
【長編連載】アンダーワールド~冥王VS人間~ 第四部ー114
《あらすじ》
架空の日本国を舞台にした現代ファンタジーです。
時はもうすぐ22世紀になろうとしている、災害大国である日本。
国のトップである首相は、神を殺し続け自分が神になり替わろうとした。
それをきっかけに国は暗闇に落ち、冥界からは死神と、人間でありながら死して冥王の部下として働く、特例と呼ばれる者達が降り立ち、闇から国を救うために動き出す。
特例・死神・妖怪・鬼が生きるために、国と戦う物語です。
これは以前に書いた古い作品で、他サイトにも投稿したものです。
noteでは少し改訂させていただきました。
新聞の連載をイメージして、一話を短くしています。
現在も続編を書き続けている一作なので、ゆるりと読んでいただけたら嬉しいです。
*この物語はフィクションです。実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。
八雲翔
「第二回発表会」
「何言ってんですか。千乃さんは出来上がったんですか」
「まだよ。ニードルって思っていたより難しいのよ~
クロはちまちましたことが得意なのか、
綺麗にブローチになってるのに」
「お前は雑だからダメだ。俺は丁寧だから。
なっ、先生」
クロはニードル作家の堤美香子とやってくると、
自慢げに女性を見上げた。
「ここにいる方達は人とは違う感性を持ち合わせているので、
出来上がりを見るのも楽しいんですよ」
堤はクロを見て笑顔になった。
堤は五十代。
若い頃は保育士をしていそうたが、
体を壊して退職後に作ったニードルが人気になり、
そのまま作家として活躍するようになったという。
熱中症で倒れて、
そのまま亡くなり冥界へとやってきた。
サロンにきて工房を見たあと、
霊達の楽しそうな姿にもう少し作りたいといい派遣登録させた。
「やり方も覚えたから次はキーホルダーを作るぞ。
上手くできたら向井にもやる」
クロが出来上がったブローチを胸につけ、
向井に見せると自信ありげに言った。
「それは有難うございます。楽しみに待ってますよ」
「だったら、わらわもできたらむかいにやる! 」
呉葉が飛んでくると向井を見上げる。
「オルゴールをくれるんですか?
せっかく作ったんだから、
自分のお部屋に飾られたらいいのに」
「ちがう。おそろいでつくるのじゃ!!
クロ、おまえにはまけんぞ」
そういうとテーブルに戻っていった。
その場にいたものが笑っていると、
「向井君はモテモテですね~」
「冥王はお仕事サボってていいんですか? 」
向井が言った。
「今日は十朱さんの提案でお家を作ることになったんです。
設計図もできたんで好きなものがいっぱい詰まった、
私のお城を建てます」
冥王は楽しそうにそれだけ言うと、
十朱のブースにスキップしながら入っていった。
「設計図描いたの俺なんだけどね」
「妖鬼さん」
入り口から入ってきた鬼は、
首をコキコキ動かしながら近づいてきた。
「こっちも仕事が詰まってるのに、
あれやれ、これやれ………はぁ~疲れた」
妖鬼はため息をついた。
「それはご苦労様でした」
向井がお気の毒にと笑った。
「発表会で張りきってるでしょ。
今度は屋台をもう少し増やしたいんだと。
この前思った以上に死神達も集まって足りなかったからね~」
「発表会は俺達も出るぞ」
「おっ、虎獅狼。ここにいたのか。
出るなら死神課で申し込みしてきな。
もう、受け付け始まってるから」
「おお~そうか。今回は仲間が増えて、
四人で戦隊ヒーローを見せてやるぞ」
「それは凄いな」
「やたいもたのしみじゃ」
呉葉が近づいてきて、ニコニコ笑顔になった。
「この子は? 」
妖鬼が指をさした。
「呉葉です」
向井が紹介すると、
「やたいはなにがでるんじゃ。
こじろーとちのがうまいうまいというんじゃ。
わらわはりんごアメとわたアメがすきじゃ」
「りんご飴とわた飴か………考えてみるわ」
「たのんだぞ」
呉葉はそれだけ言うと再び作業に戻っていった。
「そういや牧野と三鬼とこんも、
チョコバナナ喜んでたもんな。
ガキは甘いもん好きだよな」
「それ、牧野君に聞かれたら蹴られますよ」
「まずいまずい」
妖鬼は笑うと劇場へと入っていった。
いいなと思ったら応援しよう!
