「倫理」と「道徳」の違い

残酷人生論、倫理は道徳ではない(池田晶子)より

世の多くの人は、「倫理」と「道徳」との違いを、こっれはもうまったく理解していないようである。
(中略)
「道徳的」ということほど、私が軽蔑する人間類型ない。
(中略)
たったのひとこと、倫理とは、自由である。そして道徳とは、強制である。あるいは、倫理とは自律的なものだが、道徳とは他律的なものである。倫理的行為は、内的直観によって欲求されるが、道徳的行為は、外的規範を参照して課せれれる。
(中略)
「汝の内なる道徳律が、普遍的に妥当するよう行為せよ」
いかなる条件もなく、いきなり道徳それ自体を欲求せよ、と命令するカントの定言命法は、したがって、大ウソである。いや、この哲学者が基本的に大変な善人であることはよくわかるのだが、それでもこれはウソなのである。道徳は、「べき」や「せよ」とか「ねばならぬ」としか言えないから、しょせん、道徳なのである。

残酷人生論

人は自由になるためには、現実を認識し、精神の本質をしっかり受け入れなければならない。倫理を考えるという行為こそ、確かな現実(現実を知ろうとする努力)であるのだ。