(後編)どうして友達と家を買うの?#台湾出身の旦那さんの両親へのカミングアウトストーリー
大家好!一條心です。僕は、シンガポールに住んでいて台湾出身の旦那さんがいます。セクシャリティはゲイで、仕事でもプライベートでも隠さずに暮らしています。自分たちの話を通して、少しでも多くの人に同性、国際カップルや、LGBTQのことについて知ってもらえたら嬉しいです。今回は、旦那さんの話を勝手に書きますシリーズ最終章。これまでのお話をまだご覧になってない方は、先に前編、中編をご覧下さい。
応援しない。からの家族会議再招集
旦那さんの両親に対して、カミングアウトしていなかった僕たちは、"友達同士でマンションを一緒に買うという体"で、相談をしていたのですが、「友達同士で大きな買い物(投資)をするのは将来ややこしくなるか止めてほしい」というのがお義父さんからのメッセージでした。家族に強く反対されている状況で、勝手に事を進めるのは得策ではないと感じた僕たちは一旦購入を保留するつもりでいました。
そこに、お義母さんから家族会議の再招集がかかりました。僕は参加が許されませんでしたので、彼と両親の3人での家族会議です。そして、いそいそと再度集まった3人、お義母さんは開口一番、彼にこう問いかけました。
「あなたたちは付き合っているの?」
ああ、ついにこの時がきた、と彼は思ったそうです。あくまでも、自発的にカミングアウトするつもりがなかった彼ですが、両親の方からはっきり聞かれた場合には認めようと心に決めていたそうです。
「そうだよ。」
僕はその場にいませんでしたので、両親がどのような表情でこの言葉を受け止めたかは分かりません。ただ、ドラマであるような泣いたり喚いたりのような展開はなく、しばらく神妙な面持ちのまま、ぐっと口をかみしていたそうです。どれくらいの沈黙だったのかは分かりません、おそらくほんの数分だったと思いますが、3人にとっては、ものすごく長い沈黙だったはずです。沈黙を破ったのはお義父さんでした。この件に関して終始沈黙を守ってきたお義父さんが「ちょっと考える時間が必要だから、また明日話そう」だけ言って、その場をお開きにしたのでした。
やっぱりお義母さん気づいてたよね
家族会議の後、一部始終を彼から聞いた僕は、やっぱりお義母さん気づいてたんだよなぁ、と思いました。初めて僕が両親に紹介されたのが2009年の年末頃、このマンションの話をしているのは2013年の夏です。既に3年強、ずっと一緒にいる僕たち二人の様子をみてきた両親が何も思わない訳ありません。ただ最近までお義父さんは全く気づく素振りを見せていなかったので、おそらく前日の家族会議の後に、お義母さんがこの話を切りだしたのでしょう。
兎にも角にも、彼は長年黙ってきたことを、ようやく話す機会が来たことで、晴れやかな気持ちだったようです。彼はその後すぐ、嬉しそうにお義姉さんに電話して、「やっと両親に言えたよ!」と報告していました。かねてから両親にカミングアウトすることに反対していたお義姉さんは、ついにこの日が来てしまった。。。と戦々恐々としていたそうです。両親(とくにお義父さん)も彼もすごく頑固な性格なので、お互いに反発し合うと簡単に家族仲が崩壊してしまう、そして修復が容易でない、と心配していたようです。僕もその意見には納得です、だって本当に頑固なんです。親子は本当によく似るものだと心の底から思います。
わかった。応援するから、買ったら良い。
沈黙の家族会議の翌日、約束通りお義父さんから連絡がありました。約束はちゃんと時間通り守る律儀さはやっぱりお義父さんらしいな、と思いました。翌朝、朝早くにお義父さんから彼に電話がかかってきて、
「わかった。応援するから、買ったら良い。」
とだけ伝えてすぐ電話を切られてしまったそうです。その後、お義母さんからの詳細のフォローアップがあったようですが、僕は彼とお義母さんがどんなことを話したかまでは聞いていません。ただ再会議の後、両親で話し合って応援してあげようという結論になったそうです。
少し前から気づいていた気配のあったお義母さんは、おそらく心の整理と消化がある程度できていたんだと思います。でもあの頑固なお義父さんを、たった一日で?納得させられたんだとしたら、さすが長年連れ添った夫婦はすごいな、と思います。もしくは、お義父さんも人生最大の謎「何で息子が彼女の一人も連れてこず、頑なに結婚の話題を嫌がるのか」という長年の疑問の真実がわかって、案外すんなり納得したのかもしれません。このあたりは、僕は真実を知るよしがないので、想像です。
やっぱり20年って長いよなぁ
彼は小さい頃から自分がゲイだと気づいていて、両親に言えたのが30代後半になってからですので、軽く20年ほども伝えずに家族を続けてきたことになります。カミングアウトをするしないを含めて、人それぞれですので、これを長いのか、短いのかを考える意味は無いと思います。でも、やっぱり、20年って長いですよね。それも親しく頻繁に連絡取り合ってる家族なら尚更です。LGBTQを取り巻く環境は、先人たちの努力の積み重ねで少しずつ、でも確実に変わってきています。大切に人に嘘を付き続ける必要のある人が少しでも少なくなれば良いなと思います。
・・・終わり。
長くなりましたが、旦那さんのカミングアウトストーリーは一旦ここで閉幕です。カミングアウトは通過点でしかなく、それを機に大きく生活が変わったりはしません。でも大切な人に自分のことを知ってもらえることで、安心感や自己肯定感が醸成されるのは間違いありません。今後も、自分たちの経験を通して、LGBTQ、同性婚、はたまた日台夫夫のことを書いていこうと思いますので、興味のある方は、フォローしていただけると大変嬉しいです。
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