『読書感想文』項羽と劉邦
ユーラシア大陸とちっぽけな島国とでは何とスケールが違う事だろうと思います。
最近のニュースでは、
面積3,210平方 kmと言われてもピンとこないけど、琵琶湖の面積は669.26平方kmなので琵琶湖が約5つ分。長野県が全部入る位です。そんな巨大な湖の水が4分の3が蒸発してしまいました。
去年は確か逆にこの時期、長江が洪水にみまわれ、ダムを決壊していたニュースを覚えています。
そんなニュースを見て、以前読んだ「三体」を思いだしました。
この小説の作者は劉慈欣という中国の方です。
2つの太陽に囲まれた惑星が「三体運動」する事によって太陽に近づいたり離れたりします。
それによって文明が滅びたり、発達したりするのです。この「三体世界」は実際の中国をモデルにしているのではないのでしょうか?
実際の中国大陸では何千年の昔から、飢饉や災害続くと何十万人単位もの人々が死亡します。
また温暖な気候が続くと、1平方mあたりの生産性が小麦より高い穀物、米のおかげで人口が増加し文明が発達します。
極から極に触れる振り幅がデカすぎて、日本人の価値観では測り切れないのが中国大陸であり、そこに住んでいる中国人の思考です。
この様に何が起こるか分からないのが中国の乱世であり現代でもあります。乱世では流民が集合して反乱を起こしたり離反したりします。後の皇帝になる人物も勝ったり負けたりを繰り返すケースが多かったみたいです。この小説の主人公のひとりの劉邦にいたってはライバル項羽にほとんどの戦いで負けています。
この小説の中で僕の心に強く残っているエピソードがあります。
滎陽の戦いで項羽に囲まれた滎陽城を金蝉脱殻の計を用いて脱出するも、楚軍の猛威を振り払うことはできず劉邦と夏侯嬰が命からがら黄河の北岸へと落ちのびた時、夏侯嬰は配下の漢の3傑の一人韓信についての不平不満を劉邦にぶつけます。
その時、劉邦は心の中でこう呟きます。
「俺が韓信でも自立するだろうな」と。
その当時の韓信の領土はすでに広大です。
「背水の陣」を用いた策略に長けた将軍として知られ、
魏、趙、斉を平定していていました。
現代だと黒竜江省や山東省、内モンゴル自治区などを含む北部一帯で広大なものでした。
一方主人の劉邦は黄河以南からたった二人で命からがら楚軍から逃げています。
手を尽くしても、本当にどうしようもない時はきっと唄でもうたうしかないんだろうなって思います。小説の舞台は中国の乱世、劉邦にとってはもう運命に身を任せるしかない場面も多かったと思います。
自然災害かそれに近いどうしようもない場面が訪れた時は自分で自分を励ますしかないのです。
唄う。その方が何も考えず励みになると思います。運命に身をまかすしかない時は悪い方へ悪い方へと考えがちです。実際考えてみても仕方がない場合は唄って、悪い方へ考える自分を忘れる事です。
日常で言えば、ストレス発散でカラオケに行くのと一緒です。
漢の三傑の一人張良は言ってました。
「漢軍は弱い」「どうにもならないぐらい弱い」と。
弱い漢軍がなんとか崩壊せずに戦えて挙句に天下を取る事ができたのは、劉邦がなりふり構わず漢を生き延びさせようとしたからです。
その後、劉邦は項羽を破り天下を取る事ができました。
この小説のテーマの一つとして作者の司馬遼太郎は、中国におけるリーダーになる資格がある人物はどういった人間かを描いています。
作者はあとがきの中でこのように定義しています。
圧倒的な武力を持つ項羽に対して、あらゆる手段を用いて部下や兵卒を食べさせて漢を存続させようとした劉邦。
漢軍が弱いので元秦の食糧庫があった広武山に城を築き籠城して、和睦を結んだが裏切って楚軍を攻めるも勝てませんでした。
漢の領土の大半をくれてやると約束して彭越と韓信に援軍を出させてやっと勝つ事ができたのでした。
とにかく辛い時は、カラオケですね。歌ってその時のストレスを発散できれば、きっと明日はまたきます。