
【長編連載】アンダーワールド~冥王VS人間~ 第三部ー82
「特例 牧野誕生」
「牧野君、君は除去課に配属が決まりましたから、
悪霊、妖怪、怨霊、問題のある危険霊の対処を、
このひと月でマスターしてもらいます。
トレーニングルームで基礎訓練もするからね」
ここにきて三日目になると、
それぞれに仕事内容が振り分けられた。
特例調査室の室長の狭間は、
タブレットを見ながら説明を続けた。
「新田君は再生課に決まりました。
基本冥界での魂の仕分け作業ですので危険は少ないと思います」
「ちょっ、ちょっと何で俺は危険な任務なんだよ」
牧野が椅子から立ち上がって文句を言った。
「牧野君のように若くて体力があり余っている人は、
除去課に配属が決められているんでね」
「悪霊と戦うなんて戦隊ヒーローだね」
新田が笑顔で言った。
「あのな~」
牧野が愚痴るのを遮り、
「それと……向井君は派遣課なので、
あとで冥王から説明を受けることになります。
こちらは特殊任務になるので更に少し習得することがあります」
「分かりました」
向井が返事をすると、
「あっ、そうそう。あと一人保護課に配属された、
安達君という特例がいます。
彼も特殊任務なのでここにはいないけど、
いずれ会うことになると思うから。
君達より前から任務に就いている特例も、
今現在六人いるので訓練期間後に顔合わせになります。
訓練は明日からになるのでゆっくり休んでください」
狭間はそれだけ言うと、部屋を出て行った。
「死んだのにこんなことさせられるってやっぱここは地獄? 」
牧野が言うと、
「地獄だったらこんなにのんびりさせてくれないでしょ」
向井が笑った。
「牧野君は食事も残さず食べて、よく寝てるじゃない。
これで地獄だったら、天国ってどんなだろうね? 」
新田もケラケラと笑った。
「お前ら馬鹿にしてんだろ」
牧野はムスッとすると、部屋を出て行った。
――――――――
三人が冥界にきて通された部屋は、
死神と呼ばれる者たちが訓練をしている、
トレーニングルームの奥にある広い一室だった。
そこからドアを挟んだ続き部屋で、
三人は一ヶ月半一緒に暮らすことになるらしい。
だだっ広い部屋にはベッドとテーブルが置かれ、
あとは何もない。
窓もないし、
だからと言って息苦しいほど密閉された空間でもないので、
彼らはそれぞれ好きなことをしていた。
死神に言えば本も用意してくれるので、
新田は雑誌を読み、
牧野は漫画にゲーム三昧、
向井も音楽を聴いて時間を過ごしていた。
死んだらどうなるんだろうと思っていたが、
生きている時とあまり変わらないことに向井は驚いていた。
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