#105 百鬼堂農園(38) 農閑の季節に黒く素敵な君と畑へ
ひときわ目を引く黄色く分厚い本が図書館の新入荷のコーナーに鎮座していた。ポール・オースターの新刊「4321」(新潮社)。絶対読まないだろうが、これを誰も借りないと、海外文学の新作が入荷されなくなってしまうかもしれない。高価でなかなか手の出ない本が借りられることが、図書館の大きな意義のひとつだろう。貸し出し実績をつくるため、重い本を持って帰った。この本には、後日誰かから予約が入ったので、すぐ返却した。頑張って読了してほしいものだ。
やらねばならない。やるしかない。南さんの助言を受け、決意した。
ショベルによる土壌改良である。鍬で耕しても表面だけになってしまう。土壌改良のためには、ショベルで深く掘り起こした方がいいのではないか、と控えめに促されたためだ。
その名も「天地返し」。なんと豪快な名前であろうか。相撲の決まり手でも、二郎系ラーメンの食べ方でも、ジャンプに出てくる必殺技でもない。天地返しは、主に寒冷期に畑の土の深いところと表面を入れ替えることで、土壌改良や病害虫を防ぐなどの効果がある作業とされています。なお合気道には「天地投げ」というかっこいい技がある。
というわけで、高儀謹製「強力土起こしショベル」を購入した。
踏みつける部分の面積が広く、硬い土に深く刺さるのがウリだ。土中の根も切れるよう、刃先も鋭くギザ刃もついている。土離れもよいように、表面に緩やかな溝もついている。ネットでの評判をみて、買うならこれだと思っていたが、近所のホームセンター2軒をあたってみたところ売っておらず、Amazonで注文した。1800円余。
アウトドア用の折りたたみショベルを所有していることと、集合住宅住まいの身分で農機具を増やしたくないという思いが導入を阻んでいたが、ここに至っては仕方ない。妻の了承を得て、我が家の北側の狭いベランダは、鍬と備中鍬、農作業用リュックに加え、黒々としたスタイリッシュなショベルが一角を占めることになった。
それにしても、何という存在感か。武道家の端くれとして申し上げると、この武器、じゃなかった農具を手にした相手と敵対しない方がよろしかろう。
早くこれで農作業をしてみたい。ええと、ショベルとシャベルとスコップの違いをよく認識しておりませんので、おかしな点あればご容赦を。今回は商品名のショベルで統一してみました。