【書評ふたつ】有吉佐和子 華岡青洲の妻
有吉佐和子の作品はこれが初めて。
前提知識はこの三つ。
・華岡青洲は江戸時代の医者
・華岡青洲は麻酔を使った手術に成功した人
・華岡青洲の妻は治験中に失明した
こちらも以前の浮雲同様、二パターンの書評を書きました。
【書評】
武家の女である加恵は我慢強く、犠牲心があり、逞しい。
そして、意外とどす黒い感情を隠さない。
姑の於継に対するどろどろした憎悪の感情の描写は女性作家ならでは。
女性の容貌の衰えを探す描写は、男性には書けないようなえげつない視点がある。
また、ものがたりは加恵側から主に描いているが、息子である雲平に対する於継の愛も重すぎる感があった。いわゆる長男教、愛玩子だったのか。
ただ、男尊女卑のこの時代。
二人とも賢い女性であるが故の苦しみ、感情をリアルに爆発させられない心境。
夫たちはなにをしていたのだろうと正直思う。
また、一番冷静に物事を見ていた小陸の最期の台詞、加恵と於継、青洲の墓の描写は考えさせられる。
結婚って、家制度って、嫁姑ってなんだろう。どの時代も、女性はなかなか楽に生きられない。
【書評ライト版】
・最初のほのぼのムードから想像つかない嫁姑バトル開始、、怖い、、
・於継ももちろんのこと、加恵もちょっと怖い。
・間に入る於勝と小陸が気の毒すぎる。
・青洲、人体実験する前中もうちょい空気読めよ。おまえの態度に翻弄させられる於継と加恵がかわいそうだ、、
・犬猫の描写が読んでて辛かった、、そういうことだったのね。
・これ、以前の浮雲同様、昼ドラ向きではなかろうか。コンビニにあるどろどろ系漫画でもおかしくなさそう。
※書評は以上です。
ほぼ100パーセント女性目線のこの本、男性が読んだらどのように感じるのか気になるところである。
また、この嫁姑バトルは想像の産物である創作でありそうなので、実際はどうだったのかも気になる。
被験者となり、その結果盲目となった加恵の気持ち。
年を取ってから被験者となった於継の気持ち。
この本とは全く違う真実があるのかもしれない。