分かる。
メンバーとの焼肉モッパンVliveの時もすごかった。
まだ焼けないのかと何度も尋ねたり、箸を落として怒られたり、新しいお肉を取りに行って、ジョングクにどうしてこんなに落ち着きがないのか…とすごい顔で呆れられたりしていた。
実際には、率先して火力を見ていたはずのゆんぎを筆頭に、みんな目の前のスイッチが入っていないことに気づいておらず、普通なら焼けないことにイライラしてもしょうがないくらいの時間が経っていたように思う。他のメンバーたちの穏やかさよりも次の食材を取りに行ったナムくんの判断は、その時は正解だっただろうに、めちゃくちゃみんなに小言を言われていた(笑)
それはたぶん。普段のおこないのせいだろう。
みんなで料理をするような場面でも、だいたい手伝っていない。何かを壊したりして危険だからじっとしていろ。ということになっているのだろうか…?????
ボンボヤS1で、少ない予算の中で、みんなでサンドイッチを分けて食べようという話になった時も、姿が見えず、船のデッキでひとり、楽しそうに音楽を聴いていた。
みんな待ってるよ!と呼びに来たホソクくんに(もれなくイラついている時の、目が笑っていないホソクくんだ。)「なんでおれを待つの?」みたいなことを苦笑いしながら言った時にはすごくびびった。ある意味、どこまでも自分の時間を生きていてとてもすてきだと思う。
5 気遣いすぎるやさしさ
そんなマイペースなナムくんだけど、一方で、気遣いすぎるほどの気遣いができる。
2018年4月15日、ペンカフェにゆんぎがとある書き込みをした。
私は3日後に差し迫ったファンミーティングを前に浮かれていたので、推しのエモーショナルな文面にとくに何も感じなかったし、ナムくんの書き込みも流し読みした程度だった。だけど少し後になって、とあることがきっかけでその日の書き込みを読み返したとき、何を話したのだろうと不安になった。
真夜中に感傷的になることは多くの人が経験しているだろうから、何か感慨深いことでもあったのだな…と受け取って終わりにできたのに、ナムくんがすぐに、みんなで色々な話をしたのだとわざわざ補足的に説明するような書き込みをしていたのがとても気になった。心配しないでと言われるとよけいに心配になるように、一つ目の何でもなかった書き込みが、まるでネガティブなものだったかのように勘ぐってしまう。
7人で話した内容がどんなものだったのかは知らないし、ゆんぎは以前からごくたまにだけど明け方に感傷的なことをつぶやきがちだから、本人は案外、みんなで話した話題に感動して、すがすがしい気持ちでその書き込みをしたのではないかと思っているけれど、ナムくんはきっと、それを読んで心配するARMYがいたら…と勘ぐったのではないかと思う。3手先の相手の気持ちを想像できる人だからだ。
リリイベやファンミーティングの期間に、ARMYたちが心置きなく、まっさらな気持ちで楽しめるように心配の種を除いてくれようとしたんじゃないだろうか。
そんな優しさのつまっていたかもしれない書き込みの最後には、ピンクのハートがふたつ並んだかわいらしい絵文字が添えられていた。
いつだってナムくんは、相手の気持ちを考えられる人だ。
BTSのリーダーとして、ひとりの人間として、誰かの不安を取り除いたり楽しませることにいつでも一生懸命だ。
WINGSツアーのチリ公演で、ジョングクが倒れた時もそうだった。
メンバーたちに無理をするなとカッコよく叫ぶ彼の姿は、とてもリーダーらしかったけど、その表情のうろたえかたったらない。
「Burn the stage」のインタビューでも実際に、その時とても動揺していたと話していた。人の気持ちを想像し、しっかりしなくてはと行動する裏で、わかりやすく心が揺れ動いてしまう彼は、人間らしくてとてもすてきな人だと思う。
6 この世界の中の役割
世界中を飛び回るスーパースターRMは、とても類稀なる才能を持っている。
その音楽的センスもさることながら、彼の紡ぎ出す、詩的で深いメッセージ性のある歌詞は、BTSの音楽の大きな魅力の一つだ。
“自分自身を愛する”というテーマは、「WINGS」の中のRMのソロ曲「Reflection」の詩の中にも出てきていた。そうしてはじまったLOVE YOURSELFシリーズの中の多くの楽曲の歌詞もRMが手がけている。
その音楽を通して、自分と向き合い、今日を生きる勇気をうけとったARMYは、この世界中にどれぐらいいるのだろう。
この広い世界の片隅にある一山(イルサン)という街で生まれた普通の男の子は、幼い頃、きれいな夜空を見上げながら夢を見ていたそうだ。(※国連でのスピーチより)
もしも自分が世界を救うスーパーヒーローだったら…と想像していた未来が、今、彼の目の前に広がっているのだろう。
いつの頃からか名前を失くした私たちは、その少年が紡ぐ言葉や音楽に救われている。
性別も肌の色も多種多様な文化も超えて、多くの人が彼らの音楽に共鳴する。
自分自身を愛することは世界を愛することらしい。
彼の紡ぐ言葉や音楽は、私たちに新しい愛を、そして一番身近な自分自身を愛することを教えてくれる。
そしてこの道の先に、私たちをどこへ連れて行ってくれるのだろう。
昨日ダメだった自分も今日の自分も明日なりたい自分も、すべて私たちの銀河になるのだと包み込んでくれるその想いは、彼自身に、どんな景色を見せてくれるのだろう。
7 ヒーローのしあわせ
時々思う。
今目の前に広がるであろうこの幸せは、彼にとって優しいものなのかどうか。
LYSシリーズを通して、BTSは世界に大きく羽ばたいていった。
国連でスピーチもした。NYの大きなスタジアムでのコンサートも大盛況のうちに幕を閉じた。
多くのARMYが彼らを必要とする。
あなたのおかげで人生が変わったのだと、スーパーヒーローたちに感謝する。
傷だらけの腕に“LOVE YOURSELF”のロゴが描かれた写真を見たことがある。
メンバーたちは、ナムくんは、その写真を見ただろうか。
そして何を感じただろう。
誰かに必要とされる喜びや、誰かの心を救った喜びで胸がいっぱいになっただろうか?あふれそうな喜びと同じくらい、ずっしりと大きな何かがぶら下がったような重たさを感じてはいないだろうか。
ただ音楽が好きで、音楽がしたくて走ってきた、星空を見上げて夢を見ていた少年は、今もまだ25歳の男の子だ。
公園を散歩したり川を眺めたり、雨の音を聴くのが好きな男の子。
永遠に雨が上がらなければいいのにと歌う。
僕が僕であることが嫌な日があると話す。
そんな悲しい日が、彼に二度とこなければいいのにと思うけれど、きっとそんな瞬間でも、葛藤のない幸せなだけの日々を、彼はきっと好まないだろう。
『面倒で怠惰で大変ですごく難しいけど、少しずつ自分を削っていって、かっこいい彫刻を作るのが人生であると思う』と語った彼は、たくさん削られて、美しい彫刻を作り上げていく。
その繊細な感受性で世界へ無数のアンテナを張って、私たちを明るい方へと導く。
どんな漫画でも、映画でもみたことのない、この時代に生まれたスーパーヒーローだ。
ヒーローたちはみんな己の正義やアイデンティの壁にぶち当たる。
本当の強さって何なのか。本当の正義は何なのか。
そして私の好きなスーパーヒーローたちはみんな、すぐそばにいる友人や目の前の困っている人を助けるために戦う。地球を救うために宇宙から襲来する巨大な悪に立ち向かうときも、その理由はいつだってシンプルだ。
大切な人を守りたい。目の前で困っている誰かの助けになりたい。
だからこそヒーローたちはどこか危なっかしくて、弱そうで、とてもとてもかっこいい。
キムナムジュンという男の子やRMという名のスーパースターもそんな人間臭さを持ったとてもかっこいいスーパーヒーローだ。
8 100万回目の人生でも…
100万回目の人生で、ねこはたった一匹のかけがえのない存在に出会う。
99万回、たくさんの愛を受け取っても誰のものにもならなかったねこは、
100万回生きてはじめて、自分以外のだれかを愛することを知る。
それはもう二度と生まれ変われないくらい重たくて、悲しくて、彼女に愛を捧げる何でもない日々にある幸福を生きて失った。
キムナムジュンの人生は今、何回目だろう?
デビューしても誰にも期待されず、何度もやめようと思った日々や、ユンギヒョンと喧嘩ばかりしていた、17坪の家に9人で住んでいた、まだ練習生だった頃、
彼が想像していた未来は今そこにあるのだろうか。
もっともっと高いところへ飛び続ける日々をひそかに夢見ているのだろうか。
彼の物語は、これからどうなるのだろう。
ナムくんの見つける愛は、どんな形をしているだろう。
一山からソウルへ、ソウルから世界へ、
たくさんの愛を注がれ、自分を愛することを思い出したスーパーヒーローの、
壮大な物語はたぶん、まだ始まったばかりだ。
※おわりに
最後まで読んでくださりありがとうございます。
このnoteは人物の考察ではありません。だれかの中の“好き”という気持ちがいっぱいになりますように。
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