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【短歌一首】 落陽は韋駄天走り川岸をダッシュで追ふも彼方に消えん

落陽は
韋駄天走り(いだてんばしり)
川岸を
ダッシュで追ふも
彼方に消えん

路地を歩いていたら、不意に家並みに反射した太陽の光が眩しく目に飛び込んできた。

家並みに反射した太陽

季節や時間、その日の天候によって太陽の向きや光の加減が異なり、晩秋に入ると夕方早い時間に斜めに太陽が差込んでくる。あれほど長い間夏の猛暑を作り出していた太陽も、今はどこか儚い感じさえある。

川岸の夕陽

少し川の近くに進んでいくと、今まさに川の向こうに沈まんとしている夕陽が見えた。

沈みゆく夕陽

急いで川岸の堤へと向かうが、たった数十秒の間にも夕陽の光はどんどん変化している。いつも思う。「夕陽の足は半端なく速い。」(地球の自転が速いのか。)

逃げる夕陽
川堤の上へ

逃げる夕陽に追いすがり、川の堤の階段を登る。もう雲間に隠れそうになっている。速い、速い。夕陽の「韋駄天走り」。 

韋駄天(いだてん):バラモン教の神で、シヴァ神の子とされる。仏法の守護神の一つ。仏舎利 ぶっしゃり を盗んだ 捷疾鬼 しょうしつき を追いかけて取り返したというので、足の速い神とされ、足の速い人のたとえにされる。

韋駄天走り: 非常に速く走ることの例え。

広辞苑、明鏡国語辞典など
雲隠れした夕陽

川の堤に登って夕陽を見ていたら、あっと言う間に夕焼け雲の中に消えていってしまった。もう少し夕陽を見ていたかったのに、本当に足の速い奴。

高校の時にラグビー部に所属して左ウイング(11番)をやっていたが、強く速い相手はこちらが全速力でいくら追ってもどんどん遠くへいってしまう。そんな無力な感じを思い出す。

晩秋から初冬の夕焼けは本当に素晴らしい。そして物悲しく、懐かしく、切ないような温かいような気持ちになる。 ひんやりとした澄んだ大気に包まれて、いつまでも眺めていたい。

猫間英介



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