Ichiko

自分が考えたこと、読んだもの、観たものなどをとりとめなく綴ります。

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初投稿。 Googleストリートビューに、もう亡くなった方の姿が偶然写っており、見つけた家族が喜んだというニュースを以前見た。 今回は、それに似た話をしようと思う。 8年前に亡くなった父が地方の街で経営していた、小さな小さな学習塾。 亡くなる数年前に塾としては閉校していたので(個別に何人かを自宅で教えていた)、もう閉校してから10年近く経つはず。 それでもなお、ネットで「○○市 学習塾」として検索すると、学習塾の口コミサイトにて下の方にちんまり引っ掛かる。 住所も出る。

    • ふるさとは遠きにありて

      わたしにはかつて、ふるさとがあった。 四国にある、小さな街。 かろうじて「市」という名を持つ街である。 父が亡くなり、もともと四国出身ではない母はその街を離れ、わたしの現在住んでいる場所の近くに越してくれた。 なので、もう実家はそこにはなく、帰省することもない。 不思議なことに、帰らなくなると、妙に懐かしくなる。 そこまで故郷に思い入れがあったわけでなく、大学進学を機にあっさり離れたのに。 四国の中でも交通アクセスの悪いところにあり、飛行機とJR(しかも電車ではなく汽車

      • 【書評ふたつ】湊かなえ 白ゆき姫殺人事件

        告白に続き湊かなえさんの本を読むのはこれで二冊目。 病院の待ち時間に読んでいたのだが、ずんずん読みすすめ、一気に読み終わった。 ※以下、なるべくネタバレはしてないつもりですが、ストーリー内容は結構記載しています。 湊かなえ 「白ゆき姫殺人事件」 【書評】 化粧品会社の美人OLが惨殺され、事件関係者へのインタビューと、架空のSNS マン・マローでのやりとりでストーリーが進んでいく。 当たり前だけど、立場によって見えるものは違うし、証言も食い違う。 誰と誰が付き合っていたの

        • 【書評ふたつ】有吉佐和子 華岡青洲の妻

          有吉佐和子の作品はこれが初めて。 前提知識はこの三つ。 ・華岡青洲は江戸時代の医者 ・華岡青洲は麻酔を使った手術に成功した人 ・華岡青洲の妻は治験中に失明した こちらも以前の浮雲同様、二パターンの書評を書きました。 【書評】 武家の女である加恵は我慢強く、犠牲心があり、逞しい。 そして、意外とどす黒い感情を隠さない。 姑の於継に対するどろどろした憎悪の感情の描写は女性作家ならでは。 女性の容貌の衰えを探す描写は、男性には書けないようなえげつない視点がある。 また、ものが

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          【書評】ズッコケ三人組・中年三人組を語る

          わたしが生まれる前から存在する、超有名児童書シリーズ。 それが那須正幹先生の書いた「ズッコケ三人組」シリーズである。 全50冊あり、私も後半のほうは残念ながら読めていない。 しかし現在、我が家に単行本が現存し、しかも現役で子どもらに読まれている。 その数余裕で10冊以上。 ・ぼくらはズッコケ三人組 ・うわさのズッコケ株式会社 ・ズッコケ恐怖体験 ・謎のズッコケ海賊島 ・ズッコケ三人組の未来報告 など他にもたくさん、メジャーなものはほぼ揃っている。 当たり前だが、携

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          【音楽】正しい街は何処にあるのか

          最近沼ったアーティストは羊文学。 そして、25年以来ファンであるアーティストは椎名林檎さん。 初めて知ったのは高校一年のとき。 友人に貸してもらった「無罪モラトリアム」を聴いた。 当時はまだCDからカセットに録音する時代。 最初に借りたときは曲のタイトルを控え忘れ、後で友人にメモを書いてもらった記憶がある。 タイトルも知らない曲にはまる。 はじめての経験だった。 もちろん、「勝訴ストリップ」も「加爾基 精液 栗ノ花」も聴いた。 大学生まで、ずっと椎名林檎さんの曲が入った

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          【音楽】羊文学について、ひとりでつらつら語る

          タイトルの通り。 羊文学というバンドがわたしは好きだ。 人気アニメの呪術廻戦・推しの子のエンディングを担当しているので、今はもうかなり有名であろう。 でもわたしは、そのちょっと前から知っている。 きっかけは、YouTubeでたまたまおすすめされた「光るとき」。 何気なく聴いて、ガツンとはまった。 その後、ライブ動画を漁り、音楽配信サービスで過去のアルバムを聴く。 これぞ沼。 ボーカル・ベース・ドラムというシンプルな構成だが、とにかく心に響く。 あのときたまたま再生して

          【音楽】羊文学について、ひとりでつらつら語る

          【書評】高村光太郎 智恵子抄

          「智恵子は東京には空が無いと言ふ」 こちらのフレーズは有名であろう。 たった一行で、心にずしんと響く。 読む前からなんとなく知っている詩はあったり、智恵子が精神を病んでしまい、そのまま亡くなったことは知っていた。ただ、なかなか読む機会はなかった。 きっかけはなんだったか忘れたが、高村光太郎及び智恵子のWikipediaを読んだ。 そして、智恵子抄を読むことを決意した。 智恵子が精神が病んでしまった原因を知ったからだ。 女子大を出るほど優秀で絵画に確かな才能がありなが

          【書評】高村光太郎 智恵子抄

          【書評ふたつ】林芙美子 浮雲

          ※現代の作家は敬称をつけていますが、それ以外の作家に関しては敬称をつけていません。 以後の書評も同様とします。 すっと読みたいと思っていた林芙美子作品。 群ようこ氏の書評エッセイに必ず登場し、興味はあったのだが、自分に読めるか不安だった。 ただ、不惑を過ぎ、戦前の作家の作品や純文学作品を読むようになった。 そこで、ついに読んでみた。 林芙美子 「浮雲」 ※感想は二パターンに分けて書きました。 ひとつは、自分なりに考察をしてみた、いわゆる書評。 そしてもうひとつは読中

          【書評ふたつ】林芙美子 浮雲

          海にも種類がありまして

          首都圏に住んでる人が交通手段としてなかなか使わないもの。 あくまで、観光ではなく。 それは「航路」ではないかと思う。 いわゆるフェリー。 わたしも上京してから、旅先以外ではほとんど乗らない。 四国にいたころは、四国以外に出る旅といえば航路を使うことが多かった。 もちろん、瀬戸大橋も使うけれど。 わたしが住んでいたミカンが有名な県は、広島や山口、大分につながる航路があった。 家族旅行に行くときも、修学旅行に行くときも、フェリーを使うことが多かった。 独特な油の匂い。

          海にも種類がありまして

          観覧車を横から見ると

          通勤途中、観覧車が見える。 今まで特段、気にしたことはなかったのだが、今日あることを発見した。 電車のなかから、観覧車を観察すると、だんだん形が変わっていくのだ。 当たり前といえば当たり前。 しかし、じっくり見ると面白い。 丸からだんだん楕円になり、限りなく縦長い楕円となり、また円形に戻っていく。 その間、およそ数秒。 なかなか面白い。 でも、なぜ今まで気がつかなかったのだろう。 スマホを見てるから? 運良く座れて、観覧車の見えない席に座ってるから? 考え事をして

          観覧車を横から見ると

          ルックバック 感想その2

          前回、映画 ルックバックについての感想記事を書いた。 まだ語り足りないので、今回は前回と別の側面からの感想を書こうと思う。 ※前回の記事はこちら 音楽について 無音の場面も多かったが、要所要所で流れるピアノ音楽がとても綺麗だった。 美しく、物悲しく、ストーリーにとても合っていた。 (後日改めてサントラをストリーミングで聴きましたが、やはりすごくよかった。めっちゃおすすめです。) 特に、「Light song」は心に沁みる。 静かで、どこか宗教音楽のようで。物語の締め

          ルックバック 感想その2

          わたしと本と、そしてまた本と過ごす日々について

          本が好きな子どもだった。 家にある本はもちろん、おともだちの家の本、本屋さんの本、図書館の本、全てが好きだった。 小学校では立候補して図書委員になった。 中学校も図書委員に任命されたのだが、委員会の顧問が嫌いだったので、図書室に足が向かなくなった。 それに加え、なぜか当時は 「本を読むやつはダサい」 という風潮があり、読むのをやめた。 いま思えば意味のわからない風潮だろう。 しかし、荒れててあまり環境がよかったとはいえない中学時代、人に嫌われるのが怖かったわたしは、あっ

          わたしと本と、そしてまた本と過ごす日々について

          忘れられない「おめでとう」

          一度だけ、家族以外に囲まれ、誕生日をお祝いしてもらったことがある。 病院の大部屋で。 忘れもしない、30歳の誕生日。 わたしは切迫早産で1ヶ月以上総合病院に入院していた。 まだ保育園児の上の子を残しての入院だったので、家族みんな、なかなかに大変な状況であった。 なので、わたしも自分の誕生日当日は誰も病院に来ないことを知っていたし、特に気にしてなかった。 そして迎えた誕生日当日。 大部屋仲間のみんなが、色紙とプレゼントをくれた。 全く予想していなかった。 わたしが入

          忘れられない「おめでとう」

          木造校舎とかみさまのほこら

          小学校から高校卒業まで、小さな街で暮らしていた。 今日は、その時の思い出と出来事をふたつ書こうと思う。 木造校舎の思い出 わたしが通っていた学校は校区も山の近くにあり、古くからある町並み、寺社仏閣が多い地域であった。 そんなわけだからかなんなのか、わたしが小学校二年生まで、低学年の児童は大正末~昭和初期に建てられたであろう木造校舎で過ごしていた。 「レトロな木造校舎」 こう書くと素敵なイメージがあるかもしれない。 確かに、レトロで素敵ではあった。戦前の漢字一覧表

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          映画 「ルックバック」を観る

          普段映画はあまり見ない。 お恥ずかしながら、すぐ飽きてしまうからだ。わくわくしながら観始めるのに、いつも途中で、早く終わらないかなと思ってしまう自分がいる。 そんな私が、初めて予定を調整し、隙間時間を見つけて観に行った映画。 それがルックバック。 もともとチェンソーマンは読んでおり、ルックバックなる読み切り作品があることも知っていた。 ただ、漫画アプリでは半分しか試読できず、結末まできちんと読むことができていなかった。 そのままなんとなく時は流れていたが、ルックバック

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