#72 百鬼堂農園(21) 野望のグリーンカーテン
「キュウリ作らないの?接ぎ木の苗が安くなってるよ」
南東さんからあからさまな圧力がかかる。
キュウリは家庭菜園の中でも人気の野菜だ。ただ、食材として嫌いということはないが、積極的につくって食べたい、というほどではない。あと、ウリ科でツルを伸ばして成長するため、ネットを張らなくてはならない。100均で売っている材料で簡単に作れる、みたいな動画がたくさんアップされているが、やはり面倒くさそう。それでなんとなく手を出さずにいた。
ホームセンターにいって苗をみる。キュウリの苗はたしかに安くなっている。キュウリだけでもいろいろ種類があるなあ。近くには、ベランダなどで緑のカーテンを作るためのゴーヤやヘチマの苗もある。
植物がツルをどんどん伸ばし、わさわさと成長し、緑の壁をつくる姿をみてみたくなった。やってみるか。
店内で支柱など売るコーナーに足を運ぶ。キュウリ栽培に最適と銘打った、支柱とネットとそれを固定するパーツがセットになっている商品をみつけた。100均で買いそろえるより割高だろうけど、専用のものならそれほど苦労せずできそうだ。
ネットを広げて支柱を通していく作業など、ひとりでやるには多少面倒な部分はあったが、専用設計だけのことはあり、すっきりとしたキュウリネットを張ることができた。思ったより短時間でできたので、その足で苗を買いに行く。
収穫がたくさん見込めるもの、暑さに強いもの、実が大きくなるものなど、いろんな種類の苗がある。結局値引きになっていた接ぎ木の苗は買わず、初心者向けとされているものなど3種を購入。緑のカーテンを作るなら、やはりゴーヤも欲しい。2株買った。
ネットの下に植える。苗の先端がぎりぎり届くくらいだ。その細いツルを苦労して張ったネットに巻き付け、ぐんぐんと緑のカーテンになっていく姿をみたい。日陰で涼むわけではないけれど。
シソとハツカダイコンの成長は旺盛で次々と収穫できているが、エダマメは残すところ数株、トウモロコシは収穫をほぼ終えた。ひと息つけるかと思ったところでまた新たな野菜を植えてしまった。世話をしなくても育ちそうだけど、酷暑の中、様子を見に通ってしまうのだろう。