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島のカフェと、白い恋人

島に来て6日目。今日は初めての仕事休みだ。
色々とやりたいことや行きたいところがあったので、昨晩はワクワクしてなかなか眠くならなかった。
しかし心はリラックスしていて、やはり翌日仕事が無いというだけで気の持ちようが全然違うということを、改めて実感した。

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朝起きて洗濯を回し、その間に散歩に行くことにした。
歩いて行ける展望台へ登ろうとしたが、朝ごはん前の空腹状態でパワーが出ず、結局引き返してきた。
しかし、朝の空気を目一杯吸い込みながらの散歩は、身体も心もシャキッと元気になる。
朝の島は殆ど人通りがないから、気楽でいい。

今日のお昼は、ずっとずっと行きたかったカフェに行く。
まだ時間があったので、お部屋にて大人しく絵を描くことにした。
青森にいる時に描き始めて途中だった絵を、せっせと仕上げていく。
絵を描いていると、「私」が戻ってくる。
縁もゆかりもない島にいても、ちゃんと私は私なんだと再認識できて、なんだか安心した。

朝ごはんを少なめにしたので、狙い通り早い時間にお腹が空いてきた。
高まる気持ちを抑えきれないまま、いそいそと準備をし、さあ!カフェに向かうぞ!
道中にある薬局で、湿布を購入した。
私は元々よく歩く方だが、坂の多い島の道に足がびっくりしたのだろう、左足首に軽い痛みがあった。
会計の際にお姉さんに、近所に薬局があって助かりましたと話すと、もしかして住み込みで来ているのですかと尋ねられた。
その通りで、青森から働きに来たのだと話すと、お姉さんは青森に行ったことがあるとのこと。
さらにこの島には青森からの移住者が結構多いのだと聞き、驚いた。隣町に特に多いという。
ぜひ友達になりたいので、次の休みは隣町まで足を運んでみようと思った。

いよいよお目当てのカフェへ入店すると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
お世辞にも都会的とは言えない島で、ここだけがまるで表参道のお洒落カフェといった感じで、異空間だった。
それなのにどこか懐かしさを感じるような、温もりのある店内。
島民にも観光客にも愛されるお店だということが一瞬で分かった。
スタッフは全員、キラキラとした笑顔で接客をしてくれた。
中でもオーナーらしき女性がそれはそれは親切で、ここに来ることを楽しみにしていたと話すと、すごく喜んでくれた。
住み込みで働いていることも話すと、いる間に使えるようにとスタンプカードまで作ってくれた。

木の温もりのある店内
美味しそうなパンたちが並ぶ

パンは店内で焼いているものらしい。
ドリンクにもこだわっているようで、レジ脇に立派なエスプレッソマシンがどっしりと置いてあった。
いわゆるスペシャリティーコーヒーが飲めるお店は、島ではきっとここだけであろう。
ゆっくり選んでくださいね!と微笑む店員さんたちを前に、私はじっくりとメニューを眺めた。
どれもこれも魅力的で、これは島にいる間にたくさん通わねば…!と強く思った。

悩み抜いて今回は、バニラミルク(ホット)と、五穀のクロワッサン、チョコチップスコーンにした。
ふわっふわのミルクに、バニラの優しい風味がたまらない。
そして、温めてくれたパンたちを一緒に頂く。
五穀のクロワッサンは香ばしさと塩気が合わさり、サクサクとした食感で最高に美味しかった。
スコーンはふわふわの柔らかいタイプで、チョコチップの甘さと生地自体の美味しさが相性抜群であった。
あたたかい接客と美味しい食べ物で充電が満タンになった私は、また近々来ますと告げて、店を後にした。
なんだかんだで、お店オリジナルのキーホルダーまで買ってしまった。

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さて。午後はというと、バスに乗ってとある場所へ向かう。
昨日観光案内所にてバスの乗り方を伝授してもらったのでバッチリである。

窓からの景色は、とにかく海。
海沿いをぐんぐん進むバスは気持ちよく、あっという間に感じた。
今回の目的地は、あの有名なお菓子「白い恋人」のパッケージになっている丘である。
ラッキーなことにとても良い天気なので、遠出するにはピッタリの日だ。
しばらくバスに揺られていると、目的地を告げるアナウンスが流れた。

まずは腹ごしらえからということで、バス停付近のレストハウスにある「まっちゃんの店」で帆立のバター焼きを購入。
撮影許可を得て、風情あるお店の外観を撮影させてもらった。
下手したら地元である青森の方が有名な帆立だが、島の、この趣ある屋台風のお店で食べるのがまた良いのだ。
ふっくらとした帆立とバター醤油が合わないわけがない。
お茶と共にペロリと食べ終えてしまった。
ビールが飲みたかったけれど、この後の移動が大変になるので自制した。

やはり〆はソフトクリームである。
「万年雪ソフト」と呼ばれるこちらは、高い山の上に溶けずにずっと残っている雪をイメージしたものらしい。
雪のような白さのソフトクリームは思った以上に濃厚で、最高に美味しかった。
今日は照りつけるような暑さで、万年雪どころではなくどんどん溶けてきたので、飲み物ですかというくらい素早く食べ終えた。

白い恋人の聖地までは、レストハウスから15分ちょっと歩かねばならない。
気温も高く、呑気にソフトクリームを食べながら歩けるような道ではなかったが、必死に登った。
しばらくすると道がひらけてきて、とうとう目的地へと辿り着いた。

絶妙に山頂が雲に隠れている気がするが、それでも充分なくらいの壮大な景色が、そこにはあった。
ご親切にスマホスタンドが設置されていたため、ぼっちでも記念写真を撮影することができる。
人に頼もうにも誰もいなかったので、とてもありがたかった。
「白い恋人」、皆さまは食べたことがあるだろうか。
私は普段、北海道のすぐ下の青森在住なので、お土産としてたまに頂くことがあった。
さくさくのラングドシャとまろやかなホワイトチョコが、これまた癖になる美味しさなのである。
食べたことがない方がいたらぜひ、食べてみてほしいなと思う。

帰りのバスは、少しだけ遅れてやってきた。
バスを待つ人も私しかいなかったので、実はもう行っちゃったんじゃないかとか、来なかったらどうしようとか色々考えて不安になった。
青森も場所によっては、バスの本数がシビアな場所がある。
しかし、島はレベルが違った。
バス停もボロボロで、そもそも山の中だったので、無事にバスが見えた時は「か、帰れる…!」と心から安堵した私であった。

家の近くまで戻ってきた私は、これまた気になっていたご飯屋さんへ入ることにした。
まだ2時過ぎだったが、逆に空いていて良いだろうということで入店。
中途半端な時間だからか、案の定誰もいなかった。
昆布梅酒のソーダ割りと、昆布たっぷりの塩ザンギ丼というものを注文した。
北海道では有名らしいのだが、ザンギとは何なのだろう。
そう思って男性店員に尋ねると、ぶっきらぼうに「鶏の唐揚げです」と言われた。
入店した際も、ルールが分からず席で待っていると、「先に注文と会計お願いしま〜す」とつっけんどんに言われた。
なんなのだろう、この店員は。
午前中お邪魔した薬局のお姉さんやカフェの店員さんたちとは大違いだ。
少し不愉快な気持ちになりながらも、ご飯が運ばれてくるのを待った。

店内はこんな感じ
どことなく居酒屋っぽい雰囲気

これで2,000円超えるのか…と少しガッカリしてしまう。
梅酒の氷はファミレスのドリンクバーみたいに細かくて、口にゴロゴロ入ってくる。
そしてどんぶりのサイズに見合っていない量。
昆布たっぷりとあったが、全く見当たらない。
味は美味しかったが、再来店はないだろう。
私はこの近くの、接客も食べ物の最高だったあのカフェに通うのだ。
同じく接客をするものとして、この男性店員のようにはなるまい、あのカフェのオーナーをお手本としよう、と胸に誓った。

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この後少し山に登ろうと思っていたのだが、大事をとって、家で休むことにした。
無理して登っても楽しめないだろうし、足の痛みを悪化させかねない。
身体と心の健康が最優先だ。
食べ過ぎたので、ご夫婦が用意してくれる予定だった夕食はキャンセルさせてもらった。
明日からまた頑張れるように、楽しかった今日をしみじみ思い出しながら、のんびり絵の続きを描こうと思う。
我ながらすごく良い休日だった。
明日も良い日になりますように。

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