【短歌一首】 野良猫は動物園の虎超ゆや己一匹したたかに生く
短歌は動物観察セラピー。
動物の中でも最も身近にいるのが猫。子供の頃から猫が大好きで今も猫二匹と暮らしているが、野良猫もとても魅力的だ。 歩いているときに野良猫を見つけるといつも近づいたり、観察したりしている。
先日駅に向かって歩いていると、向こうから野良猫がこちらに向かって歩いてきた。
野良猫は人を見ると一目散に逃げてしまったり、物陰に隠れてこちらを伺ったり、逆に妙に懐いて擦り寄ってきたりすることが多い。 しかしこの日の野良猫はそのどれでもなく、普通にこちらを見ながら人間がすれ違うように歩いて行った。いい面構え、いい歩きっぷりに惚れ惚れする。目つきの鋭さは半端ない。
さすが肉食動物のネコ科は天然のファイターと言われるだけある。ネコ科最強動物、いや哺乳類最強動物の一つに挙げられている虎と、相似形のサイズが小さいだけで、動きも立ち居振る舞いも何ら変わらない。
しかし、翻って考えてみると、野生では最強の虎であっても、動物園の虎は(本当にイヤイヤながら、不本意ながら)今や人間の支配下に置かれ、自分で狩りをすることもなく、人間が用意してくれた食事を食べている。快適な寝ぐらも用意されている。
一方、猫であっても野良猫は、己の頭と力と勘だけを頼りに、日々餌を求め、寝ぐらを確保し、時にカラスや野良犬などとゴミ置き場などで戦いながら、したたかに生き抜いている。そして人間の運転する自動車や自転車との衝突リスクもかわしながら。
野良猫の後ろ姿と虎の後ろ姿。ほとんと同じように見える。
虎と猫、どちらもネコ科の相似形だが、動物園の虎よりも街の野良猫たちの方が、自分の力だけを頼りに、人間という動物の支配する街中で、野生を忘れずに、時に人間をうまくあやつりながら、タフに生き抜いているのかもしれない。
猫間英介
【上野動物園の虎】
【生き物短歌】