12日間を乗り越えて
12日間の実習が終わった。
振り返るとあっという間で、毎日の記憶なんてほとんど無い。それだけ毎日、必死だった。
いろんなことがあった12日間だったけれど、その中でも特に、初日の夜のことはこの先も一生、忘れないと思う。自分でも不思議なくらい涙が止まらなくて、すべてが怖く思えていた。利用者に食事介助を行わないといけないこと、言葉での会話はほとんとできないことなんて、予想はできていた。それでも、現場に立ってその状況を目の前にしたとき、そのハードルがとても高く思えた。それに加えて、社会福祉士を目指していても、やることは介護士なのかもしれないと知ったとき、現場の現状と人手不足の厳しさを感じて、それを受け入れきれずにショックも受けた。自分が利用者と関わることで、何か嫌な気持ちにさせてしまうのではないかと考えたとき、自分が選んだこの道が、本当は間違っていたのかもしれないと思えてしまった夜だった。12日間を乗り越えた今の私だからこそ、あの日の私に言える。私は、社会福祉の道を選んで正解だったよ。
食事の介助は、正直、未だに下手くそな部分が多い。私が普段、大きな一口で食べてしまうタイプだからこそ、利用者一人一人によって違う一口の量がなかなか掴めなくて、試行錯誤した。それに、スプーンを抜くタイミングとか、主菜・副菜をバランスよく口に運ぶとか、おいしく食べてもらえる組み合わせを考えるとか、技術的な部分が圧倒的に足りていないのが事実だった。加えて、一人一人が持つ好き嫌いを最初の頃は何もわかっていなかったから、無理に食べさせてしまったかもしれないとか、私と食べると食事の時間が苦痛だったかもしれないとか、色々と考えてしまっていた。でも、最終日が近づくにつれて、私と食べると凄く笑ってくれる利用者が増えたり、楽しそうに口を大きく開けてくれる人が増えたりしたのを実感したとき、私は凄く幸せだったし、もっとできるようになりたいと思えた。あの瞬間の嬉しさと幸せを、私は忘れたくないし、忘れちゃいけない。
コミュニケーションも、初日はずっと怖かった。言葉が通じても、会話ができるわけじゃないから、どこを観察したらいいのかも分からなかったし、返ってきた反応がyesかnoかさえ分からなくて。職員とのやりとりをひたすら観察して、とにかく必死に技を盗もうとしてた。そうしていくうちに、一人一人に合わせた、適切な関わり方があるってことを学ぶことができた。それを学んでからは、距離が縮まるのも早くなったし、でもやっぱり難しいなって感じることも多くなった。だから、とにかく毎日、観察して、学んで、やり方を盗んでは実践することを繰り返してた。きっと、これは正解だった。最終日までに、全員の笑顔を見ることができたし、たくさん触れ合うことができたと思う。
なにより、初日に感じていた怖さを、感じにくくなった。もちろん毎日、利用者に何か不利益を与えないように気を付けていたし、事故やミスを起こさないために、現場に立っているときの緊張感は、最終日まで1日たりとも抜けなかった。でも、コミュニケーションを取ることに対して恐れを抱かなくなって、自分から毎日、全員に1回は声を掛けられるようになった。相手の反応が何を示していて、何を求めているかも、推察して、聞き返せるようにもなった。できるようになったことは、たくさんあった。
社会福祉士ならではの面接技法とか、相談援助の実習は行えなかったけれど、根本にある「誰かを支援すること」に対する幸せとか嬉しさとか、楽しさ、達成感を知ることはできた。それは食事介助とかコミュニケーションを毎日、真面目に頑張ってきた私だからこそ知ることができたことだと思う。
「頑張らないことを今日も頑張る」
毎朝、頑張りすぎる私に向かって、心の中で唱えてた呪文。結局、現場に立つと頑張っていたし、毎日、目の前のことに全力で取り組んできた。でも、今までの自分とはどこか違ったと思う。物事に対する力の入り方が、適切だった。今までだったら、すべてに真面目すぎて、何か言われるたびに落ち込んできたのに、今回は違った。次、同じミスをしないためにできることを考えていたし、うまくいかなかったとき、できなくて当然だからこの失敗を活かそうって思えた。これはきっと、この期間で得られた大きな成長だ。
最終日は正直、利用者と職員との別れが寂しくて、名残惜しく思えた。せっかく楽しくなってきて、私らしい支援の仕方を模索し始める余裕ができたところでの別れ。永遠の別れではないにしろ、初の実習での出逢いは、この先の私の人生の中でも、大きな意味を持つと思う。何より、私は社会福祉の道を選んで正解だったと思わせてくれた人たちであり、現場であった。
何度でも書く。私は、将来、絶対に医療ソーシャルワーカーになる。そして、誰かのために動ける人になる。そのためにこれからも変わらず社会福祉士を目指すし、福祉の道を選び続ける。高校生から夢みた自分の姿を、現実のものに変えてみせる。
きっと向いてると思えたなら、あとは全力で目指すだけだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?