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フロイトはなぜ、あんな発言をしたのか
アインシュタインとフロイトとの書簡を収めた『ひとはなぜ戦争をするのか』(講談社学術文庫)を読んだ。
タイトルどおりの内容で、平和主義的観点から語られている。
フロイトは話の展開上、戦争のメリットにも言及していた。
そこで彼は「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」を例示する。(p.32)
だがその直前で、モンゴル人やトルコ人の侵略戦争は災いしかもたらさなかったと述べていて意表をつかれた。
書簡が交わされた1932年当時に「パクス・モンゴリカ」という言葉があったかは存じ上げないが、アジア史への過小評価を見た気がした。
知識人の間でも、露骨なオリエンタリズムが罷り通っていたわけだ。
こうしたヨーロッパ中心主義が、その後のナチ台頭を準備したのではないか?
…と言いたくもなるが、当時の日本は1931年の満州事変を経て1933年に国際連盟を脱退しているから偉そうなことは言わないでおく。
ちなみに、トルコに関しては「パクス・オトマニカ」という言葉があるそうだ。