【短歌一首】 辛うじて夕闇の際秋見ゆも猛暑居座り白露は惑ふ
9月7日(土)は二十四節気の「白露(はくろ)」。
白露は、このころから秋らしい気配が感じられる、とか、秋の気配が見え始める、とか言われる季節の節目。
夜間には気温が低下し、大気の中の水蒸気が露となって草や葉っぱにつくようになるのでそう呼ばれる。
白露だというのに朝から30度を超え、日中は35度近くになった。街を歩いていても、あっというまに汗だくとなる。
空は灰色かがった夕立を予感させる雲。なまじ日差しが少し翳ってくると、大気がかえって籠るような感じがして、蒸し暑さがいっそう増してくる。もう白露だと言うのに、いつまでこんなに暑いのか。
メディアでも「残暑バテ」対策と称した特集やコラムをよく目にする。確かに、今の時期、果てしなく続く記録的な猛暑に、自律神経の調子が狂い、心も体も疲労が溜まっている。
熱中症にならないようにエアコンをずっとつけろ、と言っていたと思ったら、今度は自律神経の乱れはエアコンのつけ過ぎが主原因の一つなので、(熱中症に気をつけながら)エアコンを適宜消せとは、なかなか難しい。
夕暮れ時、街の輪郭と空の境目あたりに、ようやく微かに秋っぽさを見ることができた。そうは言っても、空の色合いに秋が少し沁み出しているだけで、歩いていると汗だシャツにズボンにまとわりついてくる。
日没はかなり早くなってきた。
夜の帷が下りて街灯がつきだすと蝉の声はほとんど聞こえず、秋の虫の声が耳に届いてくる。目と耳には秋を感じることができるが、呼吸器官である口と鼻、そして触覚を司る肌はまだまだ残暑を感知する。
秋の気配が漂うべき白露に残暑がど真ん中に居座り、五感は戸惑い思考も乱れる。そろそろ秋を濃いめでお願いします。
猫間英介