【短歌一首】 秋の空映す川面に白サギの歩み涼しき渋谷の正午
休日の昼間に目黒川付近を散歩した。
秋分の日を境に、長かった残暑がようやく終わったような秋の気配漂う日。
春の桜の季節を除くと、目黒川に人出が多くなることはあまりない。この日は休日だというのにほとんど人が歩いておらずとても静かな正午。
かなり涼しく感じるが、それでも空にはまだ少し夏っぽい感じの入道雲が浮かんでている。
目黒川の水面には秋の空が映り込んでいる。
しばらくすると一羽の白鷺が飛んできて、川に敷かれているブロックの上を歩き始めた。
調べてみると白鷺の中でも小型の「小鷺(コサギ)」という部類に入るものらしいが、昔から日本では池、川、沼などに多く棲息していて、その白の美しさ、歩く優雅さから絵に描かれることも多かったとのこと。
白サギは何度も川の浅瀬を行ったり来たりしている。どうやら水の中にいる餌を探しているようだ。白サギの歩みはセカセカすることなく、一歩一歩がとてもゆったり、のんびりしており、確かに歩く姿に雅さがある。
白サギが川面を歩く姿を眺めていると涼しい風が吹き抜けてきた。いっそう秋の静かな昼のひとときを感じさせてくれる。
白サギは秋を運んでくる鳥だと思って歳時記を見てみたら、なんと「夏の季語」だった。夏の鳥に分類されている白鷺にとっても、今の日本の夏は暑すぎたのだろう。白サギにとっても人間にとっても、時代とともに季節の移ろいが変化している。
猫間英介
生き物についての短歌を集めました。