愛すべき対談集

 ギ・ソルマンという人の本に、『二十世紀を動かした思想家たち』(新潮選書)という対談集があります。たしか私はこれを19歳のときに読んだのですが、多感な時期だったこともあり、頭がカッ飛ぶほどの刺激を受けました。
 とくに、精神科医のトマス・サスと哲学者のカール・ポパーの主張は、脳が震えるくらい衝撃的でした。前者は「狂人など存在しない!」と断言し、後者は「道徳に理由など必要ない!」と喝破しています。こうした主張は、慣れてしまうと大して感動しないのですが、最初はやはりインパクトがありました。
 本書によると、ソルマン氏が思想家たちとの対談を始めたのは、自身が若い頃、行きつけの店でよくサルトルとボーヴォワールを目撃していたのに、結局話しかけることなく終わったのが心残りだったからだそうな。一期一会という言葉を思い起こさせるエピソードですね。
 サスとポパー以外では、ルネ・トム、エドワード・ウィルソン、エルンスト・ノルテが印象的でした。また、ハイエクとの対談では、著者が彼の信奉者らしく、やたらと称賛の言葉が並んでいます。対談における聞き手のあり方について考えさせられる回です。
 他にも、チョムスキーやレヴィ=ストロース、日本からは中上健次と木村資生が登場します。知的興奮のるつぼ、ご堪能あれ!

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