Vol.7 なぜ今「探究学習」なのか
こんにちは!教育を考える学生たちです。
2020年最後の今回のテーマは、「なぜ今『探究学習』なのか」です。昨今は、「探究学習」という言葉に注目が集まっていますが、ではそもそも探究学習とは何か、その目的は何かといった、根本的な部分を考えました。その中で見えてきた課題点や、それらを克服するために重要になるであろうポイントまでまとめてみました。
1.探究学習とは何か
学習指導要領の改訂を受け、2022年度より高校での「総合的な学習の時間」が、「総合的な探究の時間」に変更されます。総合的な探究の時間においては、自らが学びのテーマを設定し、教科・科目の枠組みを超えた、分野横断型の探究を行います。具体的には、探究学習とはこのような流れで行われます。
①【課題の設定】 体験活動などを通して、課題を設定し課題意識をもつ
②【情報の収集】 必要な情報を取り出したり収集したりする
③【整理・分析】 収集した情報を、整理したり分析したりして思考する
④【まとめ・表現】気付きや発見、自分の考えなどをまとめ、判断し、表現する
2.探究学習の目的
では探究学習を行う目的とは何でしょうか。文部科学省の学習指導要領には、以下の事柄が目標となされています。
探究の見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)探究の過程において、課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究の意義や価値を理解するようにする。
(2)実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現することができるようにする。
(3)探究に主体的・協働的に取り組むとともに、互いのよさを生かしながら、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養う。
https://www.mext.go.jp/content/1384661_6_1_3.pdf
いずれも非常に本質的であり、これからの時代を生きる学生たちにとって必要となる資質であると感じます。
私たちは探究学習を通じて、「学びに対する姿勢」をより主体的なものにしていくことができるということが、探究学習の大きな魅力であると考えました。日本の教育において、これまで中心的であった学習スタイルは、教師の講義を一方向的に受け取り、用意された教材や試験に取り組んでいくというものでした。このような学習スタイルを長年続けていくことで、学習者は受動的なスタンスで学びに向き合い、次第に学ぶことや勉強することがつまらないことであると感じるようになってしまいます。
それに対して、探究学習は自らの内発的な興味・関心に基づき、自分に合ったテーマを設定し、そのテーマを深堀っていくための情報や知識を自ら獲得していくという学習スタイルを取ります。これまでは与えられる情報や知識をキャッチしていくスタンスであった学習者が、主体的に情報や知識にアクセスしていこうとすることで、学び手の学習観に変化が起こることが考えられます。さらに、探究の成果は他者へ発表できる形にまとめ、それらを表現できるレベルまで高めることで、より知識が定着していき自分のものになっていくでしょう。
3.探究学習の難しさ
非常に可能性と魅力に満ちた探究学習ですが、一方で実践には難しさも存在すると私たちは考えています。まずは、「高校生が自らの興味・関心のあるテーマを設定することができるのか」という点です。探究学習のポイントとなるのは、内発的な動機を持つことのできるテーマを設定するということです。中学を卒業してすぐの高校生が、自分が突き詰めていきたい物事を定めることはそう簡単ではないと考えます。あまり関心がないテーマを設定しても、結果としてやらされている感を抱き、受動的な姿勢で学びに臨むことになります。そのため、自分に合った良いテーマに出会うことができるのかどうかは、探究学習の重要なポイントであると同時に、大きな難しさでもあるでしょう。
加えて、教師の探究学習の指導経験のなさが挙げられます。教師の方々が高校生だった頃に、実際に探究学習の時間があったわけではなく、自分も取り組んだことのないことを実践するのは非常に難しいことです。探究学習は、一人一人の生徒の内側にある興味や関心を見つけてあげたり、決めたテーマを良い方向へ伸ばしていってあげるといった、より高度な指導力が必要となります。さらに、一人の教師がしっかりと目を通すことのできる人数にも限界があるため、教師の関わり方は非常に難しさを抱えているでしょう。
4.探究学習の難しさを克服するには
私たちは上記で述べた探究学習の難しさを克服するためにはどうすれば良いのかを考えてみました。その中で、テーマ設定に関しては、生徒が選ぶテーマのハードルを下げてあげるということが重要であると考えます。探究学習と聞くと、「国際問題」や「環境問題」などといった社会的にも意義のある大層なテーマを設定しなければならないといった感覚に陥りやすいですが、もっと規模を小さくして学び手が生活する中で感じる疑問や興味をテーマ設定として設定してあげることが大切である考えます。「あなたの好きなこと・関心のあることは何ですか?」と問われると非常にハードルが高いですが、「生活する中でなんでだろうと感じた瞬間は何ですか?」や、「不満や憤りを感じた瞬間は何ですか?」といった問い方をしてあげることで、意外にも本人も気付かない自分に合ったテーマが見つかってくるかもしれません。
さらに、教師の経験のなさを克服する上で、私たちがお勧めしたいのは、「探究パターン・カード」です。探究パターン・カードは、株式会社ベネッセコーポレーションとクリエイティブシフトと株式会社クリエイティブシフトによって共同開発がなされた、探究学習に取り組むうえでの36のコツを、パターン・ランゲージという形式により言語化したものになります。この探究パターン・カードを使うことによって、これまで探究学習の指導経験の浅い人たちでも、自らの創意工夫を入れ込みながらも、良い実践をしていくことが可能になります。
https://www.amazon.co.jp/dp/B082VQXSNH/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_cLE7FbBM0B9CF
最後に、これからは「総合的な探究の時間」にとどまらず、各教科・科目においても、探究的な要素を織り込んでいくことが大切になると考えました。日本国外に目を向けると、様々な教科でプロジェクトベースの主体的な学びが行われています。教師からのレクチャーは最低限必要な内容にとどめ、それ以外の時間はプロジェクト型の学習を行う学校もあるようです。最大の理想は、「総合的な探究の時間」という枠を決めなくとも、生徒が自ら探究したい問いを立て、勝手に探究を行っている状態であると考えます。そのためにも、日々の各教科・科目の学習のあり方も、より主体的で探究ベースで行っていくことが大切になると思いました。
以上が「なぜ今『探究学習』なのか」についてでした。最後まで読んで下さり、ありがとうございました!2021年も宜しくお願い致します。
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