スポーツの教育的意義
先週は、うちの小学3年・4年生の生徒を40名ほど連れて、白馬の栂池まで2泊3日のスキー研修に行ってきた。
まだ生徒がとても少ない頃から、この行事にこだわってきたのは、他でもない私自身だ。
なぜスキーを選んだかと言えば理由は多くある。
自分の努力、コミットメントによって、以前は出来なかったことが出来るようになるという、「努力による成功体験」を得るのに適しているのではないかということ。
滑れるようになると滑る楽しさを体験できること。
上達に終着点がなく、常に上を目指すことができること(それぞれの深度に応じて)
うまくいかない時に励ましあったり、助け合ったりする場面が自然に生まれること。
自然を相手に、時に忍耐力(レジリエンス)が求められること。
スキーには、衣類から道具にいたるまで準備が必要で、親といれば恐らくやってもらうであろうことを、自分でやることで、少しでも自己管理(セルフマネジメント)スキルを身につけることができること。
引率する教員にとっては、生徒の成長において、スタート地点や進度がそれぞれ異なり、それをどのように受け止めて、ひとりひとりの成長を促していくのか、まさに教室で考えるべきことが、わかりやすく見えてくることもある。
大きくはこれらのことであるが、その他にも親元を離れてクラスメートと先生と寝食を共にする経験をはじめ、多くの学びがある。
また、私があえて岐阜市からほど近い所にあるスキー場でなく、白馬を選んでいることにもこだわりがある。
雪質が圧倒的に違うのだ。
生徒達にある程度、「成功体験」を感じてもらうことが重要である時に、ガリガリのアイスバーンや、人工雪のスキー場では、滑れるものも滑れずに逆に嫌いになってしまうことも考えられる。
その点、白馬の雪質はまさにパウダースノーで、初心者にも滑りやすく、転んでも痛くなかったり、またゲレンデも広いため、ゆとりをもって滑ることが出来るからだ。
子どもに成長を促しやすい「環境」を考えることも大切だ。やみくもにハードな環境が良いわけではない。
最後に、宿泊で使わせていただいている宿も、貸切で使わせていただき、食事も、温泉も良くて、おまけにゲレンデの真ん前という最高のロケーションにある。
確かにバスで片道4時間以上かかる道のりではあるが、とにかく私はうちのスキー研修はとても良い行事であると考えている。
ここでさらに強調したいのは、
うちのスキー研修は前述したように、多くの学びや経験が詰め込まれた教育的に非常に価値のある行事であり、ただのお楽しみではないという点だ。
私が自分自身が特にスポーツをやってきた者ではないが、それでも最近、スポーツを通しての学びはもっと見直されるべきではないかと考えている。
私たち教師や親は、この先のUnknown(未知の)世界を生きる子ども達にとって、必要なマインドセット、スキルセットを与えていかなくてはならない。
それらには色々あるが、特に、失敗を恐れずに挑戦すること、どんなことも忍耐力が必要であること、創造的に問題解決をすること、仲間との協働、協調性、すぐれた人間性(他への感謝、リスペクト)などがもっとも必要だと言われている。
それを考えると、スポーツから学べるものは実はとても多く、さらには、スポーツによって健康な体を作ることも出来るのだから、つまりは、いわゆる5教科よりも学びが深く、得るものが多いのではないかとさえ思う。
実は、体育以外にもアートや音楽、日本の学校教育で今まであまり重要視されてこなかった科目ほど、これからの時代を生きるための学びとしてとても大切なのではなかろうか。
最後に、このような行事に、献身努力する教員、職員の活躍にもしっかり言及せねばならない。
当たり前だと思う人もいるかも知れないが、例えば今回も40名の生徒を連れて、朝から夜中まで、事故のないよう、体調を気遣いながら、そして楽しい時間を過ごしてもらうために、あれこれ考えて対応するのは決して楽なことではない。
しかし、そういうスタッフがいなければ、こういう行事は成り立たないし、おそらく今後、特に公立の学校の文脈で言えば、行事ごとはさらに減っていくと思われる。
わが職員ながら今回も様子を見ていて、私も感謝の気持ちでいっぱいであったが、彼らもまた、子ども達の成長を心から願い、楽しい思い出を作ってほしいという純粋な気持ちでやってくれていると思う。
教師とはそういう人たちであるのだ。
今回は、たまたま最初の2日間がかなりの吹雪で、かなりコンディションは悪く、子ども達も心が折れそうになったと思うが、どの子も素晴らしいレジリエンスを発揮し、その中で確実に成長した姿を見せてくれた。
あの寒さ、あの雪が顔に当たり続けて痛みを感じるあの感覚、経験は大人でも耐えられない。
本当に誇らしい生徒ばかりだ。
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