![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/34977743/rectangle_large_type_2_8766d6beeca091dde402a1865d5cac96.jpeg?width=1200)
マラソン初練習は「42キロ歩く」こと★20120303
10km通過。時刻は11時40分。
「よし、予定通りだ。」
心の中でそう呟き、強くうなずく。
先週、東京マラソン2012を観戦し、マラソンに挑戦することを決意。
今日がそれから待ちに待った初の休日。マラソンに向けての記念すべき初練習の日だ。その初練習で私はどうしてもやりたいことがあった。
それは「42キロを歩く」ことだ。
普通はこんな練習はしないであろう。それでは一体なぜ42.195kmを「歩く」のか。これには私なりの理由があった。
話は今から一年前、2011年の春に遡る。
当時、スポーツなど全くしていなかった私は、自分の体力が衰え始めていることを感じていた。考えてみれば最後に運動したのなんて高校の体育の授業の時だ。これはまずいと思った私は、通勤時に一駅分歩いたり、できるだけ階段を利用したりして運動不足を解消していた。
そんなある日、ふと
「自分は一体どこまで歩けるんだろう?」
という疑問が湧いてきた。思い返すと高校時代に2時間歩いたことがあった。
「よし、3時間歩いてみよう!」
そう思い立った私は家を出て、頭の中に浮かんだなんとなくのコースに沿って歩き始める。そして歩き続けおよそ3時間半ほどで帰宅した。
この3時間半歩くという行為は本当に楽しかった。
今まで歩いたことのないところを歩く「ドキドキ感」。
見たことのない建物やきれいな景色を見た時の「楽しさ」。
無事家に帰って来れた時の「安堵感」。
これらの感情によってすっかり「歩く」ことに魅せられた私は、この後およそ一年間、休日の度にあちこち長い距離を歩くようになるのであった。
20km通過。時刻は13時20分。
「順調、順調。」
一年たった今。
私はもう充分歩き切ったと思っていた。
最初のころは長い距離を歩くと、息が上がったり筋肉痛になったりしたが、今はもうそんなことはない。時間さえかければどこまででも歩いて行ける自信があった。そんな時、自分の中にある気持ちが湧いてきた。
「よし、走ろう。」と。
さらに東京マラソン2012を観戦し、マラソン挑戦を決意するのである。
30km通過。時刻は15時ちょうど。
さすがに疲れてきてはいたけど、まだ全然行ける。
そして迎えた今日。
私はマラソンに向けての初練習で42.195kmを「歩く」ことに挑戦していた。しかも制限時間も設けている。
東京マラソンと同じ「7時間」だ。
これには今まで一年間かけて歩いてきたことに対しての「卒業試験」という意味合いがあった。1kmを10分ペースで進み続ければちょうど7時間でゴールとなる。1km10分というのはこれまで一年間ずっと歩いてきたときのペースだ。このペースであれば絶対に42.195kmを歩き切れる。
私には絶対の自信があった。
40km通過。時刻は16時40分。
10時に自宅をスタートしたのでゴールの制限時刻は17時。ここまで計画通りだ。残りはあと2km。一歩一歩進む度、ゴールと制限時間が近付き、迫ってくる。
歩くのはとても楽しく大好きだ。これからもずっと続けていきたい。しかし一年間、休日の度に歩き続けてきた結果、満たされなくなってきた感情がある。
それは「達成感」だ。
初めて3時間半歩いた時には、達成感でいっぱいだった。しかし、今はもう少しぐらい歩いただけでは、達成感は感じられなくなってしまった。そこで今日を一つの区切りとして、「歩く」ことから「走る」ことへと、また新しく踏み出そうと思っているのである。
そして遂にスタートしてから42.195kmの地点に到着。
そのとき偶然、近くの中学校のチャイムが鳴った。
17時だ。
やった。
私はやったのだ。
42.195kmを7時間で歩き切ったのだ。
これまで一年間ずっと歩き続けてきた成果を、今日こうしてひとつの結果として残すことができた。これでもう歩くことに関して思い残すことはない。
私はこの上ない達成感に包まれていた。