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財務省が振りかざす「財政均衡主義」がまやかしであることは、皮肉にもアベノミクスが証明してしまった!!!
森永卓郎『ザイム真理教 その信者は8000万人』を読んで、目から鱗が落ちた最も大きなことは、「日本の国債は1200兆円でこのままでは日本は滅びてしまう。だから、増税と財政を引き締めて国家財政を立て直さなくてはならない」という財務省の主張する「財政均衡主義」が全くのまやかしだということを教えられたことだ。消費税を廃止するということを主張できる政権がどこにいるだろうか?そういう言う意味では、与党も野党も同じ穴のムジナと言えよう。
第3章 事実と異なる神話を作る
太平洋戦争で物価に何が起こったか?
ここで太平洋戦争のときに物価に何が起きたのかを振り返っておこう。
1935年と比べて終戦2年後の1947年の物価は109倍になっている。年平均の物価上昇率は43%だ。もちろん、高いインフレ率であることは間違いないが、 ハイパーインフレと呼べるほどの上がり方ではない。ハイパーインフレを起こした国では年率1000%といった桁違いの上昇率を示しているからだ。だから戦中、戦後の日本では、経済が根本から破壊され、コントロールが不可能になるほどのインフレにはなっていない。
現に1950年には物価上昇率がマイナスに転じている。
このことから、5000兆円くらいの国債を日銀が保有すれば、悪性のインフレが起きるだろうというのは想像できるのだが、いま日銀が保有している国債は500兆円程度だから、まだまだ行けそうなことは見当がつく。だが、どこまで大丈夫ということはなかなかわからなかった。
ところが、そこにたいへんな証拠を突き付けた政策が登場した。アベノミクスだ。
アベノミクスの三本の矢は、①金融緩和、②財政出動、③成長戦略だった。
安倍元総理は、政権を取り戻した直後の2012年12月18日に自川方明日銀総裁と面談し、衆院選挙戦で訴えてきた2%のインフレターグットと日銀との政策協定(アコード)について、検討を要請したことを明らかにした。実際にその政策協定は結ばれたが、その後、安倍政権は、2013年3月20日に、金融引き締め派の自川総裁に代わって、黒田東彦日本銀行総裁を誕生させた。黒田総裁は、インフレターグツト政策を実現するために「異次元の金融緩和」を宣言した。
ちなみに私は、その12年前に『日銀不況』(東洋経済新報社)という本を出して、インフレターゲツト政策の導入を提唱していた。しかし、当時は「トンデモ経済理論」として見向きもされなかった。それどころか、私は日本銀行に出入り禁止となった。だから、黒田総裁が異次元の金融緩和政策を打ち出したとき、ついに日本の金融政策が正しい方向に向けて動き出したと思い、心が躍ったのを覚えている。
さて、黒田日銀が採った2%の物価目標を達成する手段は、消費者物価上昇率が2%に達するまで、年間80兆円を目途に、日銀が国債を購入して、資金供給を増やすことだった。
実際にその政策は断行された。図表3は、日銀が保有する国債を暦年ベースでどれだけ増やしたのかをグラフ化したものだ。
2016年までは、宣言どおり、80兆円程度の国債を毎年日銀が「引き受けて」いたことがわかる。税収全体を大きく上回る国債発行をしても、高インフレも、為替の暴落も、国債の暴落も起きなかった。その事実は、世界の経済学者たちに大きな衝撃を与えた。
MMT(現代貨幣理論)と呼ばれる経済学も、アベノミクスの実験結果を踏まえて生み出されたものだと言われている。
MMTは、さまざまなことを論じているが、通貨発行益にかかわるところだけで言えば、インフレ率が目標物価上昇率よりも低ければ、財政支出を拡大し、インフレ率が日標を超えたら、財政支出にブレーキをかけるというものだ。
つまり、インフレ率が目標を超えない限りにおいて、財政均衡は無視してよいということだ。
この経済理論に財務省は相当焦っただろう。何しろ「財政均衡主義」というザイム真理教の一番の教義を真っ向から否定する経済理論だからだ。
( 中 略 )
ちなみに、通貨発行益の使途について、MMTが何も考えていないという指摘は間違いで、MMTでは、通貨発行益を雇用創出プログラムに使用すべきとしている。すべての失業者に対して一定の賃金での職を保証するか、政府が最後の雇い手となって、完全雇用を実現すべきだとしているのだ。
私は、雇用創出プログラムの発想自体は悪くはないが、政府による雇用保障はうまくいかないと考えている。役人は、ビジネスのセンスをほとんど持っていないから、それこそ無駄な仕事ばかりが生み出されてしまうからだ。